"いい投資"探検日誌 from 新所沢

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マイクロファイナンス貧困削減ファンドの5年間を振り返る 〜マイクロファイナンスフォーラム2014参加レポート(1)

11月16日(日)に開催されたマイクロファイナンスフォーラム2014に参加してきました。NPO法人Living in Peaceが主催しているフォーラムで毎年参加して勉強するのを楽しみにしています。

今年は「収益性とソーシャルインパクトの両立に向けて」というテーマで開催されていましたが、これこそ今私が一番気になっている事でした。また、多くの方に興味を持ってもらい、参加してもらう為にも避けては通れないテーマです。フォーラムで話された内容について私のメモを元にシェアしたいと思います。

第一部 マイクロファイナンス貧困削減ファンドの5年間を振り返る
 NPO法人Living in Peace 代表 慎泰俊さん

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Living in Peaceの活動をはじめたきっかけ

Living in Peaceは「すべての人にチャンスを」をキーワードに活動をしています。
なぜこの活動を始めたかというと自分や周りに貧しい人が多かったからで、初めは人権弁護士になろうとしていました。そのうち世の中を変えるにはビジネスを学んだ方がいいのではと思い、金融を学ぶことにしました。モルガンスタンレーで投資の仕事をしながら仕事の中で必要なスキルを身につけましたが、これだけではないなと思っていました。

自分の宿命を乗り越えられる社会にしたいと思っていて、途上国にはマイクロファイナンスという仕事をする為のお金を融資する仕組みがあることを知ったことで自分の得意なことで支援するのがいいだろうという事になり、マイクロファイナンスに投資するファンドを作ろうしました。それからは休暇を途上国でのデューデリジェンスにまわしてこれまで1.8億円のお金が集まりました。そして、投資したお金が無事に返ってきたのは良いことでした。

これまでに3社12万人以上のクライアントに日本からのお金を提供しているます。また、顧客の12万人のほとんどが女性で、中には女性のための女性によるマイクロファイナンス機関もあります。マイクロファイナンス機関ではお金を貸すだけではなく観光地で働いている人や農家へのトレーニングや、女性向けミーティングでジェンダー教育も行われています。

マイクロファイナンス機関への投資を通じて見えてきた課題

しかし、一方でこれまでやってきた中での課題もあります。

  1. CEOが辞任して逮捕された
    他にも親会社のガバナンスの問題があってファンドを中止する事もあり、何度かトラブルはありました。
  2. 貧困削減効果の測定についてまだできていない
    世の中にマイクロファイナンス機関(MFI)へ投資するファンドは結構あり、ヨーロッパを中心に数千億円規模になっています。そこで、実際の所マイクロファイナンスに効果があるのか疑問を投げかけられているのです。投資したお金でどういうインパクトがあったのか知りたい人が増えています。

私たちは中小規模のMFIを相手にしていて、これまで投資した3社で20億円にも満たない規模です。小さな会社で貧困削減効果のレポートをきちんとするのは相手に面倒がられるという面もあります。5年前、日本で初めてマイクロファイナンスに投資するファンドを作りましたが、自分達でやっているのは今でも私たちくらいです。

補足:他のマイクロファイナンスファンドはMFIに投資する専門の運用会社を通じて投資する形で実現されています。デューデリジェンス、投資後のモニタリング、レポート作成まで自分達でやっているのはLIPのみです。(ファンドの募集についてLIPはミュージックセキュリティーズに委託しています)

そこに甘んじていないでもう少しやりたいと思っていてまだまだです。

PEファンドは投資先のMFIの株を買って経営介入しますが、彼らが自分達でサービスを作ることはしません。そこはあくまでも投資先のMFIが行っています。NPOがマイクロファイナンスに投資した場合、関与は消極的でローンに近い出資になります。このやり方の場合は貧困層への金融アクセス拡大へのインパクトしか生まれません。

私が今ほとんどカンボジアで過ごしていて、自分が働いている会社でお金を集めてMFIを作ろうとしています。そこでは新たに金融サービスを作ったり、お金を出すだけでなく更に深く関与しています。融資の審査書類をタブレット化することでモニタリングもリアルタイムに知ることができるようになりました。

 

これまでの活動から学んだこと

これまでの活動からの学びについて話します。
一つはガバナンスが効かないと私たちが投資したお金が回収ができなくなるという事です。ガバナンスの効いていない所と仕事をするのは非常に困難です。私たちはMFIに対して議決権も無い状態で貸出するのでうまくいかなくなるとどうしようもできなくなってしまいます。

他のケースでは投資元が議決権を過半数持っていたとしてもコントロールできないケースも見てきました。例えば外国人が70%、現地の人は30%の議決権であっても政治家のネットワーク使って外国人を追い出したり、裁判に持ち込んで追い出したりといった事もあるのです。

信頼関係があるとリスク削減はできますが、MFIに投資するにはガバナンスを分析するのが重要になります。私たちももうちょっと厳しくする必要がありそうだと思っていて、チェックリストだけでは内在的なメカニズムはわかりません。他に何らかの形で情報を取れるような体制をつくることが大切です。投資する側とされる側の情報の非対称性をどうなくすかに尽きていて、「隠し立てしていることを教えろ」と言ってもできないので信頼関係を築くのが大事になります。

また、インパクト測定を強化する必要があります。今の月次、四半期レポートでは出来ていませんが、これをやろうとするとコストが結構高くなります。MFI側にインパクトを測定するための仕組みを導入したり、英語ができる人が必要になったりするのでこれは現場から嫌がらます。

一方で投資家からの要請はありますので、調査時には綿密に評価するけれども融資した後は現場にあまり負担にならないところで役に立っているかを定量化して見せられるような方法を考えています。

 

感想:

日本初のマイクロファイナンスファンドとなったカンボジアONEからLIPのファンドに投資してレポートを読んだりファンドの説明会に足を運んでいますが、お金が足りていない中小規模のMFIにお金を届けたいがために難しい問題もあるんだなと改めて感じました。

今年募集していたスリランカのMFIへのファンドはガバナンスの問題からファンドは中止になり、結局現地でお金は生かされることなく返金されました。 比較的ガバナンスが緩い新興国に向けて投資をする、しかも中小規模のMFIへという難しさが表面化した出来事だったのですが、うまくお金を回収できた裏側には現地MFIで働く人との信頼関係があったからで、数字や表面のモニタリングだけでは測れない面が大きく影響したと思います。

まずは日本からMFIへお金を届けることができるようになったという第一段階を過ぎ、今後はいかに現地にとって役に立つお金を届けられるかを可視化していく事で裾野が広がっていくのでは無いかと思います。

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