いい投資探検日誌(from 八女)

しあわせをふやす いいお金の使い方を考えています。サステナブル投資家。2017年に新所沢から八女に移住しました。週末は一口馬主を楽しんでます。

芽室町障がい者雇用促進セミナー 基調講演「企業による障がい者雇用 その課題と強み」成澤俊輔さん

先週土曜日に芽室町で開催された障がい者雇用促進セミナーの基調講演はアイエスエフネットハーモニーの成澤俊輔さんでした。 様々な境遇の方に働く場を提供しているアイエスエフネットについて同じIT業界でエンジニアをしている身として、価値観が変わる衝撃を受けました。障がい者に限らずどんな境遇にいる人であっても働くことの喜び、生きがいの発見を目指して仕事を作っていくというのはまさに非常識を疑い、変えようとしている事に他なりません。

そして補助輪のある働き方というのも素晴らしいと思いました。階段を上るだけでなく、つらくなったら一旦降りてもう一度上るチャンスがあるんです。

障がい者に限らず、人が生きていく上で安心を得ようと思ったら収入を得るために働かなくてはいけません。そして、それは形式だけ押しつけられたものではなく、本当に自分が必要とされていると実感できるものでなくて生きがいは生まれません。

今回障がい者雇用の先端事例として芽室町に訪問させていただきましたが、芽室町長が話されていた、セミナーのタイトルでもある「誰もが働ける社会」というのはこういう事なんだなと思いました。

芽室町障がい者雇用促進セミナー

 誰もが働ける社会の実現を目指して
  〜障がい者雇用から広がる共生社会の実現〜

日時:2015年6月6日(土) 15:00〜18:00
場所:芽室町中央公民館 2階講堂

基調講演

「企業による障がい者雇用 その課題と強み」
講師:成澤俊輔さん(株式会社アイエスエフネットハーモニー事業部長、NPO法人FDA理事)

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ライターとストロー

私が好きな言葉にこんな言葉があります。
「勉強で得られる事は答えではなく問いである」
後半でパネルディスカッションがありますので皆さんには私の話を聞きながら自分だったらどうするか考えてみて欲しいと思います。

「ライターとストロー」
この二つの共通点を考えてみてください。

皆さん、マッチを擦って火をつけるときどうしますか?片方の手にマッチを、もう片方の手にマッチの箱を持ってマッチを擦りますよね。ではライターで火をつけるときはどうしますか?

ライターは片手がない人が作りました。ストローは首がうまくすわらない人が作りました。他にも電話の子機やウォシュレットなども障がい者が作りましたし、エレベーターにある鏡は皆さんの身だしなみを整えるためではなく、車いすの方がエレベーターを出る時後ろが見えるようにつけられています。

でも、皆さんはライターを福祉機器だなんて思わないでしょう。誰もが手にして誰もが当たり前に使えるものがライターとストローです。

私は「誰もが当たり前」という事業をしています。私の話は触れもしないし、持ち帰ることができません。今日はこのマッチとストローの話をお土産に持ち帰っていただいて、お知り合いと話していただければと思います。

25大雇用の取り組み

私がこれから話すことは事実だけです。
これからのビジョンのような不確実な事は話しません。

アイエスエフネットについてご説明します。この会社には安全に安心に働ける実感を求めて来た人が集まっています。皆さんも今日のセミナーには教材を買い来たわけでもないし、何らかのサービスを求めているわけでもありませんよね。安心感を得る為に参加したのではないでしょうか?そこで、なるべく皆さんにも真似できるようなお話をしたいと思います。

25大雇用という言葉があります。アイエスエフネットという2000年に創業した会社は3400人、8か国、30拠点で展開するITを中心にした企業です。25大雇用というのはフリーター・ニート、FDA(アイエスエフネットでは障がい者をFuture Dream Memberと呼んでいます)、ワーキングプア、引きこもり、シニア、ボーダーライン、DV被害者、難民、ホームレス、小児がん経験者、ユニークフェイス、感染症の方、麻薬・アルコール等中毒経験者、性的少数者、養護施設等出身者、犯罪歴のある方、三大疾病、若年性認知症、内臓疾患、難病、失語症、生活保護、無戸籍、児童虐待経験者、その他破産者や外国人など就労困難な方といった働くのは無理だろうと誤解と偏見に満ちあふれている人達でアイエスエフネットでは1400名雇用しています。障がい者手帳を持つ人が500人、うつ病の人が200人働いている、そんな会社があるんです。

皆さんはこの話を聞いてだいたいこのように思ったのではないでしょうか?

  1. この社会課題にぶつかった中でも優秀な上澄みだけ雇用したのではないか?
  2. ITで儲けた潤沢な利益があるからやっているんじゃないの。
  3. どうやったらそんなことができるんだ?

この3つの疑問について紐解きたいと思います。

様々な境遇の人が集まったワケ

最初の疑問、上澄みの人だけ働いているんじゃないかという疑問ですが、違います。

創業のエピソードを話すのがわかりやすいと思いますが、アイエスエフネットは2000年に浅草橋の近くの10坪の事務所で4名からスタートしました。日本で初めてインターネットカフェを作った社長がこれからはITに詳しい人が必要だとIT派遣を始めました。当時IT企業といえば銀座や六本木などに本社があり、浅草橋に本社があるような小さな会社にはなかなか人が集まりませんでした。でも、派遣業は登録してくれる人がいないとやっていけません。このままだと続けられないため、無知識、無経験でも採用しますと募集要件を変えました。

仕事ってそうですよね。出来る事をするだけではなく、今は出来ないけれども頑張っていこうという人にこの会社で頑張ってもらおうとする場なのです。私たちの会社では履歴書を見ません。そうすると1日に150エントリーも来るようになり、5年間で社員は1000名になりました。つまり、履歴書を見られると困る人が集まるようになったのです。こうして会社が大きくなりました。チャンスや枠組みがないだけでみんな働けるじゃないか。ちゃんと一生懸命働いてくれるし一緒に働く醍醐味を感じてくれています。

顔に痣がある人はで面接100回落ちてしまいました。彼が悪いわけではないのに顔の痣が原因で採用してもらえないのです。その理不尽さを知った時、仮にうちの会社でだめだったらこの人はどうなるのかなと考え、当社で働いてもらうことにしました。彼らのような就労困難な人が働けるようにするのが目的であり、手段がITです。働ける人だけ働かしているようなことはありません。

誰でも働けるようにする仕組み

アイエスエフネットでは3つのステップを準備しています。FDA、ひきこもりの方を支援したいと考え、まず社会とつながることをあきらめた人をトレーニングすることから始めます。具体的には就労継続支援B型で補助輪のある働き方をしてもらいます。

場所や時間、支援など特例子会社を通じて派遣や紹介などの仕事を提供し、いずれは自分が補助輪になる側の働き方をしようぜと言っています。アイエスエフネットグループでは10個以上の会社とNPOを通じて様々な段階で社会とつながるように、そして上がることも下がることもできるように働く機会を設けています。

このような派遣業の場合3年で70%が離職していきますがうちは1%くらいです。25大雇用の方を1400名雇用していく中でトレーニングや支援、補助輪など様々な働き方ができるという事は大きな気づきでした。どうやって安心安全に長く社会とつながるかが大事です。こうした思いが先にたって手段として仕組みを作っている会社です。その人の情愛に合わせて働き方をしてもらっています。

人に合わせて業務を作る

でも、東京の会社だから、パソコンの会社だからできるんでしょと思うかもしれません。当社ではいろんな事業をやってます。

ITの世界ではエンジニアなら35歳で現役終了と言われています。でも、会社は家族です。当社ではリストラもしたことがありません。普通、会社は業務があって人を採用します。例えばお茶出しの仕事を知的障害者の方にしてもらっていたとします。そこに来たお客様がいつもありがとうと言ってお礼にコーヒーサーバーをプレゼントしてくれたとします。すると、お茶を出す仕事がなくなってしまいます。業務があって人を採用すると、例え感謝の気持ちからだったとしてもその仕事をしていた人のクビをきらないといけなくなってしまいます。そこで、人を採用してから業務を作ればどうだろうと考えました。

あなたにはどんな長所がありますか?話すことはできないけれども笑顔は素敵など人にはそれぞれ良いところがあります。そうして採用してからその人に合った業務を作っていったら飲食店も始めることになりました。

誰でも働けるのです。我々の会社にプロはいません。

医者は傾向を読み取り、治療をしますが雇用をつくることはできません。そして家族と当事者が動こうとしない限り働くことはできません。アイエスエフネットでは家族と当事者と深く話し合い、何がいいところなのか探し出します。また、家族が働いている姿を見たいという要望に応える為、表参道にカフェも開きました。このように願いを通じて飲食店などのビジネスも作っていきました。

会社に入社したらまず強みと弱みを書きあげてもらいます。それを元に仕事をマッチングするのは経営者の仕事です。自分のことは自分が一番知っているでしょう。そうして会社で働くことの応援ができるのです。

どんなことをしているのかご家族と語る会があります。お子さんはこうやって頑張ってますよ、こうすれば給料があがりますよという事を語り合います。するとご家族はこういう糸で支援されていくんだなと理解するようになります。

こうしたことは理不尽さに想いをよせられるからできることです。
理不尽さに一番想いをよせられるのは当事者です。理不尽さに文句をいってた気持ちを支援者になった時、当時の視点として覚えていて対応するのです。

無知識、未経験の人を採用していたら当事者がステップアップしていくようになりました。そこにはご家族の協力もあります。

世界一明るい視覚障がい者

私は7年前に目が見えなくなりましたが困ることが一つだけありました。自分で自分を証明できなくなったのです。そうして新しい癖ができました。自分の存在を確認できなくなったため、手をかくようになり、腫上りました。今はだいぶよくなりましたが。

学生時代は偏差値が自分の価値を証明してくれたので勉強を頑張りました。でも大人になると障がい者は結果を求められません。ただ頑張っていればよかったのです。おかしいなと思い、経営者として売上をいっぱいあげるのをがんばりました。

そうしていく中に答えが一つありました。それまで自分の存在は自分で証明するんだと思っていましたが、ある時気づきました。「世界一明るい視覚障がい者」の原点はあなたが笑顔って言ってくれたことです。自分のことは他人が証明してくれるんだと気づいたのです。

孤独な経営者が「自分ってなんだろう」って考えるように相手が必要なんだとわかり、力まなくなりました。そうして誰かの相手になってあげる仕事をしています。

自分のことを自分でなんとかしないとって思っています。働くってそういうことかな。社会と繋がること、あなたの存在は必要だよと言ってあげる事。働くことで社会とつながるのです。

世界一明るい視覚障がい者というのはは10年前に付けました。セルフブランディングが流行った頃の話です。そうする事でおまじないのように「明るく生きられるよ」という意味がありましたが、あと3年くらいで光を失う実感を持っています。でも、光を失った事をどう落とし込むかを楽しみながら生きています。明日死ぬかもしれない癲癇をわずらい、それを恐れてはいられないと思うようになりました。

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