9月5日に開催された結い2101受益者総会の詳細レポートの5回目は投資先のいい会社の経営者講演です。今年は日本環境設計の岩元社長でした。リサイクルの概念を一から変える技術とそれをみんなが実感できるように消費者参加型にしたのがミソです。
今まで捨てていたゴミからバイオエタノールが作れてしかも経済的にも十分ペイするというのは本当に画期的です。地下資源の奪い合いをする必要がなくなるので戦争を無くすことができるかもしれないワクワクするお話です。
ただの技術の会社でなく仕組みをうまく作ったのが岩元さんの凄いところで、断られても断られても毎日訪問し続けたというあきらめない姿勢には脱帽です。
第6回「結い2101」受益者総会
〜循環型社会創造元年〜
京都議定書が交わされたこの地で民間の力で循環型社会を再構築する
日時:2015年9月5日(土) 10:00〜17:00
場所:国立京都国際会館アネックスホール
主催:鎌倉投信株式会社
岩元美智彦さん(日本環境設計株式会社 代表取締役社長)
岩元:
消費者参加型の循環型社会を作ろうとしている会社です。一社が理想に向かって走らないとなかなか循環型社会はできないだろうという事で独立しました。昨年まで資本金1000万円の会社でしたがようやく評価されて大きくなりました。昨年度ベンチャー大賞を受賞しましたが民間が運営している厳しい基準で450社の中から選ばれました。
リサイクルのイメージはみなさんにとってどんなものでしょう?私にとってはバック・トゥ・ザ・フューチャーです。大学生の頃に見た映画でドクがデロリアンにゴミを入れて動かしているシーンがありました。これを実現させてやろうと今の事業を始めました。映画の中でドクが向かった未来は2015年10月21日。この日までに技術を完成させるんだとこれまでやってきました。
リサイクルにおける重要な要素
リサイクルには大事な要素が3つあります。
- 技術の開発
- 消費者参加型
- 人材育成
みなさんリサイクルを実感してますか?
なんとなく分別してるという感じで実感ってなんだろうという人が多いのではないでしょうか。調べてみると買ったところにいらなくなったものを持っていくと実感できるという意見が多く、駅とか学校に回収ボックスがあるといいなという声が集まりました。
生活動線の中に回収ボックスを置く事が大切です。
人材育成の面では社内留学制度で海外に留学しにいっている社員がいます。海外でも広めて欲しいと思っています。
そして技術についてです。地球上にごみはありません。すべて資源です。当社ではTシャツからバイオエタノールを作っています。バイオエタノールでよく知られるのはガソリンの代替ですが、ビールを作ってるようなものです。
そのバイオエタノールの99.9%は食べ物から作っていますが食べられるものをエネルギーにしていいのか?という疑問があります。実際、とうもろこしやさとうきびの価格が上がったので食べ物以外で作ろうとしました。
Tシャツからバイオエタノール
バイオエタノールの原料としてTシャツの綿に注目し、綿を糖に変換することにしました。酵素パワーでアタックして糖化するんです。そうして糖化したら今度はアルコールに醗酵させます。プラントは言うなれば森伊蔵、千寿、万寿のような香りがしますが、今のところ世界で日本にだけ量産プラントがあります。この技術がマスコミなどで注目を浴びだしました。まだ詳しくは話せませんが新プロセスも11月に発表を予定しています。
私が100万出して資本金120万円の小さな会社を創業しましたが、そこから100ヶ月連続単月黒字を続けています。もちろん経営は厳しいですが黒字にする事にこだわっています。お金はなくても知恵があるという事でこれまで使ってなかったプラントを応用することにしました。
バイオエタノールを作る工程がタオルを染める工程と似ているので使っていなかったプラントを安く貸してもらうことにしたのです。そうしてエタノールを毎日作っていますが、特徴として手分別しないという事があります。
通常は分別してリサイクルしますが、それだとコストがかかって出来上がったエタノールが流通にのりません。分別せずテクノロジーで解決します。プラントに着古した服を入れたら水を入れて、酵素を入れてぐるぐる撹拌すると3日で完全に糖化します。そこにイースト菌を加えることでエタノールが出来上がります。
出来上がったエタノールは工場のボイラー燃料として使われています。
パタゴニアで使った資料がこれですが、糖さえできればいろんなものができるのです。
この技術が大事なんです。エタノールは更に脱水して99.6%以上にすると車に使ってよくなります。
携帯電話からバイオエタノール
第二プラントではTシャツではなく携帯電話をエタノールにしています。携帯電話は都市鉱山と呼ばれていて金銀銅レアメタルが入っています。今まではパーツを手作業で分解してそれぞれのリサイクル会社に分けていましたが、こちらもプラントに携帯電話をいれてボタン一つポンと押すと出来上がりです。
こうすることでコストが抑えられるのです。日本では携帯電話を700万台回収しているますが、そのうち400万台をやってるのがうちです。逆に言うと400万人が参加する仕組みがあるという事です。
生活動線の中に回収場所を置くことでリサイクルに参加できるようにしています。今現在工場がフル稼働なので3倍くらいの携帯電話の工場をつくる予定です。こちらも新築すると5億円かかるところを中古を改良して作っています。外は古いが中は最先端です。
地上の有機物に着目
資源は地下にあるか地上にあるか、有機物か無機物かに分けられます。無機物の技術開発は既に出来上がっているのでうちでは地上の有機物に着目しました。「燃えるもの」有機物を燃やさずリサイクルすることが大事です。
これまではモノのリサイクルだったのを原子や分子レベルでするようになりました。紙は炭素を中心としたもので紙もプラスチックもC(炭素)とH(水素)をまわすと石油がいらなくなります。そうやって原子レベルで考えるようになるとモノの見方が変わります。おもちゃも服も同じもので出来ていると見えてきますし、人間も森も一緒です。
バイオエタノールは工業用基礎原料なのでプラスチックにもガソリンの元にもなります。日本の家庭ゴミは年間4500万トンですが、これから1100万トンのエタノールが作れます。そしてそれは1000万トンのプラスチックが出来るという事で、プラスチックの国内消費量に匹敵する量です。
更に企業からでるごみは年間4億トンです。日本には4.5億トンの資源があるという事ですから、使わない4億トンは輸出できるんです。100円/リットルにすることで経済性がついて投資がくるようになりました。
生ゴミからエタノールをつくる工場も3時間でエタノールを作ることができます。技術はどうにかできるので底力が必要です。資源は埋蔵量ではなくなります。
日本の会社は技術は出来ても仕組みづくりやブランドがへたくそでした。当社はアップルやグーグル目指しました。仕組みもトップでないと世界に通用しないからです。消費者に参加してもらうために考えました。
リサイクルのインフラを作ろうと
「買う」「使う」「捨てる」から「リサイクル」「買う」「使う」へ
FUKU-FUKUプロジェクトとPLA-PLUSプロジェクト
あなたの服から地球の福へという事でみんなでやりましょうと呼びかけました。大企業が自分達の考え方を見つけて独自にやってきてくれたのです。各社やり方がばらばらだと消費者はどうしたらいいのか迷います。考え方を統一してくれませんか?とお願いしました。
生ゴミと一緒に捨てたくないものを聞くと「服」「おもちゃ」「文具」という答えが多かったのでプラスチックを地球のプラスにという取組も始めました。プラプラという呼び名は社内で反対もありましたが・・・
おもちゃ業界ではタカラトミー、バンダイが参加していますし、トヨタ、レクサスも参加しています。環境教育のワークショップなどを毎月やっています。顔ハメを作っておくと写真を撮ってSNSに拡散してくれます。
音楽と環境という組み合わせでもワークショップをやっていて参加した子供たちの笑顔が楽しさを物語っています。「学ぶ」がリサイクルには大事で一生懸命やってるだけでは響かないのです。リサイクルは技術開発だけではだめだとわかりました。あるワークショップは二日前に告知したにも関わらず子どもが500人、親御さんも含めて1300人が参加してくれました。
マクドナルドのドナルドとうちのハチ君が一緒に写った写真もあります。これはかなりのレアで通常ドナルドは他のキャラクターと一緒に写ることはないのですが、カテゴリが違うという事で写真を撮らせてくれました。
現在では150社が提携していますが昨年まで10名だった会社は今年でも20名弱の規模です。でも、いろんな会社と提携します。業界トップ同士の2社も2社とも提携します。業界のライバルもリサイクルにおいてはライバルではないんです。こうした取り組みは1社でやってもできない世界です。
この取組は学校の教科書にも掲載されましたし、ユネスコのESDとして幼稚園に啓蒙活動に行きました。おっさんがハチ君の着ぐるみに入っていますが、人材不足はこういうところに現れます・・・でも、順応力が高いので3分もすると逃げた子供達も帰ってきます。そこでリサイクルについて話しました。
園長先生からまだ使ってよと親から使い古しのおもちゃをもらうことがあるけれども、実際に子ども達に与えると子供達の求めるスペックに合わずに遊ばれないという事があると聞き、卒園と同時におもちゃも卒業させようという活動を始めました。
昨年は350園で実施していますが、5万円で卒園のパッケージ化しました。
地元の商店街や卒園生が応援してくれていて、無料ではなくマネタイズを軸にやっています。
海外進出も開始
JICAの海外の携帯電話回収プロジェクトではインドで1.2兆円規模なのですが三菱重工、日立製作所、そして日本環境設計という順番でした。記者さんからはなんで選ばれるの?天下りは何人いるの?と聞かれましたが天下りは一人もいません。インド側が当社を選んでくれたのです。
インドでいらなくなったおもちゃや服が集まりますか?と思われると思いますが、日本より集まりました。なぜかというと回収イベントの前に授業をやっているからです。
こうやってリサイクルすると戦争をなくせるよね。地下資源の奪い合いが無くなるよねという話に子ども達は感銘をうけておもちゃを出したのです。
ハチのマークをつけて回収ボックスへ入れようという事を人の力を借りてやっています。こういうことしようぜ!が大事です。
TOKYOからNYまで飛行機で5000回飛行できるくらいのエタノールが作られます。
なんとかしようぜ!というのが一番いいのかなと最近は思っています。JALとも一昨日提携を新聞発表しました。
GO!デロリアン走行プロジェクト
2015年10月21日 大安吉日。ごみから作ったエタノールでデロリアンが日本を走ります。
BTTFはバブルの頃だから日本の企業が一杯出てきます。日本でデロリアンを走らせようとアメリカのユニバーサル本社に直撃してきました。日本で広告代理店などにも口利きをお願いしたのですが動きがなかったので直接行くしかない!と直撃しました。
地上のごみを、戦争をなくせ。こどもたちの笑顔を取り戻せというイベントの趣旨を説明してデロリアンを貸してというと「いいよ」という返事をもらいました。でも、結局フロリダまで行って映画で実際に使われたデロリアンを買ってきました。
「何かをしよう」が大事であって日本の最先端の技術でこんなことができるんだという事をアピールしたいと思います。映画のワンシーンを着古した服で再現するという記者発表は朝日新聞デジタルで7000シェアされました。
こういったリサイクルだからユニバーサルもすごい!と認めてくれました。ただ単にあの映画のシーンを作っただけでなく、消費者参加型であるところが評価されたのです。
今、地球環境防衛軍の隊長を名乗っていて一緒にやってくださっているお店にも出かけています。IKEUCHI ORGANICさんもストアに使い古したタオルを持って行くとバイオエタノールとなって再生されます。
私たちは100年後の未来を考えています。資源争奪の戦争は私たちの生活から生まれています。戦争を無くすのは循環型社会の形成によって必ずできると思います。そしてそれをみんなの力でやりたいんです。
みなさんに平和を感じて欲しいんです。
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