西粟倉ホタルの森フェス リレートーク藻谷浩介さんを迎えて「生き残る地域と消えゆく地域」という鼎談レポートの続きです。( 前回の記事 )
日本は資源に対して人が増えすぎると子どもが生まれにくい大都市に人を送り込んで無意識に人を減らしている。江戸時代後期も田舎の余った人を江戸に丁稚に出して人を増やさなかった。若者は雪、東京は川という表現が強烈でした。自分も無意識に北海道から東京に出てきてしまいましたが、まさにそんな感じになってしまっています。
生き残る地域の条件は
- 色んな人が入れ替わり立ち替わり入ってきて、そのうちの何割かが定住する
- 子どもが安定的に生まれ続けること
そのためには自分たちが住んでいる地域の魅力をもう一度見つめ直して地域内で経済を循環させる仕組みを作り、女性が生活しやすい環境を作ることが大切なんですね。
東京も人口を維持できない等、衝撃的な話もありましたが藻谷さんがノリノリで話している内容が面白く、埼玉から出掛けて良かったなと思った2時間でした。
リレートーク 生き残る地域と消えゆく地域
日時:2014年7月20日(日)13:00〜15:00
場所:大茅スキー場(岡山県西粟倉村)
出演:藻谷 浩介氏
竹本 吉輝氏
牧 大介氏
こんな田舎におったらいかん、都会に出て行きなさいって圧力をかけるからますます人が入ってこなくなるんです。
竹本:藻谷さんの本を読まれた方はご存じだと思いますけど、藻谷さんは「目から鱗みたいな話はやめてくれ。全部事実として数字に出てるでしょ。」という論調なんです。一般的にこの地域は政策も含めて盛り上がってるとか、ビジョンがあったりなかったりするからダメだというイメージがありますが、そうではなく、産業でもなく、家だというのが藻谷さんの話ですね。
藻谷:だから豊島区はだめで西粟倉はできるかもしれないんです。豊島区も気がついたんで、そんな簡単なことならと。もっとちゃんと若い人が来るように家を用意することです。
あとはさっき話した2つめの条件です。仕事がないから人がいなくなるというけれども、やる気になったらここから姫路にだって通勤できるんですよ。ここから鳥取空港までも1時間です。岡山からは遠いのに。羽田から1時間では八王子にも行けません。
あともう一つ、こんな田舎におったらいかん、都会に出て行きなさいって圧力をかけるからますます人が入ってこなくなるんです。
邑南町の町役場の人が言ってました。そこの中心人物の人が曰く、子供の頃「そんなに勉強しなかったら農業するしかなくなるぞ」と農業をやっていた親に言われ続けたそうです。農業というのは何も勉強しない人ができるものなんでしょうか?工夫する人はどんどんできるでしょう。
頭のいい人は東京に行っていい大学に行ってその後何をするんですか?銀行に入って何かの書類を書いて。何かが変わるわけでもないけどしないといけないのでと。そういう仕事を頭のいい人にやらせていていいんですか?
頭のいい人が田舎で農業でもやった日にはすごいことになりますよ。そういう事を昔の人は考えたことがなかったんです。お金がなかったので仕方なく百姓をやっているからせめて子どもは都会でサラリーマンをと思っています。ところが都会でサラリーマンをすると馬車馬のように働かされて、美作の牛のように途中で寝っ転がる権利すらないという・・・。寝っ転がったらクビですもんね。辞めても何も残らないでしょ。お二人ともかなり有名なブラックな会社で働いていましたけど。
竹本:ブラックですかね・・・まあカフェオレくらいです。
藻谷:東京の外資系で働いていたので大変ですよ。勉強した人ほど都会でこう言うんです。先生のいう通りやってないとお前しまいには一流企業のサラリーマンになってしまうぞと(笑)。うまくいけば半沢直樹。多くの場合は出向させられていく普通の社員にしかなりません。サラリーマンを20年もやってたら騙されたと気づくんです。面白くなかったでしょ?
牧:同意します
竹本:ものすごく同意します
藻谷:退職の日にパソコンを取り上げられ、自分のやったことを取り上げられるんです。リセットです。田んぼだと残るけどバトンを渡そうにも残らないんです。最近では退職時に拍手すらしてもらえません。
今住んでいる人が自分たちの場所の良さに気づいていない。大事なことは色んな人が入れ替わり立ち替わり入ってきて、そのうちの何割かが定住するかどうかがカギです。
牧:藻谷さんは日本総研という会社に所属しておられますがパソコンはもってない?
藻谷:日本総研という会社に一応いるんですけど、実は出社なし机なし秘書なしついでに経費もなしと。一切報告もせず、どこで何をしようと給料だけもらえる、そういう契約です。
牧:保険証は支給してもらう
藻谷:保険証と名刺だけ支給してもらって、あとはどこで何をしてようといいんです。
牧:そもそも普通のサラリーマンではない
藻谷:23年間銀行にいたんですけど、最後の10年くらいはこんな感じだったんです。出社すると今日は藻谷がいるぞ!とそんな感じでした。今はあちこちで話す時に会社の名前を出す対価として給料をもらっています。ただ、給料は前の仕事より下げてもらいました。
そういう仕事ができるようになったのも最初の10年くらい修行のように頑張ったから。自分が生まれ変わったらまた20年やるかというとやらないと思います。修行は必要だけれども今となってはあれは修行でもなかった。
コンサルならどうですか?コンサルでも役に立たなくなってきた。それだったら森の学校で10年働いた方が後々他のところに行ってもやっていけるんじゃないでしょうか。
牧:うちは辞めた子はいきいきしています。ただ、社員はみんなつらい思いをする事で有名な会社なんです。
藻谷:逆に言うと意欲がないと使えないと弾き出されてしまうんです。使えないんで鍛え直して欲しいと思われるような子どもを育てた方が。なんでそうなったか。人口がずっと増えてきたので日本人相手の商売がほっといてもできたんです。お役人もやらないといけない仕事も自然に増えました。誰がやっても勤まったんです。
ところがこれからの50〜60年で人は半分になる、そうすると経済が半分になって試験ができるだけという人では仕事を作っていけない。今までやってたような教育が役に立たなくなってきているんです。そこに粟倉にいるような人こそ気づいていないかもしれない。
日本はそうなんだけど、中国も現役の人口が減ってきた。一方アフリカや南米、中東などでは人は増えまくる。水も食べ物も足りない状況が加速する。その辺りの人から見たら人が減って減ってなんてのは天国です。
牧:この辺りは砂漠からしたら全域オアシスですね。
藻谷:彼らからすればこの見える範囲だけで30万人くらい暮らせるぞというくらいです。このままいって他の国が耐えられなくなったら、さすがに移住してきて日本の在り方も変わってくると思います。もう我慢できん、わしらを入れろと入ってくる。こんな人が食えるところで人が10分の1になったらそうなるでしょう。それくらい今住んでいる人が自分たちの場所の良さに気づいていない。大事なことは色んな人が入れ替わり立ち替わり入ってきて、そのうちの何割かが定住するかどうかがカギです。
今のペースだと65年で子どもがいなくなり、100年で64歳以下がいなくなるんです。これはイリオモテヤマネコよりピンチなんですよ。
もう一つは子どもが減り続けるのが止まるかどうか。いくら余所から人を連れてきても子どもが生まれないと川に雪を投げ込むようにどんどんどんどん社会は縮んでいくんです。子どもが生まれるか生まれないかは致命的に重要なカギなんです。
誤解を招きかねないのでよく考えて欲しいんですが・・・この会場から「じゃあお前が産め」とヤジが飛ばないのは私が男だからなんですけど、男が何人いても役に立たないんです。女の人から発想して生活しやすいようにしないといけません。おっさんの発想を売ろうとしてもだめ。今の状況は徹底的に男が作ってきた社会への女性の拒否反応とも言えるんです。社会の根底的な作り直しが必要です。
豊島区が消滅可能性自治体なのは家を貸さないだけでなく、ものすごく子どもが生まれていないからです。子育てしにくい環境なんです。東京というのは全国で一番若い女性が働いていないんです。2人に1人が働いていません。なぜか?働き続けるのが大変なので子供が一人目で専業主婦になってしまうんです。仕事を辞めて子どもが一人という状況。
逆に日本で一番若い女性が働いているのは島根県。島根県の子どもが生まれる率は全国で2番目に高いんです。日本で2番目に若い女性が働いていないのは大阪です。皆さんが都会にあこがれて同じような街づくりをしていくと、どんどん同じようになっていきます。
東京では大人2人に子どもが1人です。するとじいちゃんばあちゃん4人に孫1人、ひいじいちゃん、ひいばあちゃん8人にひ孫が一人で三世代で1/8になるペースです。いかに巨大な人口があってもこれだと人口は消滅に向かうんです。このままだと東京は千年後には無人になってしまいます。他に人がいるからそんな事にはならないだろうといっても他も東京ほど酷くなくても人は減ります。
今のペースだと65年で子どもがいなくなり、100年で64歳以下がいなくなるんです。これはイリオモテヤマネコよりピンチなんですよ。知ってましたか?ヒメボタルよりピンチなんです。トキも最後はヒナが生まれる状況でなかったので滅亡が確定的でした。コウノトリもそうです。結局余所から再導入してヒナが生まれるようになって増え始めてます。大事なのは今何羽いるかではなく、ヒナが生まれるかなんです。今から1000年後には誰もいない日本にコウノトリが飛んでいるかもしれません。
それを防ぐには大人2人に2人の子どもくらいが必要だけれども、全員そうなる事はありえません。するとたまたま相性のいい夫婦が3人生むようにしないといけません。でも、今のご時世3人の子どもを育てるのは大変です。3人でも1人でも親の負担が変わらないようにしないと子どもは増えません。
皆さん、イリオモテヤマネコの数が減っているのはイリオモテヤマネコのお母さんがいけないんでしょうか?イリオモテヤマネコの子どもが減る環境になっているからです。
人間の子どもが減っているのも日本人の子どもが減る環境になっているからで、それをあの女が生まないからとかいう人がいる間は環境がなおりません。考え方の根底をひっくり返さないといけません。
若者は雪、東京はそれを投げ込む川なんです。東京に若い人を送り込んだ私たちは全然違うことを考えてと思っているだろうけれども、生き物的に苦痛なく子どもを減らすには子どもを東京、大阪に出そうと。そういう決断なんです。
なぜそうなったか。日本は人が増えすぎたんです。明治以降2.5倍以上に増えた戦前に既に食わせられなくなって満州やハワイに移民しましたが、どうにもならなくなって外国を侵略して失敗したんです。おつりがついて国内に戻ってきた。そこからさらに1.8倍になりました。
明らかに資源が足りないし、食糧自給率も絶対に100%にはなりません。本能的に人を減らさないといけないとわかっているので2人に1人しか子どもが生まれない東京に人を集めて人を消滅させたんです。
若者は雪、東京はそれを投げ込む川なんです。東京に若い人を送り込んだ私たちは全然違うことを考えてと思っているだろうけれども、生き物的に苦痛なく子どもを減らすには子どもを東京、大阪に出そうと。そういう決断なんです。
そこら中に子どもがいてうるさくて仕事にならないような環境に戻す必要があります。
江戸時代もそうでした。江戸は当時世界最大の100万人都市でした。江戸時代後半の150年間、日本の人口は3000万人のまま全く変わりませんでした。なぜか。余った人はみんな江戸に丁稚に出したんです。そうしてそのほとんどが結婚できずに死んでいきました。結果として江戸時代の後期150年間、人口は増えませんでした。
生き物としては正しいんです。そういうやり方が正しいと思っているのは今のおじいちゃんは5〜6人兄弟で苦労したからです。今の子どもを考えてみて下さい。従兄弟の数もすっかり減りました。彼らはこれ以上人を減らさなくてもいいと言っています。
明治以来120年のやり方を止めて人を増やすやり方にしないといけません。そこら中に子どもがいてうるさくて仕事にならないような環境に戻す必要があります。国会でも赤ちゃんを抱いているのが当たり前で首相が変なことを言ったら赤ちゃんがぎゃーと泣いたり、あんたの言うことはわからんとヤジじゃなく子どもが言うとかそういう風に。北欧では首相が赤ちゃんを連れてきたりしています。そこらへんに子どもがいて、邪魔をするのは当たり前なんです。
いろんな仕組みが男にとって都合がいいようになってるんです。男女差別のようだけど、女性の都合のいいように社会を作り替えるんです。そうするとカラフルすぎる世界になったりもするんですが・・・、そういうことで子どもが減り止まります。
生まれる子どもの数×80くらいが将来の人口になります。西粟倉で毎年生まれる子どもはどのくらいですか?
牧:15人くらいです
藻谷:毎年15人だと80をかけて・・・1200人。維持できますね。1000人くらいはいるはずです。毎年12〜15人くらい生まれれば。東京は3500万人いても子どもは大人2人に1人なので消滅可能性自治体も出てくるんです。
牧:のってきたところですが予定の時間を10分オーバーしていますので最後に西粟倉に言い残すことがあれば
藻谷:今回はよく口だけでもったなと思うんですが、数字やグラフを楽しくクイズしながら講演をしています。西粟倉には呼んでいただいたことはないんですが、依頼いただければ他と比較してどうかというスライドをお見せしながら、暑い中聞いていただけるような熱心ではない99%の村民の方にもう少し快適な環境で話す場をいただければやってきますのでぜひそういう機会を使って下さい。
色々なところで講演をさせてもらっていて、2月のある日は午前中に大分で合併しなかった10周年の話をした後、午後には広島の山奥で合併10周年の講演をやったりもしました。どこに呼ばれても行っています。
合併はともかくこの地域は東西粟倉と大原の間でぐるぐるお金と産品がまわるようにして地域内で経済を大きくしていって欲しいと思います。この話は今日はしませんでしたがいずれまた。皆さんがやっていることはあちこちで宣伝します。
竹本さんにとにかく粟倉には来いと。ニシアワーな時間を過ごさせるので早く来いと言われて、本当は今日から休みだったんですが、本当に来て良かったなと思います。ありがとうございました。
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