いい投資探検日誌(from 八女)

しあわせをふやす いいお金の使い方を考えています。サステナブル投資家。2017年に新所沢から八女に移住しました。週末は一口馬主を楽しんでます。

「いい会社の経営者講演」日本環境設計 岩元会長(1) 岩元会長講演レポート

4月30日(日)に鎌倉投信の「いい会社の経営者講演」日本環境設計に参加しました。

いい会社の経営者講演
講師:日本環境設計株式会社 会長 岩元美智彦さん
日時:2017年4月30日(日)14:00~16:00
場所:FinGate

日本環境設計は消費者参加型の循環型社会を作ろうとしている会社で古着や携帯電話などからリサイクルを行っています。2015年の受益者総会でも岩元さんが講演されたので覚えている方も多いと思いますが、最初に岩元さんのお話を聞いた2015年1月から2年あまりの間に随分と話も大きくなり、循環型社会の実現に向けて動きも具体化してきました。

ワクワク・どきどきする消費者参加型の循環型社会をどのようにつくろうとしているのかメモを元にレポートします。

国内外から注目を集める日本環境設計

日本環境設計は10年前にみんな参加型の会社として120万円の資本金で創業しました。リサイクルをするだけでなく世の中で一番大切なことは何だろうと会社を起ち上げて今に至っています。

日本もそうですが、海外からの引き合いも多くなってきていて北九州の製品工場の80%はほぼ海外からの引き合いになります。ハーバードビジネススクールでも講演しましたが、こんなことが世の中にあるのかとびっくりしていました。

世界的な社会起業家のネットワークであり、地球環境にとっていい事へ事業で取り組んでいる事業者が選ばれるアショカの2015年フェローに選ばれました。アショカ・フェローに選ばれてからノーベル平和賞をとった人が5~6名いて、有名なところではグラミンバンクのユヌスさんなどがいます。

国内のベンチャー大会は大きなものでトーマツとEOIの2つあり、どちらも優勝しました。これらの事から環境の風が吹いていることを実感しました。昨年のクリスマスに日経ビジネスが選出する次代を作る100人にも選ばれ、1ページを飾らせていただいたのですが、推薦文は良品計画の松井会長に書いていただきました。

パリ協定を境に地上資源へのシフトが加速

環境がどう変わったか。世界の動きはパリ協定で急に変わりました。世界の地域と国の目標が一つに、CO2を必死になって減らしましょうという流れになりました。パリ協定の目標値は厳しく、発掘可能な石油の2/3を使わなかったら達する水準です。

そこまでするから経済が落ちこむのかというと、そうではなく技術や仕組みでカバーしていきましょうという内容です。出来るから各国が約束しているんです。世界中はパリ協定で約束した事を実現しようとしていて、政府から大企業、民間へと具体的にやることがブレイクダウンしている最中です。

循環のトライアングルその1.「技術」

日本環境設計のやっていることは循環のトライアングルです。一つ目は「技術」技術のコンセプトとして、この世界にゴミは存在しないと考えています。

最初に手掛けたのが衣類です。
日本、アメリカ、ヨーロッパで生ゴミと一緒に出したくないものをアンケートをとって聞いてみると衣類が一番でした。みんなが参加するには一番リサイクルしたいと思っているものから始めるのがいいんです。でも衣類は殆どリサイクルしておらず、アフリカなど新興国の中古市場に送るのが全体の10%程度という程度です。

日本だけで年間200万tもの衣類が捨てられていますが、これは家電リサイクル法で処理される家電製品65万tの3倍にもなります。家電の3倍も出てる衣料品に対するリサイクル技術が無く、ほとんど燃やされているんです。ここに技術のメスを入れます。衣類で主に使われている綿(30%)とポリエステル(55%)の技術開発をしました。この2つの技術で90%弱が循環します。

最初はコットン(綿)から始めました。Tシャツの綿の部分を糖にかえて糖からバイオエタノールを作ります。世界中のバイオエタノールの99.9%は食べ物からエタノールに変換しています。食べ物から作るのはどうだろうという議論が起こり、食べ物以外でエタノールを作る研究開発が10年前から盛んになりました。

今のところ商業化したプラントを持って黒字化したのは日本環境設計だけです。とうもろこしや砂糖と同じ糖化技術を使って綿を糖に変えるのがポイントです。

世界の繊維の55%を占めるのがポリエステルです。世界中で中古衣料がゴミの山になって行先が無くなっています。NEWSWEEKでも記事になりましたが、そこでは問題提起はされていましたが解決方法は書かれていなかったんです。このまま衣料品をどんどん作っていいのかと言う論調で終わっていましたが、日本ではほぼ解決できることがわかると思います。

現在4,530万tのポリエステルが使われています。衣料品として使われる綿の生産量は今後増えないと考えています。なぜなら畑も水も必要だから。人口が増えていく中で畑では食べ物を作らないと間に合わないんです。綿は減っていく中でそれをカバーするのがポリエステル。人口増加をカバーする繊維です。

資本金100万円の会社が10億円のプラントを作ることは出来ませんが、お金が無いので知恵を出しました。調べてみると繊維を染める行程が綿の糖化プラントとほぼ同じ構造だという事がわかり、日本に使っていないプラントが無いか探してみたところ条件に合うプラントが一つ見つかりました。それが今治第一工場です。

6000万円もする釜が使われず埃をかぶっていたのを1000万円くらいで借りる事が出来、今治の雇用は守られてリサイクルも出来るようになりました。今治の工場では綿は2日で糖になり、その後発酵してエタノールになります。

うちの技術はテクノロジーで分別します。酵素の力で綿の構造を切っていくと糖になるんです。水と酵素をまぜて常温で糖化を行います。糖化が済んだらイースト菌で発酵させていきます。バイオエタノールはビールを造っているようなものです。出来上がったバイオエタノールは染色工場のエネルギーとして使われていますが、ガソリンにもジェット燃料にもすることが出来ます。

ポリエステルは年間7.5兆円の市場が15兆円に増えると言われています。今までは地下資源から作っていましたが95%以上のリサイクル率を持つ技術が出来ました。Tシャツ1着でほぼ1着を作る事が出来ます。1:1の関係なので次の服を作るのに地下資源がいらないんです。

服から服、テントからテント、容器から容器など物質を劣化させないのが当たり前の世界がやってきます。今からはリサイクルしても劣化しないので10回でも100回でも1000回でも循環できるんです。地下資源に頼らず地上資源だけの水平な世界になります。物質を劣化させないリサイクルが世界の常識になろうとしています。

これまでは色つきのペットボトルや汚れたものはリサイクル出来ませんでした。日本はそれで自主規制により色つきじゃないペットボトルにフィルムを貼り付けるようにしましたが世界では40%が色つきのペットボトルです。色を付けた方が日光を遮断して中身を美味しくできるし添加剤もいらないんです。

今までは技術に合わせて中身を変えていましたが、これからは美味しいものをちゃんといただけるようになります。それも、リサイクルから石油と同じペレットができるからです。

技術だけでなく、価格も石油由来のものと同じです。だから経済的にも回るんです。リサイクルだとCO2が半分以下になります。パリ協定のCO2 60%減まで残り5%は効率でどうにかできるようになると、新しく石油はいらないんじゃないかという事になります。

北九州プラントを建設中ですが、技術やエンジニアも自前です。この工場を一流のエンジニア会社に頼むと70億円かかりますが、1/3の費用で建設することでコストが合うんです。全て自分達がやるからこの仕組みが実現できます。

これまで10年自分たちの力でやってきたから出来るという事と、今回はいいパートナーに恵まれました。かつて日本を背負った平均70歳以上の元プラント建設エンジニア10名くらいにお手伝いいただいています。昔のノウハウを教えてもらいながら、部品の一個一個を海外に注文して北九州で組み立てています。

携帯電話のリサイクルもしています。国内で年間700万台リサイクルされるうち400万台を処理しています。通常は携帯電話を分解してパーツ毎に分けてそれぞれ得意なところへ持っていくのですが、ここでも中古プラントを改良してボタン一つでリサイクルをしています。

今治にある工場の3倍の規模のプラントを北九州に作ろうとしています。日本で最大のリサイクル技術を持つ世界最大唯一の工場です。

なぜリサイクルしても劣化しないのかというと世の中の物質は地下にあるか地上にあるか、燃えるか燃えないかに分類できます。金、銀、銅、レアメタルといった無機物についてはリサイクルはほぼ出来ています。一方で有機物のリサイクルはこれまで出来ていませんでした。これまでは有機物を物としてリサイクルしていました。うちは元素、原子を見ています。基本元素である炭素を循環させれば劣化しません。

質量保存の法則があり、地球上の炭素量は変わりません。綿やポリエステルだけでなく、おもちゃも人間もレタスも森も同じ炭素でできたものです。うちは運ばれてきたものを見て炭素が多いと喜ぶんです。

日本のごみから年間1000万tのエタノールを作ることができますが、年間消費量は960万tです。これは家庭ゴミ4000万tから作る事の出来る量ですが、他にも企業から出るごみが4億tあります。

今はゴミは埋め立てられていますが、それはモノとしてしか見ないからです。これからはそれを使うだけでエネルギーは十分まわるんです。だんだん変わっていくと思います。金本位制からドル本位制になり、石油本位制になりましたが、地球資源本位制へ変わろうとしています。

循環のトライアングルその2.「消費者参加」

技術があればできるのか?答えはNoです。

日本、アメリカ、ヨーロッパでどこでリサイクルしたいですかとアンケートを取りました。すると、買ったお店でリサイクルしたいという回答が多かったので、お店に回収ボックスを置こうとしました。最初はきれいなお店がゴミを置くのは嫌だという意識でしたが、アンケート結果を見せて回収ボックスがあると消費者が来るよという事を訴えかけた結果、今では汚いというイメージは無くなりました。消費者参加型にすることで社会が変わるのです。

消費行動も変えようとしています。リサイクルしに店に行ってついでに買い物しよう。
あなたの服を地球の福にという事でFUKU×FUKUプロジェクトを始めました。

アンケートではプラチック製品をリサイクルしたいという声も多くありました。
モノには思い入れがあるので捨てにくいのです。プラスチックを地球のプラスにというPLA×PLUSプロジェクトを始めました。

JINSは全店に回収BOXを置いています。お客さまも眼鏡を新調する時は古い眼鏡を持って来て回収ボックスに入れてくださいます。消費者がそういうものだとわかってきたんです。スターバックスではタンブラーのリサイクルを無印良品の良品計画は最初に契約してくれた会社です。良品週間にはリサイクルを堂々と楽しくやってくださっています。大丸松坂屋やタカラトミーのキディーランドでも回収をしています。

買ったお店で回収の次は学校だという事で卒園と同時におもちゃも卒業しようという運動が全国に広がっています。インドなど海外からも話が来ています。

国内150社以上の仲間が増えました。イオンとセブン&アイが一緒に参加して下さっています。業界を超えてみんなでやろうという事です。業界の中で1位を取ろうではなく、衣類業界の中ではなくこの仲間に入りたいという事で続々と仲間が増えています。
大事なのはそうした位置を作ることです。

効率を良くするためには利益の先にあるみんなの幸せが大事になります。みんなのリサイクルしたい気持ちを具現化していくんです。Windowsのようにベースがってその上にモノやサービスが出来てきます。やり方がばらばらでは普及しないのでまず循環型社会が実現できるようにしています。

循環のトライアングルその3.「エンターテイメント」

技術と消費者参加だけで循環型社会はできるでしょうか?答えはNoです。

今日の話を聞いて凄いなと思ったとしても行動に起こしてくれる人は多くありません。
理解と行動は別なんです。行動させるにはどうしたらいいか?ワクワク、どきどきする楽しいことにするんです。環境を楽しい事へ、エンターテイメントにします。

リサイクルを真面目にやっても環境意識が高い人しか来ないですが、楽しいことをするとそうじゃない人達が来ます。顔ハメと環境、音楽と環境など楽しいから人は来ます。
楽しいからいらないおもちゃや服をもってイベントにやってきます。そうするとお店にとっては滞留時間が伸びて結果的に消費もしてくれます。

宇宙に行こうという事で宇宙服をみんなでつくるプロジェクトも始めました。これも楽しいから子供も参加するんです。

エンタメの代表格なのがバック・トゥ・ザ・フューチャーです。バック・トゥ・ザ・フューチャー2のデロリアンをどうしてもゴミで車を動かしたい、そう思っていました。

2015年10月21日16:29にデロリアンをゴミで動かそうと話すとみんな面白いと言ってくれますがアメリカに話を持って行ってはくれませんでした。そこで、ハリウッドに飛び込みで行きました。そこで話したことは3つ。

  1. 地上のごみを資源にかえて循環型社会に
  2. 戦争をなくします
  3. こどもたちに笑顔を取り戻します

戦争・テロの原因の7割は地下資源にあります。石油がいらない世界になれば戦争やテロがなくなるんじゃないかとユニバーサルの担当者が言いいました。本当に出来るのかと聞かれたので「頑張る」と言ったら2週間後に許可が出ました。

最初はデロリアンを貸してと言ったのですが、結局買いました。世界に5台しかないのですが、ドク役のクリトファー・ロイドも応援してくれました。買った値段は言えませんが、アメリカから日本に運ぶだけ600万円かかっています。

全国のショッピングモールでデロリアンを展示して、みんな着古した服を持って来てデロリアンを動かそう!と言うと集まってくる人の中で環境に興味がある人は3%くらいです。みんな本物のデロリアンに乗りたい、触りたいから来るんです。結果環境が良くなればいいんです。

2015年10月21日にゴミからデロリアンを動かしたのは世界中のメディアで報道されました。海外に行ってJEPLAN(日本環境設計)を知らなくてもデロリアンの会社だと言うとみんな知ってるんです。ブランディングです。

いままで循環型社会を作ろうとするとバラバラでしたが「技術」、「消費者参加」「エンターテイメント」のトライアングルで取り組んでいます。

みんなで楽しみながら循環型社会をつくる

消費者、回収拠点、技術、地上資源、メーカー、このみんなを繋ぎます。昨年は500万人くらいが参加しました。

モノをつくるのはリサイクルとプラントが似ています。そこで、こういう思想でリサイクルをやろうとしているので是非プロセスを使わせて下さいと相談し、一緒になって技術開発してプラントを作りました。

すると地上資源が出てくるのでメーカーや消費者は安心して使えるようになります。今まではほんの少しの不純物があってもリサイクル出来なかったのがリサイクル出来るようになり、石油を使っていない製品が店頭に並ぶようになります。地上資源の経済圏を作りたかったんです。だから色んな会社を口説いてまわりました。誰も無理をしていないんです。

こうした事はどこか1社がコントロールしないと出来ません。日本は地下資源がなくてもGDP3位の技術の国です。それが地上資源を手に入れたら世界中から愛される国になるんじゃないですか。

GDPの60%の個人消費をリサイクルしようとしています。リサイクルは世の中の中心に、経済と同じ立ち位置になります。CO2が半分以下で戦争やテロなくす事が出来るのが蜂のマークの製品です。

  • 経済よし
  • 環境よし
  • 平和よし

これから地上資源のペレットで作った製品が販売されます。雑貨やテント、衣類まで。NYコレクションで地上資源で作った服が出たときは大きな話題になりました。他にもカーテンや白衣、コンビニのユニフォームにもなっています。いろんなメーカーと話しているからアイデアが色んなアイデアが出てきます。できるところから参加していきます。

2020年に向けた取り組み

リサイクル2020の話をします。これも楽しいお話。日本環境設計はオリンピックパートナーでありませんがNTTドコモの資本が入っています。これはNTTドコモの取り組みとしてお話します。

オリンピックは平和の祭典と言われていますが、戦争やテロの原因になる地下資源でメダルを作っているのはいかがなものかという事で地上資源でメダルを作ろうという提案をNTTドコモと一緒にしました。

今でもドコモの携帯電話リサイクルは北九州工場で行っていて使用済み携帯電話から金属を取り出しています。使用済みの携帯電話からオリンピックメダルを作ろうというのも全国で参加できて、目的があるからみんな参加してくれるんです。こうして回収動線ができます。楽しいから参加してくれる企画をみんなで考えます。

地上資源だけで作ったメダルをオリンピック史上初めて作ろうとしています。いらない携帯電話を持ってくるとそれがメダルになって、メダルをかみかみできる「かみかみプロジェクト」をやっています。

金メダルを1個作るのに約6g金が銀に塗布されています。東京オリンピック、パラリンピックでは300個の金メダル、合計1700個のメダルが必要です。

また、2020年にはバイオジェット燃料を作ろうとしています。バイオジェット燃料の開発には国の補助金も出ているのですが、日本環境設計は自力で開発しました。

2020年に飛ばすには2016年8月までに品質機関へサンプルを提出する必要がありました。結果、国の補助金が入っていない日本環境設計だけが通りました。今度はジェット機を飛ばそうとしています。

One recycle for One Sell.

世界中の会社が石油を使わない地上資源へ舵を切っています。ダノンは25%、ドイツ政府はテキスタイルの50%をコカコーラは75%を地上資源を使うと宣言しています。みんな地上資源を使おうと必死です。アップルは先日全て地上資源だけで作ると宣言しました。世界は動き出しました。

100年後の未来を考えましょう。私たちの便利な生活のその裏側で地下資源を奪い合う資源争奪戦争が起きているんです。お金や武器でなく、ワクワク・どきどきする消費者参加型の循環型社会をつくりましょう。

これからは地上資源の製品を買って使わなくなったら買ったお店に戻してください。
自分たちの未来は自分たちで作らないといけないんです。

 

(2)鎌倉投信 新井さんとの対談レポートへつづきます。

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