6月28日に開催されたWIRED編集部と鎌倉投信の新井さん、日本環境設計の岩元さんとのトークセッションのレポートです。2回目の今回はいい会社の側、日本環境設計の岩元さんのお話が中心です。
いい会社のつくり方を新井和宏(鎌倉投信)、岩元美智彦(日本環境設計)に訊く
日時:2016年6月28日(火) 19:30〜21:00
場所:WIRED LAB.
出演:新井和宏(鎌倉投信)、岩元美智彦(日本環境設計)
主催:WIRED編集部
日本環境設計と鎌倉投信との出会い
WIRED:
鎌倉投信からいい会社だと認められた日本環境設計さんですが、そもそも出会いはどういう形なんですか?
岩元:
4~5年前からお互いに存在を知っていました。僕も鎌倉投信の存在をらでぃっしゅぼーやさんを通じて知っていましたし、ガイアの夜明けも見ていました。数年前に鎌倉の本社に出掛けていったのですが、だいたい投資家に説明するとようわからんと言われるのに10分でもういいです。と言われて残りは雑談でした。
新井:
僕らが会社を見る時、技術的な話は当然ありますが技術はいずれ塗り替えられるので評価しません。そこは信じないんです。
仕組みとして何を社会に届けようとしているのか、想いはなにか。会社の原動力はどこにあるのかだけ見ています。
そういった中で岩元さんのビジネスモデルの秀逸さはピカイチでした。横浜国立大学で授業していましたが、私を推薦してくれた先生のお父さんがドラッカーの大家なんです。その人をしてドラッカーそのものと言われたビジネスモデルです。
岩元:
僕は深く勉強してないからね。
ドラッカーの真似じゃないです。
経営者の覚悟
WIRED:
日本環境設計をどういう想いでつくりましたか?
岩元:
最近思うのは、いい会社のメンバーと出会って鍛えられたという事です。本当にいい会社の中のいい会社になろうと欲が出てきました。魂が以前は少し足りていなかったのですが、色んな人と話しているうちに磨かれてくるんです。自然と目が磨かれてより真剣になりました。
日本環境設計は小さなベンチャーで、基本的には人を大事にしたいなと思っています。小さな会社ですが海外留学制度を作って社員を海外に留学させました。仕事もできたし課題も解決してくれる人でしたが、相当な投資を個人にしています。そうやって個人の能力が大きくなるにつれてピラミッドの底辺が広がって行くんです。
勇気を持って投資していく。結果、いい人がきて事業が磨かれます。
新井:
今の話はすごく重要なことです。うちはベンチャーだからと言い訳をするところが多い中、会社のお金で留学させているんです。
岩元:
彼女は会社で一番できる人でした。もう一人いた優秀な彼女も幸せになっていただきました。社内からもいいのかと言われましたが会社とはこうした事を乗り越えられる存在だと思います。
新井:
経営者の覚悟なんです。利益が出ていないなど言い訳をだいたいします。
でも、いい経営者は優先順位が違うんです。
現場が困る、利益がでないという事についてはなんとかなるからという覚悟が出来ています。
岩元:
お金はなんとかなるんです
新井:
ここが経営者の覚悟です。
WIRED:
覚悟をもつのは難しいと思いますが、新井さんは面談の中でどうやってそれをはかっていますか?
新井:
一番は発言内容です。雑談は大事です。社長が事業の話はうまいに決まっているんです。
面白いビジネスモデルかどうかは聞きますが、人となりが大事です。どうしてそこまで本気になれるんですかという点をしっかり見ています。本気でやりぬくのかどうかわからないからです。
特にベンチャーは何をするかより誰がやるかの方が大事です。ヒト・モノ・カネと言いますがベンチャーはヒトしかいないんです。だからベンチャーは人にベットするしかありません。だからこそ誰がやるかが大事でそうじゃないと怖くて投資できません。
こうした共通要素を雑談から探ります。先ほど岩元さんから「磨かれる」「経営本を参考にしない」という話がありましたがエー・ピーカンパニーの大久保さんも同じ事を言っています。
会社は百社百様なので他と同じ真似しても同じにならないんです。どういう条件かわからないで真似するとダメなんです。
炭素を循環させる消費者参加型の全く新しい市場
WIRED:
新井さんから言われて記憶に残っているのはなんですか?
岩元:
事業内容を10分で理解してもらえたのはありがたかったです。国内だけでなく海外の投資家も含めて私たちのモデルを本気で理解してくれる人はいないと思っていました。もちろんわかりやすくする努力はしないといけないのですが、実績が大事だと思いました。
目標とする場所に行く課程であっても小さくても出来ることを証明することが大事=実績という事です。小規模でも実績がある程度できていたので信じてもらえました。0を1にできないままでは夢物語です。
実績、証明にはすごく力を入れてやっていました。
新井:
ここは大事な話で日本環境設計は2007年に創業してから毎年黒字なんです。環境技術の会社はインフラ投資にお金がかかるので最初マイナスになるのが一般的です。私たちが日本環境設計の技術を理解したのは当時そういう案件が多かったからです。ごみからエタノールを作る案件が多かった時期だったので他と比較する事が出来ました。
でも、ビジネスモデルでは何百倍もすごいと思いました。ずるい仕組みを持っているんです。日本環境設計の本質的なビジネスモデルは消費者を巻き込んだ商社です。多くの人が技術の会社だと思っていますが、地下資源(原油)を握っている商社なんです。
無料で皆さんから集めたものを回収してエタノールを作り、メーカーなどに販売します。この事業は資源価格や調達価格で利益が決まります。
他の会社は原料を市場価格で仕入れるのに市民参加型で無料で仕入れるんです。だからこのビジネスモデルはまわると思いました。
岩元:
原油があって、精製してものをつくってという市場があります。地下資源と地上資源です。これを炭素の循環と考えました。
簡単にいうと燃えるものは炭素が含まれているのでこれを循環させれば石油はいらなくなるんです。消費者にどんなものをリサイクルしたいか聞いてみると捨てたくないものをリサイクルしたいと考えている事がわかりました。そこでそれをお店に持って行きたいという気持ちを束ねて愛着のあるものをお店にもっていく仕組みを作りました。
普通は石油で作ったものより安かったら買うかとなりますが、500万人の消費者は自分が出した愛着あるものからリサイクルされたものを買ってくれると信じています。
まったく新しい市場を証明します。
新井:
簡単に言いますが普通はできません。名も知らない会社がIYやイオン、海外でも契約するんです。
なぜ出来たんですか?
岩元:
国外は40社くらい、ウォールマートなど世界のこれという大手小売の会社を4ヶ月かけてまわりました。日本のベンチャーが契約を結ぶには一筋縄でいきませんでしたが。
新井:
乗り越えるところの話は岩元さんと飲みながら聞いて下さい(笑)
岩元:
しかしできるんです。
一番正しいことをやっているからです。
一歩踏み出す人へのアドバイス
WIRED:
簡単にできないというのはその通りだと思います。これがいいと心の中では思っていても一歩踏み出せないでいる人がいると思います。
例えば転職するにしても自分のプロジェクトにしてもさらっとやってしまうのはなぜでしょうか?アドバイスをいただけますか。
岩元:
ベンチャーはやらないほうがいいと思います。だいたい失敗します。私の場合は数字だけは作れていました。
経営の本質などはわかっていたように思いますし数字へのプレッシャーはありませんでした。99.9%の経営者はお金で困ると言われますがどんなふうにしたらキャッシュフローがまわるか証明できたら独立してもいいと考えました。
しんどいのはだいたいの場合大企業にいっても相手にしてくれないという点です。経営思想も組織論も特許もわかってて初めて企業は話を聞いてくれます。つまりベンチャー側が大企業以上のことをわかっていて初めて話を聞いてくれるという事です。
新井:
基本的には相手のことを考える力でしかありません。相手の立ち位置があるんです。どうなったら相手が困るのか、それがわからないと会話は成立しません。自分達が事業をおこしたときこんなの無理だと言われました。だいたいの人は言い訳をして一歩を踏み出しません。
法政大学の坂本先生と名刺交換の時にこういう金融機関を作りたいんですとペーパーを渡したのが始まりでした。きっかけは大事ではありません。中身が大事です。坂本先生はペーパーを見てイメージできたと言って下さいました。本当のことをするなら伝わるのです。
僕らもいい会社の経営者と出会うことで磨かれました。動くこと、磨かれることで本物になるのですがそこまで行く手前で終わる事が多いです。