11月16日(日)に開催されたマイクロファイナンスフォーラム2014のレポートを私のメモを元にまとめました。
第三部は実際にマイクロファイナンス機関や協同組合に投融資をしていて、収益性とパフォーマンスを両立させる取り組みを実施しているオイコクレジットの方の講演でした。中南米地域で実際にソーシャルパフォーマンスを上げる取り組みをされているLiannaさんの講演は英語でしたので配布資料を基に簡単にまとめます。
第三部 収益性とパフォーマンスを両立するための仕組み
オイコクレジット・ジャパン代表・日本福祉大学教授 岡本真理子さん
1997年にマイクロクレジットサミットが開催され、多くのマイクロクレジットが生まれた事により現在は玉石混合状態です。当時とは違うマイクロファイナンスが登場してきていますし、インドで自殺騒ぎがあって政府がマイクロファイナンスを弾圧するという事も起こりました。どのように見直していくかが問われています。
オイコクレジットは国際開発協同組合という組織で1975年に設立されました。この年はグラミンバンクやセワなども設立された年です。チャリティーではなく現地に必要とされているのは資金融資だったという事から融資で開発に社会的投資をしようと取り組んでいます。
世界中に組合員組織があり、一組織につき1票で運営されています。出資者は組合員組織の株を一口200ユーロもしくは200ドルで買う事になります。日本ではドルで出資していて、そのお金はMFIなどに投資されています。融資が基本ですが、成熟するのに時間がかかる場合にエクイティファイナンスもしています。
1990年頃は為替変動が大きかったので現地の銀行を通じて融資したこともありまが、大体1株あたり年利2.5%くらいです。過去20年で1回だけアジア金融危機の時は配当がありませんでした。
マイクロファイナンスはユヌスさんがノーベル賞を受賞した後一気に成長し、現在では世界の67か国に支援しています。その中でも最大の支援先はインド。ほとんどがマイクロファイナンスです。また、アジアだけでなくボリビアやパラグアイはといった中南米の協同組合も含まれています。
地域別では中南米、アジアの順番。アフリカはリスクが高いのですが、どんどん入っていっています。部門別ではマイクロファイナンスが多く、他には農業関係でのフェアトレードなどにも取り組んでいます。いずれにしても現地の組織をしっかり見極め、発掘しています。オイコクレジットはマイクロファイナンス機関の支援組織として世界最大級でフィリピンのCARDもNGO時代から支援しています。
私達の特徴は小規模なMFIへの投資が多く、社会事業報告書にも早くから取り組んでいます。また、農村に進出するMFIへの支援は重要な仕事です。MFIはどうしても利益をあげやすい都市に進出したがる傾向があるからです。他にも旧社会主義国の農業協同組合のようにマイクロファイナンスだけではカバーしきれない場合は協同組合への出資を通じた支援もしたことがあります。
社会的有益、不利益を管理することで利益のために社会性を犠牲にしない事に気を配っています。
オイコクレジット 中南米地域事務所 社会的業績・能力開発コーディネーター
Lianna Mora Vargasさん
オイコクレジットは実際に投資を行うマイクロファイナンス機関と協力して顧客にとってより良い金融サービスを提供するようにしています。重視している事は「適切なパートナーの選定」「顧客により良いサービスを提供するようステップアップのサポート」「積極的に介入してソーシャルパフォーマンスを向上させる」ことです。
デューデリジェンスは「財務分析」「社会性分析」「ガバナンス」「環境アセスメント」といった包括的なアプローチをしています。
社会性分析では23の基準からなるESGスコアカードを使い、マネージャーが現地へ訪問して調査します。「顧客のアウトリーチ」「顧客の総合的メリット」「ガバナンス」「環境」「コミュニティとスタッフに対する責任感」などを評価し、必要に応じてサポートを行います。
オイコクレジットではグラミン財団による貧困脱却指数(PPI)の積極的な実施を促しています。マイクロファイナンス機関の強みや向上の余地の認識を促すSPM指導プログラムも実施しています。
オイコクレジットでは2800万人の顧客数、うち女性が81%、農村部が47%、50%がジェンダーポリシーを記載、50%が環境ポリシーを記載しています。
オイコクレジットから支援を受けるパートナーがオイコクレジットのビジョンやミッションを共有している事が重要です。
感想:
世界中のマイクロファイナンス機関(MFI)へ投融資を行っているオイコクレジットの取り組みについて詳しく知ることができました。日本では金商法の関係で元本を上回る配当金は出資者へ戻すことができないのですが、自分の金銭的リターンを求めず純粋に貧困削減に向けて自分のお金を生かしたいと思う人にはいい仕組みだと思いました。
自分の場合、マイクロファイナンスに投資して儲けたいというわけではないので、こういう形でMFIや協同組合等にお金を投資する仕組みはいいなと思います。大和マイクロファイナンス・ファンドに投資していたお金の一部をこちらに振り向けようか検討しています。
MFIがしっかりと社会的成果を出すために、お金だけではないサポートを行っているというのがいいですね。パートナーを選定するときに使うというESGスコアカードも参考になりました。
ミュージックセキュリティーズが募集しているペルーのAbacoに投資するファンドもそうですが、こうした信頼できる機関を通じて幅広くお金を生かしてもらうのもいい仕組みだと思います。