西粟倉ホタルの森フェス リレートーク藻谷浩介さんを迎えて「生き残る地域と消えゆく地域」という鼎談レポートの続きです。( 前回の記事 )
これから日本はどんどん人が減っていって消滅可能性自治体と呼ばれる自治体もあります。消滅しないための条件とは・・・
東京は人口が増えていると思ったら高齢者だけが増えているとか、全然知らなかったです。
リレートーク 生き残る地域と消えゆく地域
日時:2014年7月20日(日)13:00〜15:00
場所:大茅スキー場(岡山県西粟倉村)
出演:藻谷 浩介氏
竹本 吉輝氏
牧 大介氏
国は1億人を死守と言っていて主義主張はいいんですが、どうなるかは客観的に計算できます。後70年くらいでざっくり今の半分までなります。これは避けられません。
藻谷:前半は西粟倉頑張ってるな、自覚してくれと明るめの話をしてきましたが、だんだん抽象的な話になってきたのでこれからはきつめの話もします。
明治以降人口が3千万人から1.2億人まで4倍に増えました。国は1億人を死守と言っていて主義主張はいいんですが、どうなるかは客観的に計算できます。後70年くらいでざっくり今の半分までなります。これは避けられません。
今40歳の人は1年に200万人生まれていましたが、今は1年に100万人しか生まれていません。生まれる赤ちゃんが40年で半分になったんです。毎年200本新しい髪の毛が生えていたのが100本しか生えなくなったような。わかります?理屈として200万人生まれていたから1.2億人になったけれども、100万人しか生まれなかったら半分になるんです。毎日10kgエサを食べてた牛が5kgしか食べなくなったら体重も半分になるでしょう。ならないかもしれないけど。いずれ。
そういう理屈で確定しちゃってます。これから子どもが増えれば別だけれども、これから更に生まれる子どもは減る方向にあります。問題はどこで子どもが減るかということです。皆さんは東京だけは増えると思っているかもしれないけれども、それはナンセンスです。日本の人口が半分になる中で東京の人口だけ3500万人を維持できるはずがありません。
東京はどんどん人口が減っていきます。知らないでしょうけど、東京ではもう20年前から増えているのは65歳以上の人だけです。毎年東京では今年も人が増えましたと言っていますが、絶対に何歳の人が増えたかは言っていません。調べてみたら増えているのは65歳以上で65歳以下の人口は減っています。
なぜか?子どもが増えないからです。実際に調べてみたらそうだったんです。正確に言うと主に増えているのは70歳以上の女の人だけで急速にばあばの国になっています。オリンピックまでに東京では70歳以上の人しか増えなません。そういう人が10年間で34%増えるんです。そんなにどっから沸いて出たのかというと10年前に60代だった人がそのまま70代になるんです。これから30年間で東京では85歳以上の人が3.4倍に増えます。そのうち約半分が介護が必要で、85歳以上の4割の人が認知症の様になると言われています。
3.4倍に増えるというのはものすごく厳しい話です。なので元気な人から田舎に戻ろうかという事になるんです。この辺りで徘徊するんだったら誰か見てるだろうし、熊に出会うくらいですが、東京は誰も見てくれないのでマンションで一人で死んでいても誰も気づきません。人口が半分になった状況の中で補助金のつけあいで人の取り合いになるという話にならないのは海士町の話ですが、かといって都会なら人が集まるわけでもありません。
海士町は消滅しないけれども、東京都豊島区は消滅するかもしれない。やり方を間違えるとそうなるんです。
藻谷:この間、増田元総務相たちが消滅可能性自治体と言って市町村の半分くらいは消滅の可能性があると言ってましたが聞いたことがありますか?
では、その消滅可能性自治体に大阪の区が5つ入っていたのを知ってますか?
ニュースでは勝手に田舎は消滅すると書き換えてましたが、大阪からその中に5つ入ってました。さらに東京都豊島区が入っていたのを知っていますか?豊島区は池袋もあれば大学もある。おばあちゃんの原宿と呼ばれる巣鴨もある区です。
海士町は消滅しないけれども、東京都豊島区は消滅するかもしれない。やり方を間違えるとそうなるんです。何を間違えたのか?区長は何を言っているんだ!と怒ったけれども、取り寄せて読めば読むほどその通りの事が書いてあったので、こうならないように計画を入れ替えますと記者会見しました。
要するに他の区に比べても若い人が集まらずに年寄りが増えるんです。家屋敷を空き家にしたまま全然人に貸さないままゴミ屋敷にします。豊島区には高級住宅地の目白もあります。でも屋敷を抱えて最後は駐車場にする。とにかく人に貸そうという人が非常に少ない。他の区だとアパートを建てたりするんですが、「まあそういう人は他の区にいって下さい。私の土地は私の土地ですから、それが腐ろうがぺんぺん草になろうが私の勝手です。」
面倒くさいことはしたくないという人、人間が因業な人が多いんです。こういう人はどうしたらいいのでしょう?「景気が良くなるのを待つんじゃ。」という人です。
そういう因業な人がいなくなればいいけれども、今のままだと過疎地になってしまいます。
徳島の神山町では単純に言えば古民家の流動性をあげました。住める場所を安心して提供できることに特化したら住む人が増えました。
竹本:海士町はちょっと違いますけど徳島の神山町では単純に言えば古民家の流動性をあげました。住める場所を安心して提供できることに特化したら住む人が増えました。
藻谷:徳島の神山町というのはとんでもない山の中で、何もないから昔の人が神の山だと言ったんじゃないかというくらいのところです。2011年に人が少しずつ入り始めて、ITが使える人や料理人などクリエイトする人が静かに引っ越してきていて街のつくりを見て手をかけているなと思いました。そこでは空き家を貸し出すことを一生懸命やったんです。
皆さんは都会が有利で田舎が不利だと思ってるけど、神山町は消滅可能性自治体に入っていました。でも、それは最近始まったケースだからです。次にまとめる時には消滅可能性自治体ではなくなっていると思います。
一方で東京都豊島区はまだ入るかもしれない。なぜなら人を受け入れないところはどんな都会の真ん中でも人がいなくなるんです。地主、家主の行動にかかっているんです。
午前中の話を聞いていたら林道ひとつ作るにもあまり価値の無い山の中にちょっと道を通すための木を切るだけで嫌じゃという人がいる。そりゃ西粟倉は大変じゃろうと思いました。
牧:じわじわ状況は変わっていると思いますが、村で雇用対策協議会というのが移住者の受け入れをやっていこうと担当の課長が村の空き家を総当たりで全交渉をしました。西粟倉には70軒の空き家があって、貸してくれることになったのが当時2軒です。
藻谷:70分の2。なんとか大学の合格率より低いですね。
牧:じわじわと移住者も来て、子どもも生まれたり前向きに受け止める人が出てきていて、役場の担当の方も一生懸命やっていますが、家や山や土地など資産について流動性をあげる、ほったらかしをどうにかというのはまだこれからです。どの地域よりも山をどうしようかというのは力を入れていますが、突破するのは大変です。
藻谷:突破するのは難しいです。江戸時代、ここは天領ですか?津山藩?
牧:いろんな藩の飛び地になったりしていました。
価値も無いものにしがみついた人から突然そんなものに興味もないし勝手にして下さい、バイバイという都会人に所有者が入れ替わるわけです。
藻谷:江戸時代、土地の権利者は百姓でした。日本で百姓が奴隷であったことはないんです。歴史上一回だけそれをやろうとした人がいて、天智天皇というんですが30年くらいで失敗して最後は靴だけ残して行方不明になっていたという人なんです。まあ殺されたんです。
土地を取り上げる事は誰にもできなかったんです。太閤検地も調べただけですし、江戸幕府も年貢を搾り取っただけで土地は大名のものではないんです。ところで、お城は大名のものではなく幕府のものです。お前は国替えじゃというと明け渡さないといけませんでした。大石内蔵助が高橋城をとりにいって逆に赤穂城を明け渡しましたとか。
ただ、農地は農民のものなんです。千年、二千年の伝統があるのでわしの土地じゃと染みついているんです。なんの価値も無くなった土地もわしの土地じゃと思ってたけれども、相続税が取られる時になってそんな土地の事はもう知らないと言いだします。そうして、これから誰の土地かわからないのがどんどん増えていきます。
北海道の函館でも大正時代に建てられた長屋があるんだけれども、誰も住んでないゴミ屋敷になっていて、市が何とかしようと地権者に順番にあたったら取り壊すお金もないので好きにしてくださいと。
そういう事にならないためにはどこの家は誰がもっていて、どのくらいの確率で空きそうか、使わないんだったら相続人が持ってる事にして人に貸して下さいと相続人が生きているうちに決めておく必要があります。生前にそういったメンテナンスしていかないと山やら土地やら誰が持っているかわからないくなります。
土地を持っていると値が上がったので持っているんだけれども、誰も来ない。同じ事が米でもおおこりました。わしの田んぼじゃとやってたけど、今だと誰も見向きもしません。山でもわしの山じゃと言っていると、バブルの頃までは良かったかもしれないけど、その後は見向きもされません。
結局、持って抱えていばっていれば儲かった経験を持っている人がもうじきいなくなり、儲かった経験のない、なんとも思わない人が相続することになります。価値も無いものにしがみついた人から突然そんなものに興味もないし勝手にして下さい、バイバイという都会人に所有者が入れ替わるわけです。こっちの最悪からこっちの最悪に。
そうなる前に村でDB化しておけば誰のものかわからない土地を極力減らしていくことができて、移り住んでくる人を受け入れることが出来るようになります。
牧:西粟倉は山に関してはもうほぼ国土調査は終わっていて、総当たりに交渉して借りられるところは借りてます。村が小さいからできている面もありますが日本でトップレベルです。
藻谷:という事は人間がリスとかムササビみたいに木に住んでいればばっちりでしたね(笑)。でも、空き家はなかなかそこまでいっていないと。70分の2じゃあなあ。じゃんけんでも3分の1で勝てるのに・・・
牧:今は状況も変わってきていると思いますが・・・。
皆さんも気づいたと思いますが、空き家を住みたいという人に貸す事をしたらいいと思います。
藻谷:皆さん、群馬県上野村って知ってます?群馬県の一番上にあるんですが、そこに御巣鷹の峰というのがあるんです。昔将軍が鷹狩りに使う鷹を育てていた天領で、昔ジャンボジェット機が落ちたところです。
あの後どうなったか知ってますか?1300人しか住んでいないんですが、今年の関東大降雪で埋まったんです。もう少し下手に南牧村という日本一高齢化した村があるんですが、そこはじいちゃんばあちゃんばかりで雪に埋まって自衛隊が出動したと全国ニュースになりました。
普通の人ならその上流にある上野村はどうなったか気にするものですよ。上野村はもっと雪が降ったのに壊滅しなかった。なぜか?1300人のうち350人がIターンもしくはその子ども。若い人がたくさんいるので孤立しているじいちゃんばあちゃんの家まで人力で雪かきして孤立せずに済んだのでニュースにならなかったんです。
東京の近くでなんであんな寒いところに住むのか。寒くて雪も降るのにスキー場もないので雪で遊ぶこともできないという大変なところです。山奥なので田んぼもありません。
竹本:村長も元気な個性的な方ですよね
藻谷:個性的ですね。3人に1人が余所から来た人なので社会が崩壊すると普通は言われているんですが、上野村は珍しくバランスが崩れていないんです。
なぜかというと若い人が来て手伝ってくれるのが身に染みてありがたい。東京の近くなのでキツイ生活をするのが平気という特に変わった人間だけを集めることができるんです。隣の南牧村もそれを見ていて、真似をしようとするんだけどできない。なぜか?上野村は一番奥。どうせ行くなら一番奥という変な奴がいるんです。中途半端な奥はあまり人気が出ない。
竹本:達成感がない。
藻谷:達成感がないんですよ。わかります?この辺りで住むならどうせなら西粟倉に。そういう事です。西粟倉を褒めてるのわかります?どうせ岡山県に行くなら一番奥の西粟倉にという事です。ここは田んぼもあればいろんな産品がありますし。
竹本:林業もさっき言ったように土地の関係もありますが、上野村の村長にお会いした時うちはもう農業もできない、田んぼもない、林業しかないんじゃ!というので「何をされているんですか?」と聞いたらとにかくほだ木にして椎茸を採るんじゃと。それ、林業じゃなく林産物等ですよね?みたいな。でも、それは林業なんだ!とおっしゃってました。
藻谷:あとは自然エネルギーなんですね。ほだ木を燃やす自家発電が整っていたので雪に埋まって孤立しても生活できたんです。全く報道されてなかったんですけど。避難所に行くと木を燃やす自家発電があったので。やることはやっているんです。
西粟倉は褒めたけど、ここは便利です。特急に乗ればすぐに大阪に避難できる。変に都会人なので持っていれば土地も値上がりしそうと思うんです。いずれ誰かが欲しがるかもしれないと大阪風の計算をする人が明らかに多そうな気がします。
これまで智頭急が通る、373が開通する、高速が通るとあらぬ期待を抱え込んで売れもしない空き家を抱え込んだ人が多そうな気がします。
智頭町も面白いところなんだけれども、問題点は人が住む家だと思います。特に家が立派なので。西粟倉も家がきれいですが、智頭は豪邸みたいですね。最近では森の幼稚園がいいからとオーストラリアから引っ越した人がいるそうです。森の幼稚園に入るために地球を半周しながらその間になかったのかとも思いますが。
とにかく家を貸してくれないので進まないんです。皆さんも気づいたと思いますが、空き家を住みたいという人に貸す事をしたらいいと思います。西粟倉は林産関係で60〜70人の雇用が生まれています。さらに、都会よりこっちのほうがおしゃれねというカフェやパン屋がぽつぽつ出始めたところです。仕事は作っていけるはずと思いますので問題は家です。
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