先週土曜日に芽室町中央公民館で開催された障がい者雇用促進セミナーのパネルディスカッションレポートです。
パネルディスカッションの後に行われるグループ討議に向けた問題提起というような内容でしたが、障がい者も含めて誰もが働いて安心して生きていく社会に向けて様々な課題があることを知りました。
芽室町障がい者雇用促進セミナー
誰もが働ける社会の実現を目指して
〜障がい者雇用から広がる共生社会の実現〜
日時:2015年6月6日(土) 15:00〜18:00
場所:芽室町中央公民館 2階講堂
パネルディスカッション
企業戦略としての障がい者雇用
〜 だから私たちは障がい者を雇用する 〜
講師:
成澤俊輔さん 株式会社アイエスエフネットハーモニー 事業部長
村木太郎さん 前高齢・障害・休職者雇用支援機構 理事長代理
中島隆信さん 慶應義塾大学商学部 教授
且田久雄さん 株式会社ダックス四国 代表取締役社長
コーディネーター:
且田久美さん 芽室町福祉就労事業所誘致推進会議アドバイザー
且田久美:
本当に働いて戦力になるのか?企業に貢献できるかイメージがわかない場合もあるかと思います。そこで、今日は実際の働く映像を持ってきました。
(会場で流れた映像ではありませんが、ダックス四国で働く障がい者が紹介された動画です)
「障がい者でも働ける」ではなく彼らだからこそできる仕事です。誰もが働けるのです。
障がい者雇用率を民間企業では2.0%以上とする制度があります。北海道の平均は1.90%、全国平均が1.82%ですので北海道は全国平均以上です。しかし、ここ帯広管内では1.79%と全国平均よりも低いのが実態です。
また、雇用率だけでなく平均工賃の実績もまとめました。
就労継続支援B型事業所
全国 :14,437円
北海道:18,848円
就労継続支援A型事業所
全国 :69,458円
北海道:57,271円
九神ファームめむろでは十勝管内で一番高い平均工賃で10,2704円でしたが、管内2位の農園で8万円、3位の清掃・クリーニング業では5万円ほどです。
これを見ると働けたとしてもまだまだその収入で生きて行くにはほど遠い水準にあることがわかると思います。民間企業では最低賃金が12万円ですので、そういった一般就労へ向けて意欲がある障がい者が働くのは当たり前ではないかと思います。
障がい者の雇用を考える
村木太郎:
日本、ドイツ、アメリカで一般市民に障がい者に対する意識を聞いた調査結果です。
身近に障がい者はいますか?という問いに対してどの国も90%くらいは当たり前にいると回答しています。実際日本には日本には人口の6%に相当する800万人の障がい者がいますので、確率的には16人に1人が障がい者です。16人以下の知り合いしかいないという人はいないと思いますのであたりまえの事象ですね。
このように当たり前に身近にいる障がい者ですが、障がい者との距離が国ごとに違います。彼らは自分と同じような生活を送っていると思いますか?という問いに対して日本の場合は違うんじゃない?特別な生活を送っているんじゃないと答えた人が70%でした。ドイツは80%が同じ生活を送るのは当たり前だと回答し、アメリカも過半数は同じような生活を送るのが当たり前と回答しています。
それでは障がい者を特別に意識しますか?という問いには日本は60%が意識していますが、ドイツやアメリカでは90%の人が特別に意識しないと回答しています。
じゃあ日本人は障がい者に対して冷たいのかというとそうではないんです。障がい者に対して交流や支援活動をしますか?という問いに機会があればやりたいと答えた率は日本、ドイツ、アメリカのいずれも変わりありませんでした。ただ、ドイツとアメリカはしたくないという人が1/3いたのに対して日本はわからないと答えたのです。
アンケートの結果から日本における障がい者は健常者とは違う遠い存在だと言えそうです。町民、市民にとってはかわいそうだと思うけど国や自治体や福祉施設が頑張ってください。自分も機会があればお手伝いしたいと思っているけれど、どうやったらいいかわからないという存在なのです。
これをどうにかならないかというのが我々の気持ちです。社会の中で一緒に暮らす仲間として 障がい者に限らず共生社会を築いていきたいのです。
働くってなんでしょうか?
大事な事は収入を得ること。これは基本ですが、働くというのはただお金をもらうだけではありません。社会とつながる、社会の役に立つことも働くことの大事な意味です。
一方的に支えられているのではなく、自分も役に立っているという実感が大切で自分が成長していくことが大事です。社会の一員としてお互いに支え合う社会にする鍵を握るのが働くことです。
企業にとって障がい者雇用とはどういうことでしょうか?2.0%という障がい者雇用率を守ることが企業の社会的責任(CSR)であり、最近出てきたのが多様性の確保(ダイバーシティ)です。子育て中の女性や外国人など働きいくい人達も含めた多様性を突き詰めるとアイエスエフネットのようになります。
ライターの例など障がい者のために作ったものが世の中の為になっている例はたくさんあり、おそらく大もうけしていると思います。例えば花王はシャンプーとリンスに丸や三角の印をつけました。目が見えなくてもシャンプーとリンスを間違えずに区別できるようにしたものですが、これが大好評でした。
他にも障がい者に一緒に働いてもらうことで机の高さを変えられるようにしたり、わかりやすいマニュアルをつくったりするようになり会社の健常者の職員に好評だという事例もあります。
多様性を受け入れることで結果として高齢者も働きやすくなり、なんとなく習慣でやってきたのがマニュアルでわかりやくなったという事も起こります。法令遵守やコンプライアンスを越えて企業にとっても良いことが起こるのです。
障がい者は企業を支える一員です。決してお客様ではありません。あくまでも職場の一員です。福祉の方が障がい者を連れて来ると「これはできない、あれはできない」と企業の人に向けて何かと排除しようとする事が往々にしてありますが、障がい者に必要なものは排除ではなく配慮です。障がい者も我々の一員なんだから何かをするためにどういった配慮が必要かを考えてください。
障がい者雇用から何を学ぶか
中島隆信:
問題を発見するのが我々学者の仕事です。ですので、現状にどこかおかしいのではないかと思って否定的な見方をしてしまいます。
- 法定雇用率について働きたくても働けない人に対してみんな働くように義務を課すのが本当に望ましい姿なのでしょうか?
- 給与をもらいながら年金をもらうのはどうなんでしょう?
- 特例子会社といっても法定雇用率を満たすために外に出していた雇用を持ってきただけとも言えるのではないでしょうか?
- 障がい者に1.5万円の月給を払うために施設の職員に20万円の月給はどうなんでしょう?
- 税金をもらって障がい者雇用って社会全体から考えた時にどうなのという考えもあります。
- 差別禁止指針と合理的配慮指針は配慮と差別を切り離しただけじゃないの?
- 色々考えてみるとこのあたりに疑問符がつきます。何かできるわけではありませんが、この先に1歩進む必要があります。
障がい者雇用から何を学ぶかが大事です。
身体障害の方を雇用するとバリアフリーとは何かを学べぶことができます。知的・発達障害の人は空気を読みませんが、同じように空気が読めない人だらけの研究者の仕事は粗さがしして現状を否定することから始まります。精神障害の方からはワークライフバランスを学べます。
差別解消法としていろんな働き方がありますが、障がい者のための制度がかえって障がい者をふやすための制度になっていないでしょうか。そこから学んで生かしていくことが大事です。
どんな人も障がいをもちうるのです。日本人全員が障がい者ともいえます。そうして一般の就労にいかしていくことで特別扱いではなくステップアップとして、学びのチャンス、多様性へのチャンスとして欲しいと思います。
障がい者問題ではなく人権問題として考える
且田久雄:
ダックス四国という特例子会社で障がい者を雇用している立場としてお話します。
働ける人は働かないといけません。私は障がい者と47年向き合って今年で67歳になりました。
私には部下が28名いますが自閉症で学校では就労は無理だろうという人がいましたが、彼と一緒に働くことで先輩が穏やかになりました。時々、我々の方が障がい者ではないのではないかと思うことがあります。彼らにはできるものとできないものがあります。それは健常者も同じです。確かに仕事量は健常者よりも少ないですが、他の事ができます。人を穏やかにさせることができるのです。仕事量は他のみんながカバーできます。
ある人は2〜3時間トイレから出てきません。でも、仕事はできませんが健常者の代わりに70%の仕事ができます。健常者は二日酔いだなんだとすぐさぼりますが、そういう事を彼らはしません。一時間に一回煙草を吸いに行くなど健常障害というのが一番難しい。できるできないと言わないで一緒に働く環境がなぜ大事なのでしょうか。きちんと働いて税金を払うようにしましょう。
発達障害は200万人、ひきこもりなど含めるとざっと人口の1割以上が障がい者です。
本当にこれは障がい者問題なのでしょうか?人としての問題です。人権問題と考えればすぐ回答はでます。そういう方向で考え直して欲しいと思います。
人口減少の時代に彼らが活躍しないと我々の未来に影響します。
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