"いい投資"探検日誌 from 新所沢

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鎌倉投信:結い2101受益者総会(2016)詳細レポート Vol.4 基調講演 中編 台湾のある会社に学ぶ 人を大切にする経営とは

受益者総会詳細レポートの4回目は法政大学大学院 坂本光司先生の基調講演の中編です。

台湾のある外食産業の驚くほどホワイト経営な実態に驚きながらこの業態でこんな事ができるのか!と感動しました。今度台湾に行った際には絶対に行きたいです。台湾の超ホワイト企業を紹介しながら人を大切にする会社経営のキモを解説されています。

基調講演 「人を大切にする会社経営のあり方」

坂本光司さん(法政大学大学院教授)

アジアでも人を大切にする経営に注目が集まる

人を大切にする会社を現実を通じて問題提起するんです。私は理論的な話は苦手ですし、世の中にはこんな会社がありますよという話をしています。

3週間ほど前に講演して欲しいと言われて台北にいきました。日本でいう経団連のような会の主催でした。私の書いた本が翻訳されていて、本を読んで行動を起こしている会社があるので講演して欲しいとわざわざ東京まで来ていただいて、呼ばれたので2泊3日で行ってきました。ただ、私も講演するだけではなく一つ条件をつけました。本当にいい会社を1〜2社見せて欲しい。お金はどうでもいいからというのが条件です。

日本にも経団連や経済同友会がありますが大企業は私を講演会に呼ぶことがほとんどありません。天敵のようなものだからです。

自分の会社が10%利益があって下請けを年に二回コストダウンするような会社をホワイト企業と呼ぶような馬鹿な話はないわけです。いくら素敵な美術館や博物館を作ったって鬱の社員を倍増させたりする会社はいい会社でありません。不況になると、円高になると決まってリストラするような会社はいい会社なはずはないのです。

そういう会社には就職しない、商品は買わないと徹底すればいいのですが、そうすると殆どの会社が問題があるので私は裸で講演しないといけなくなります。静岡からここまで自転車を漕いで来なくてはいけなくなる・・・。それはとてもできないので可能な限り買う物は選ぶようにしています。

日本の大企業はあまりこういう話は好きじゃないんです。全部ではありませんが。それで台湾の経団連のような財界団体が私を呼ぶことにびっくりすると同時に恐ろしくなりました。

私は生まれ故郷である祖国日本が大好きだし、世界に貢献して欲しい、日本が素晴らしい国になって欲しいと思っています。私が紹介するような会社が増えるといいけれども、残念ながら効率や業績や規模や株価などどうでもいいことにうつつをぬかして大切なことを忘れてしまっています。

台湾では300人くらい集まっていただいて基調講演とパネルディスカッションをやりました。実はその1週間前、中国でも3か所くらいで講演しているんです。中国の会社にとって私のような者は天敵な筈なのに人を大切にする経営の話を聞きたい人がいるんです。

アジアの国は大きく変ろうとしています。

台湾にある、人を大切にする「ある会社」 

台湾の会社を1つ紹介します。

「ある会社」の従業員は2,000人、業種は外食産業です。業績は20年以上黒字を持続しているんです。利益率20%の会社がよくて5%が悪いということはありません。黒字を持続していればやることをやっていれば十分です。

売上高経常利益率

でも、こういうバカげたことをしている会社があるんです。「先生、私の会社は売上高経常利益率20%です。すごいでしょ。本にのせてください。」という経営者が時々いらっしゃいます。

私はその時いろんなことを聞くんです。社員の平均年齢を聞きます。40歳ですと。その人達にどのくらいの年収を与えているんですかと聞くんです。370万円くらいだと思いますという話がありました。

私は「あなたの会社は経常利益率20%の力はありません。社員が犠牲になっています。」と答えました。

利益は10%でもいいから社員に還元しなさいと。利益率が5%で社員の年収が700万円の会社があると思えば売上高経常利益率20%で40歳を超えて年収が400万円を超えない会社もあるんです。

どちらがいい会社ですか?利益率が高い会社がいい会社じゃないじゃないですか。

利益率が10%の会社があって、一方で利益率が5%の会社があります。5%の会社はまるで残業もないし強制的な成果主義なんてやっていない、教育も時間をかけているならばむしろ利益率の低い会社の方がいい会社なんです。

台湾の「ある会社」は創業以来赤字なんて社会悪なことはしたことがないと言いました。平時においては赤字というのは内部の問題です。経営の考え方が間違っているんです。

利益は神様が与えたご褒美です。正しい経営をしている事に対するご褒美、社会のお礼です。高すぎてもだめです。

日本で売上高経常利益率50%を超える会社を数社知っています。私はその社長に問題提起したことがあります。その会社の社員の年収は40歳で1000万円を超えていましたから社員に還元しなさいとバカげたことは言いませんでした。

じゃあ仕入れ先、下請け先はどうかと聞いたらそこも10%程度の利益を出していたのでそちらも下請けに還元するように言いませんでした。教育や設備投資などの未来経費も10%くらいかけていたのでこれもこれ以上かけるように言いませんでした。

じゃあ私は売上高経常利益率50%を良しと言いましたか?言いませんでした。

私はその経営者にこう言いました。「売価を下げろ。」

50%の利益を生み出す商品はナンバーワンでありません。オンリーワンです。その会社が経営していないと社会が困るようなオンリーワンです。

という事はそのような薬や道具が高くて買えなくて死んでしまう人が出てくるかもしれません。なんで利益率が50%ですか。私は社会に還元しなさいと言ったのです。皆さんにも投資する際には正しい会社とお付き合いして欲しいと思います。

感想:
会社の利益について赤字は論外、でも利益は出し過ぎてもいけないという事について実例を踏まえて解説しています。上場企業だと利益はあればある程いいという考え方になりがちですが、物事には程度ってものがありますよね。

正社員比率

台湾の「ある会社」は中途採用はしないと言いました。新規採用は毎年40~50人しているそうです。年によって凸凹しないで採用しているのです。おかしな会社は好況の時にたくさん採用して不況の時にゼロというところがあります。

あなたの会社はなぜ不況なのかわかりますか?人材がいないからです。
好況の時の利益はおこぼれ頂戴です。環境利益は偽物の利益です。利益は自分で創造しないといけません。人材の育成は好況不況全く関係ないんです。設備投資は関係ありますが。

「ある会社」では2,000人の社員の中でほとんどが大学卒です。今までの話を聞くとまあまあの会社に思えます。

正社員比率を聞くと90%でした。台湾も日本も外食産業の正社員比率は10%程度です。非正規社員は安定的雇用が保証されていない、企業の勝手な都合で活用する雇用形態です。私は非正規雇用された経験がありませんが非正規雇用の人は毎年3〜4月は更新してくれるのか心配だと思います。非正規雇用の場合は期間切れでリストラじゃないと言う会社もあります。

そんな中、外食産業で正社員比率が90%というのは極めて高い数字です。なぜ100%じゃないんですか?と聞きました。すると期待した答えが返ってきました。

「私は本当は正社員にしたいんだけれども10%の人は嫌がっています。社員の都合です。」

これは、あるべき姿そのものです。人間のために会社はあるわけです。人を幸せにするために会社があるんです。今は非正規のほうが幸せだから正社員になりたくないという人がいるわけです。

多くの会社は会社の都合でどのように雇った方が業績がよくなるかコストが下がるかで人間をコスト、部品のように景気のバッファのように考えています。人間をですよ!

最近の嫌な会社は300人の会社で派遣社員が100人というところもあります。しかも季節性でなく慢性的にです。そのような会社を放置してはいけません。

経営の目的をわかっていなんです。経営とは関係する人々を幸せにすることです。業績は結果としての現象です。関係する人が幸せと感じる会社は間違いなく業績が高いんです。

いい会社を見る時に使う法政大学大学院の学生や鎌倉投信の鎌田さん、新井さんと一緒に作ったものさしを持っています。私はいい会社100の指標をどこの会社にいってもチェックしています。

「日本でいちばん大切にしたい会社」がわかる100の指標 (朝日新書)

「日本でいちばん大切にしたい会社」がわかる100の指標 (朝日新書)

 

昨日いった会社(四国部品)は点数を付けたけど先生、恥ずかしいと言われました。何点か聞くと70点だと言いました。私はまあまあだと言いました。

地域で良いと言われている会社はせいぜい50点だからです。日本でいちばん大切にしたい会社大賞の表彰をうけるなら80点以上だねと言いました。経営の問題の所在が30カ所わかったらよかったじゃないと言いました。なぜなら経営は問題解決だからです。

感想:
正社員雇用率についての話です。昨今、非正規雇用が増えていることが問題になっています。将来に不安を抱えたまま働くことで人は無意識のうちに消費マインドが冷え込み、デフレを助長することにも繋がるのではないかと思います。こうなると自分で自分の首を絞めていることにもなりかねません。

採用についても景気に左右されず安定的に採用を続けることが結果として会社の力を育てることに繋がります。

人を大切にする経営指標:離職率

台湾の「ある会社」に離職率を聞きました。高い会社はいい会社でありません。退職にはいろんな理由がありますが、定年や寿は拍手ですが、転職的離職は問題です。

多くの人は辞めるときに給与がどうとかいいますが嘘です。この会社にいたら幸せになれないと社長に面と向かって言えないからからそういう嘘を言うんです。離職率が10%以上の会社は近い将来倒産する、内部崩壊すると思います。

過去入社して3年以内に大学生が3割辞める高校生が5割辞める日本でよく言われる7・5・3方式で計算してもらったら台湾の「ある会社」の離職率は2%だったんです。

私は東証一部の重役30人くらいと食事したらその中に離職率が40%という会社がありました。日本の大企業で給料も高くて休みも多いのに次々人が辞めている会社があるんです。

「ある会社」の離職率2%は1年以内に辞めた人でした。1年もってくれると続くのですがと経営者は話していました。実質ゼロと言っていいと思います。

なぜ続けることができるかというと人を大切にしているからです。成長の喜びを感じられて自分の家族も幸せになるという社風があるからです。頑張ればお金なんてどうでもいい話です。

感想:
IT業界にいると離職率は耳の痛い問題です。受益者総会でも話していたサイボウズさんはかつて離職率が高く、採用・人材育成にコストがかかり過ぎることからマッチポンプな状態に気づき、ホワイト企業へ転身しました。ブラックな業界でホワイトな企業がモデルになることで業界全体の働き方が変わるのではないかと期待しています。

人を大切にする経営指標:残業時間

残業時間がどのくらいあるかも確認します。

サービス残業については言いたくもありません。「うちの会社は朝礼が、清掃がすごく活発です。」という社長がいました。朝礼をやるために30分前に社員が集まるんですと言われ、残業手当がつくんですか?と聞いたらそんなものは出していないと言われました。

それじゃ違反じゃないですか。好きな人がくればいいというのならともかく、業務命令を出す朝礼は業務そのものじゃないですか。違反ですよ。そんなのは言語道断ですよ。

日本でいちばん大切にしたい会社大賞を受賞した会社の中で残業時間が長かった会社はIT産業の会社で月に15時間でした。これは例外でその会社を除くと月10時間以内、大賞を受賞する会社は月6時間です。

6時間というと1日30分です。残業時間が少ない会社に疑わしいと思った人が17:30に電話したら誰も出なかったので先生、あの会社はつぶれたんじゃないかと私に言ってきた人がいました。

台湾の「ある会社」は2,000人の平均が月に30分です。外食産業でですよ。誰をも犠牲にしないのが経営です。

日本では三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)と言いますが、取引先社員とその家族、社員とその家族を含めた五方よしが人を大切にする経営です。

「ある会社」の給料は業界平均の1.5倍でした。そして残業はしないんです。

なぜそんな事ができるかと言うと、常識的な従業員の数と比べて1.4倍採用していました。100人いればお店がまわるところを140人雇って時間差で調整しているんです。給料は1.5倍です。

この会社のリピーター率は99%で客単価は業界の1.7倍だそうです。広告宣伝は実質0。通常、外食産業は売上の数%を広告宣伝にかけています。

利益率を聞くと数%でした。・・・最高の会社でした。

海外でいろんな会社を見ていますが、日本にもなかなか無い「いい会社」です。しかも20年以上にわたって立派な業績を残しています。

感想:
IT業界にいると残業時間は耳の痛い問題です・・・。経営的には残業代を払ってまでも仕上げた方がいいのかという考えが当然のことながら出る一方で納期という避けがたい問題があります。これも下請け、下請けという多重構造をどうにかしないといけないんでしょうね。タ

人を大切にする経営指標:社会への貢献

最後に社会に対する貢献です。内だけ見ていれば良い訳ではありません。工場を見て驚くことがいっぱいありましたが一つだけ。

休憩時間ではないのですが福利厚生施設にいる方がいました。椅子がいくつかあって座っている社員がいて白衣をきた社員の肩もみをしている方が5人いました。どう見ても全盲の方でした。

社長室に戻って肩もみをしている方の属性を聞いたんです。私が期待する通りの答えが返ってきました。全員正社員です。障碍者は全社員の4%います。そして毎年増えていました。

日本では法律で2%の雇用を定めていて平均雇用率が1.89%です。法律の水準に達せず罰金を払っているんです。障害者を雇用するより罰金5万円払ったほうがいいなんてこんな会社は認められません。

「そんな会社の社長は豚箱にぶちこめ」と言ったら養豚業者にえらく怒られました。先生、豚の方がましですよと。例えが悪いとサイボクハムの社長に叱られました。

普通は先生、うちには視覚障害者が働く仕事はないから無理だと言われます。でも、今言ったような例があるわけです。全盲の方を雇う時に「あなたの仕事は社員の肩を揉むことです。疲れを癒やしていただくのがあなたの仕事です。頑張って下さい。」と言えばいいんです。

台湾の方は東日本大震災のときにもたくさん寄付してくれました。「ある会社」では自分の稼いだ1年のうち一日分を世の中に使おうという仕組みがあります。この仕組み始めた時、反対する人は一人もいなかったそうです。そうして全員の一日分の給与を会社にプールしておいて会社は同じ額をオンして全体で寄付しています。

台湾の「ある会社」の名前は鼎泰豐(ディンタイホン)と言います。日本でも銀座や新宿にある台湾料理のお店です。

感想:
鼎泰豐、小籠包が有名なお店ですがこんなに素晴らしい会社だとは知りませんでした。次に台湾に行った際には是非行きたいと思います。日本の鼎泰豐はフランチャイズなのでまた違うんでしょうね。

 

後編へつづきます。

「結い2101」第7回受益者総会
〜これからの社会に必要な若手経営者たち〜

日時:2016年9月10日(土) 12:00〜17:00
場所:横浜港大さん橋ホール
主催:鎌倉投信

  1. 開演挨拶
  2. 決算報告
  3. 基調講演 前編 中編 後編
  4. 投資先経営者自己紹介”カヤック”
  5. 投資先経営者自己紹介”サイボウズ”
  6. 投資先経営者自己紹介”マザーハウス”
  7. 投資先経営者自己紹介”ユーグレナ”
  8. パネルディスカッション 前編 中編 後編