いい投資探検日誌(from 八女)

しあわせをふやす いいお金の使い方を考えています。サステナブル投資家。2017年に新所沢から八女に移住しました。週末は一口馬主を楽しんでます。

鎌倉投信:結い2101受益者総会(2016)詳細レポート Vol.3 基調講演 前編 働く人、障害者を守る会社

受益者総会詳細レポートの3回目は法政大学大学院の坂本光司先生の基調講演です。第1回の受益者総会でも基調講演をしていて人を大切にする会社とはこういうものだ!という強い口調に背筋が伸び、私がいい会社に興味を持つスイッチを押してくれたきっかけだったように思います。

今回の講演もとても楽しみにしていました。1時間の講演でしたが内容が盛りだくさんだったので前編、中編、後編の3回に分けたいと思います。

鎌倉投信と坂本光司先生とのつながり

鎌田恭幸さん(鎌倉投信 代表取締役)

坂本先生には第一回目の受益者総会で基調講演していただいています。今回は6年ぶりに合流しました。先生とは直接の顧問契約などはありませんが鎌倉投信にとって大恩師です。

法政大学大学院教授ですが『日本でいちばん大切にしたい会社』を紹介されています。新井よりもはるかに多い日本全国7500もの会社をまわって会社経営の本質はなんなのかずっと説いてこられました。30年たってあの本が出てようやく人が気づき始めました。

新井がどういう投資をしたらいいか悩んでいる時に先生の本に出会いました。まだ本がたくさん売れる前で書棚にあった新井には本が輝いて見えたそうです。『日本でいちばん大切にしたい会社』を読んだ新井は自分に懺悔しました。

日本でいちばん大切にしたい会社

日本でいちばん大切にしたい会社

 

こんなにいい会社があるならぜひ自分達もそういう会社を応援できるような投資がしたい、それが鎌倉投信の「いい会社をふやしましょう」の原点です。

坂本先生もお忙しいので新井と二人で講演会にかけつけてA4二枚に鎌倉投信の設立趣意書を書いてお渡ししました。

「あなたたちのやろうとしている金融の形は正しい」

先生は会社に関わる人達が幸せかどうかそういう視点で見られます。自分も応援すると言って下さいました。その次に訪問した際は生徒さんの前で私たちを紹介して下さいました。まだ鎌倉投信ができる前の事でした。

「この人たちはこれからこんな事業をしようとしている。みんなで応援しよう。」

まだ何も実績を残していない、私たちがやろうとしている事に誰も耳を傾けていない時にです。これから取り組もうとしている事業を全力で応援して下さると言ってくださいました。

1回目の受益者総会では137名の前でお話していただきましたが、今日は1000名近い方がいらっしゃっています。坂本先生、よろしくお願いします。

基調講演 「人を大切にする会社経営のあり方」

坂本光司さん(法政大学大学院教授)

人を大切にする経営

昨日は高知に行ってきました。四国部品という従業員400名の会社です。

自動車部品を作っているということなのですが、社員の半数は自動車には関係のない 農業や食品製造、介護などをしています。そういうことをやっている会社と聞くとまるで根無し草なのかと言われそうですがそうではありません。

自動車部品の仕事が半分になってしまったので半分の人が路頭に迷うようなことがあってはいけないとみんなで相談して新しい仕事を始めたのです。結果として自動車部品の仕事は半分になりましたが誰一人としてリストラしませんでした。

宝のような会社です。そういう会社が新聞をにぎわすような社会になって欲しいと思います。

今朝は大学に行っていました。福島から社長さんが相談に来られるということで午前中、9時からスタンバイしていました。私の自宅は静岡県焼津という陸の孤島のような場所にあるのですが、午前中は東京に行ってその後横浜に来ました。

この会社も立派な会社でなぜ支援するかと言うと無くすことはこの国とって悲劇だからです。この会社を守らなければならないという事で、私の時間をその会社のために割いています。既にお返しの人生に入っていますので社会のために正しいことをしようとする人のために時間を使うのは我らリーダーの仕事だと自負しています。

何をしている会社かというと縫製品を作っている、子ども向け衣料品を作っている会社です。子どもも昔は270万人いましたが今は100万人にまで減っています。それでぎりぎりになってしまうと困るのです。

なぜかというとこの会社の1/3の社員は障碍者でそのうち半分は重度の障碍者だからです。どこの会社でも雇ってくれない人達に働くチャンスを提供しているということですので正義だと思っています。

一定の割合で障がい者が生まれたり途中で事故にあったり、歳をとると誰にでも障害がでるかもしれません。私は無神論者ですが神様がなぜ健常者に産んだのか考えると、障碍者に手を差し伸べろということだと学生に言い続けています。

そんな障害者にとって雇用の場がなくなることほど問題はありません。この会社のために結構な時間を費やしています。本来なら私が福島県まで行くべきなのですが、その前に鎌田さんからこの総会の話を受けていたので今日は福島から東京へ来てもらいました。

感想:
四国部品という会社を初めて聞きましたが、発注元からの仕事が減る中どうにかして雇用を守ろうと新しい業種に次々と進出していく逞しさ、そして経営者が雇用を守ることへの並々ならぬ覚悟に心を打たれました。

福島の縫製工場の話で思ったのは普段目にしていないだけで、私たちの生活も障害を持つ方によって支えられているという事です。

障害者が4人に1人いる幼稚園

その前は川崎に行ってその後に宇都宮に行きました。正しいことをしている方々を褒めてあげるようにしています。行政や銀行であれば出来ることはいっぱいあると思いますが、私ができるのは本通じてこのような会社を紹介し、世の中を変えることであったり今日のようなチャンスがあれば何が正しいか伝えることです。

川崎ではある学校法人へ行きました。日本で最大規模の幼稚園を経営されているのではないかと思います。ここは園児が1200人でとてつもなく大きな規模という事がわかります。まあ、規模はどうでもいいんです。そこの人が幸せなのかどうかがはるかに大切です。

1200人の園児の中に明らかに障碍者という方が200人いました。他にボーダーライン上の子も100人います。園長先生は久しぶりに本当に話を聞いてくれる方が目の前に現れたと涙をぼろぼろ流しながら話してくれました。私は国家国民を代表してお礼を言いました。

この国の障碍者雇用は従業員が50人以上であれば2%となっていますが、実際はそれ以下です。この幼稚園は4人に一人が障害者ということです。尋常じゃない数面倒見ているということになります。

大阪から来たお母さんは子どもがこの幼稚園に入るまでに障がいが重度ということで30カ所断られたそうです。辛かったんだろうなと思います。31カ所目にして川崎の幼稚園に辿り着いたそうです。

この園は重度の障害児から優先的に受け入れ、これまで入園を断ったことはないそうです。園長先生に今までで一番大変だったのはいつでしたか?と訪ねましたら視覚障碍者が一度に5人入園した時の話をして下さいました。自宅までお迎えが必要だと思っていたら子どもの感性って凄いですね。1〜2ヶ月もするとバスに乗って一人で通って来るようになったそうです。

私の名刺は点字名刺です。目が見えない方と名刺交換するためではありません。この子たちに安定的な仕事を提供するためです。先日会った市長や知事にもまっさらな名刺なので私の点字名刺は大学が作ったわけではありません。あなたこそ点字名刺にするべきだと言いました。

感想:
私も個人用の名刺は札幌の日新堂印刷さんのエコ名刺を点字名刺にしていただいています。ちょっとした事でも自分に出来ることをすることは大事ですね。

ちなみに受益者総会の入場札も静岡にあるモリスさんという障害者就労支援施設が作られています。モリスさんは第6回日本でいちばん大切にしたい会社大賞で実行委員会特別賞を受賞しています。

 

中編へつづきます。 

「結い2101」第7回受益者総会
〜これからの社会に必要な若手経営者たち〜

日時:2016年9月10日(土) 12:00〜17:00
場所:横浜港大さん橋ホール
主催:鎌倉投信

  1. 開演挨拶
  2. 決算報告
  3. 基調講演 前編 中編 後編
  4. 投資先経営者自己紹介”カヤック”
  5. 投資先経営者自己紹介”サイボウズ”
  6. 投資先経営者自己紹介”マザーハウス”
  7. 投資先経営者自己紹介”ユーグレナ”
  8. パネルディスカッション 前編 中編 後編