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"いい投資"探検日誌 from 新所沢

しあわせをふやす いいお金の使い方を考えています

スチュワードシップ・コードはアダム・スミスの「株式会社への心配」を払拭する!?/本日のスープ64皿目

『本日のスープ 〜株式投資をめぐる三重奏〜』 64皿目はrennyさんからの寄稿です。


前回の まろさんのエッセー、

株式会社制度の本質的な問題

こちらで指摘された「問題」は非常に重大だと私も感じました。特に、ここ最近、日本だけなく海外でも、その問題が次々と具体的な現象として露になっているように感じられます。

「コーポレートガバナンス・コード」「スチュワードシップ・コード」という枠組がこれらの問題への対処に有効に機能して欲しい、と私も期待しています。一方で、そんなに単純な話ではない、という認識も持っています。

スチュワードシップ・コードの原則をどのように実践、実行していくかという方針に基づいて、機関投資家が自らのスチュワードシップ責任をどのように果たしたか報告する試みが始まっています。その一例として、大和証券投資信託委託のケースを見てみましょう。

http://www.daiwa-am.co.jp/system/files/giketu/giketu_20150819_44699.pdf


この報告の4ページに「(4)エンゲージメントの具体例」という箇所があります。ここでいうエンゲージメントとは、投資家と投資先の会社との「目的を持った対話」です。大和証券投資信託委託が投資先の会社とどんな対話を行なったか、が紹介されています。

1. 経営方針・財務戦略に対する観点 から抜粋

A社はROEが低く、PBR も1倍未満となっていたが、資本効率を意識することで企業価値を向上できると考えられました。 また同 社は内部留保が厚く、投資資金も限定的であることから、株主還元の強化について対話を行いました。  

2. 投資家との対話・情報開示に対する観点 から抜粋

IR態勢 が十分ではなかったF社に、年二回の決算説明会の実施を提言したところ、同社は決算説明会を年二回実施するようになりました。

3.環境・社会・企業統治( ESG ) 課題に対する観点 から抜粋

指名委員会等設置会社である I 社と、社外取締役の役割や人選基準などを議論しました。また、投資家との対話への社外取締役の参加についても議論しました。



「目的を持った対話」の内容の報告、素晴らしいことだと大いに評価しています。こうした報告を継続することでしかスチュワードシップ・コードに魂は入りませんからね。公募投信を運営する投信会社には、エンゲージメントの内容について具体的な発信を期待したいと思います。

しかし、気になることもあります。上記の対話の内容を見ると、対話の目的が「近きをはかる」短期的な成果を求めるものだ、と感じられてなりません。公募投信の目論見書等には決まり文句のように「信託財産の中長期的成長を目指して」とありますが、果たしてそれと整合しているのか、と。(個人の感想です)

「遠きをはかる」投資家、「近きをはかる」投資家、多種多様な目的を持った投資家が存在するのが健全な市場だと思いますが、他人からお金を託される機関投資家は、投資目論見と、投資先とのエンゲージメント、「目的を持った対話」との関連を説明する必要があるのではないでしょうか。それが、資金を託す側が判断する要素の一つになるはず、と私は考えます。

今回の問題を考えるとき、私が最近感じていることがあります。

投資家が変化する必要性です。

ここでいう投資家とは、お金を託される機関投資家ではありません、元々の資金の出し手です。我々、個人投資家はその一人です。変化とは、個人投資家が誰にお金を託すか、ということを検討することです。スチュワードシップ・コードという枠組は、誰にお金を託すか、その検討の材料を提供し、投資家の変化を促してくれる可能性を秘めています。

前回、まろさんが紹介されたアダム・スミスの懸念。

「株主は有限責任であるために、会社から受けとる配当金のことしか考えず、会社の業務に関心がない。」

スチュワードシップ・コードに魂が入り、公募投信が、個人投資家が、変化することができれば、この懸念を一定程度晴らすことができる、私はそう信じています。公募投信を活用されている個人投資家の皆さんには、自分のお金を託している投信会社がどのようにスチュワードシップ責任を果たしているか、投資先とどんな「目的を持った対話」を行なっているか、ぜひとも注目していただきたい、そう強く願っています。ですから、スチュワードシップ・コードを一時の流行り言葉で終わらせてはいけません。

えっ!?全然、流行っていないって?(大汗)

スチュワードシップ・コードを時間掛けてでも根付かせましょう!
 


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