日本の撤退戦?
増田レポートと呼ばれる消滅可能性都市について書かれた本です。この本では2040年に20~39歳の若年女性が50%以下になる都市について消滅可能性都市と定義づけていますが、それは都市(自治体)が持続的に存在していく為には子どもが一定数生まれないといけないというところからきています。
持続可能性の反対語としての消滅可能性なので、2040年に住民が0人になって街が消えるわけではありません。持続的でなくなっている都市(自治体)が896あるという事です。
7月に西粟倉に藻谷浩介さんのお話を聞きに行った時にもこの消滅可能性都市の話は出ていて、マスコミは勝手に地方がやばいと書いているけれども、東京都豊島区もそうだし、大阪にも消滅可能性といわれている地域があって、決して地方だけの問題ではないと話していました。(この本自体が『地方消滅』というタイトルですが・・・)
日本中から人を吸い込む東京は世界的に見ても突出した人口密度で、江戸時代にも地方で食えない若者は江戸に奉公に出して未婚のまま人生を終えるという無意識のうちに人口調整を行っていました。そんな話を聞いてそうだったのかと思ったのですが、自分自身も振り返ってみると北海道の片田舎から東京に出てきてDINKS生活を送っているわけです。
地方の中核都市が周辺の自治体を巻き込んで経済圏を作り上げて東京一極集中から脱却するとともに、子どもを増やすための政策が一刻も早く必要だという事に関しては政府も中核都市に機能を集約するモデル事業(地方中枢拠点都市構想)を始めていて、将来の日本の進む道の一つの姿なのかもしれません。
ただ、この本を読んでいてデータはとても参考になるのですが、対策がトップダウンのものに終始していて今の地方自治体にとって実現困難だろうと思うのです。こんなに大変な状況になっているから目を覚ませ!という事なのでしょうが、現実問題としては茹で蛙です。熱いけどここから出るのも不安だという状態の人達が主流の中でトップダウン式の政策は現場にやらされ感をもたらし、形だけ整えて実態の無い活動を生み出します。
こうなればいいねとは思うけれども、どこか他人事のような、教科書的な弱さを感じました。実際、藻谷さんと著者の対談の章でも日本人が最も苦手とする撤退戦だと言われていましたし。
下手すると中核都市に予算がまわったもののその予算は自分たちが生き残るために使われて、周辺都市は更にじり貧という事もありそうです。中核都市がダムになるかどうかはダムとしての腰の据わり方一つにかかってますね。
もう一つ気になったのはやはり出身地であり、課題先進地域でもある北海道の実例です。私の出身地厚岸は主力産業の衰退で人口減少に歯止めがきかない釧路圏に位置しますが、隣にある中標津町が持続可能性の高い町として紹介されているのに驚きました。
そして帯広を中心とした十勝地方が頑張っているのも象徴的ですね。『2020年の日本 革新者の時代』でも十勝地方の農業が取り上げられていましたが、十勝は課題先進地の北海道においても元気な地域ですね。