4月7日(金)19:00より金融庁の会議室で一般投資家向けの積立NISA説明会が開催されました。3時間で30名の枠が埋まってしまう大人気ぶりでしたが、どんな内容だったのかレポートします。
参考資料:
- 有識者会議第二回 説明資料
- 「長期・積立・分散投資に資する投資信託に関するワーキング・グループ」報告書
- 「租税特別措置法施行令第二十五条の十三第十三項の規定に基づき内閣総理大臣が財務大臣と協議して定める要件等を定める件」について
積立NISA制度設立の背景
日本の家計金融資産の大半が現預金。各国と比較すると欧米では家計資産に占める株式等の割合が高い。なぜ日本の家計金融資産は伸びないのか?
家計資産の伸び率に対して金融資産のリターンがどれだけ貢献しているか調べてみると伸び率のほとんどが金融リターン。日本は株式の比率が少なくあまり増えていない。お金はあるが伸び率が遅い状態。
このような状況を改善したい。投資をすることで家計の金融資産が増えるのではないか。株式に投資することで企業の成長資金にもつながる。これが金融庁の目的。
有価証券や定期預金による資産形成をしていない世帯は1/3。これらの人は普通預金しかしていない。資産形成を諦めている人が多い。
現行NISAは半分は動いていない非稼働口座。その数500万口座。なぜ投資しないかアンケートをとったら少額投資を知らず、まとまったお金がないからという回答が多かった。また、積立で投資できることも知らなかった。まずは投資に興味があるのに一歩を踏み出せていないこの層の預金を動かしたい。
家計の資産形成の促進に向けた大きく3つの柱
- 顧客本位の業務運営の定着に向けた取り組み
金融機関の業務を顧客本位に戻したい。日米投信残高上位を見ると米はロングセラーで低コストな投信が並ぶ。日本の上位投信の顔ぶれを見ると顧客の利益ではなく金融機関の利益なんじゃないのという印象。
フィデューシャリー・デューティの確立。顧客本位の業務運営をどのように行うか金融機関には作って発表してもらうようにした。 - 実践的な投資教育の推進
投資教育も様々やられているが何が大事なのか。
定期預金で運用、株や債券で運用、グローバルで運用した場合にどのような差があるか。定期預金で運用しても資産は増えないがグローバル投資であれば過去実績だが年率4%で伸びていた。
長期投資の有効性についても100万円を投資して5年間保有していたらどうか。高値づかみした場合だと赤字だが利益が出るケースが多い。結果は72~173万円の間に。
20年間保有していた場合は185~321万。年率2〜8%に収斂していく。
長期投資に適した商品を積立で長期に保有する有効性を伝えていく。これが金融庁の考える「実践的な投資教育」 - 積立NISAの創設
長期投資に対して税制上の後押しをする。しかし、何に投資するかが重要。
対象商品は「長期」「積立」「分散」に資するものに限定した。
積立NISAの概要
現行NISA 年間120万円の非課税枠×5年間
積立NISA 年間40万円の非課税枠×20年間
長期分散という観点で非課税保有期間は20年間。現行NISAの4倍。現行NISAは平成35年まで。積立NISAは平成49年まで使える。
コンセプトはNISAと基本的に同じで、その年に使える非課税枠が120万円で5年間か40万円で20年間の違い。現行NISAと選択して適用が可能。毎年金融機関から現行NISAか積立NISAのどちらを使うのか確認されることになる。
毎月3万円程度投資する少額投資の人は積立NISAが便利ではないか。また、現行NISAから積立NISAにした後に再度現行NISAに戻ってくることもできる。年に1回選択することになり、何も言わないとそのまま翌年も継続されるが変更は可能な制度になっている。
現行NISAは好きな時に好きな商品を購入することができる制度だったが積立NISAは定期定額購入契約を結ぶことになる。どのファンドを毎月いくら購入するのか事前に決める必要がある。(ボーナス月の増額のような制度もあり)
積立NISAの対象となる投資信託について
・20年続かない投信は除外
・分配金は毎月でないこと
・ヘッジ目的を除いてデリバティブを使った投資をしない
・その他告示で定める要件を満たしていること
その他告示で定める要件として・・・
まず公募株式投信とETFに分けられる。
公募投資信託については指定インデックス投資信託と指定インデックス投資信託以外の投資信託(指定インデックスに漏れたインデックスファンドとアクティブファンド)が対象。
市場を広くカバーするインデックスが指定インデックス。指定インデックス以外については初心者が長期で積立投資するのには向かないので厳しめの要件とした。
ETFは指定インデックスに連動する株のETFに限定している。
指定インデックス投資信託について
単品で組成可能な株式インデックスと(バランスファンドなど)組み合わせでの組成可能なインデックスのの2種類ある。
要件:
- 告示において指定されたインデックスに連動していること
- 主たる投資の対象資産に株式を含むこと
- 販売手数料:ノーロード(解約手数料・口座管理手数料もゼロであること。信託財産留保額の有無については要件としない)
- 受益者ごとの信託報酬等の概算値が通知されること
- 金融庁へ届出がされること
- 国内資産を投資対象とするもの・・・信託報酬0.5%以下(税抜き)
- 海外資産を投資対象とするもの・・・信託報酬0.75%以下(税抜き)
MSCIコクサイのように指定インデックスから特定の一カ国を抜く、配当の有無など準じたものについては対象となる。
販売手数料0%だけでなく解約・口座管理手数料も0%。
信託報酬について受益者に概算値が通知されること。
積立NISA対応投信は事前に金融庁に届け出が必要。
指定インデックス投資信託以外について
指定インデックスから漏れたインデックスもこちらでカバーされる。(アクティブだけでない)世の中にテーマ型ファンドが多くあるが一過性の商品を除外したいという事でそのようなファンドは除外した。
要件:
- 純資産額が50億円以上
- 信託設定以降、5年以上経過
- 信託の計算期間のうち、資金流入超の回数が2/3以上であること
- 主たる投資の対象資産に株式を含むこと
- 販売手数料:ノーロード(解約手数料・口座管理手数料もゼロであること。信託財産留保額の有無については要件としない)
- 受益者ごとの信託報酬等の概算値が通知されること
- 金融庁へ届出がされること
- 国内資産を投資対象とするもの・・・信託報酬1%以下(税抜き)
- 海外資産を投資対象とするもの・・・信託報酬1.5%以下(税抜き)
ETF
最低取引単位が1000円以下で買い付けが可能なもの。これはるいとう的な取り扱いを想定している。販売手数料1.25%以下で口座管理手数料はゼロ。国内上場のETFについては流動性が確保されたものを取引所から指定されたものを対象とした。
海外ETFについては取引所が指定することもできないので資産残高1兆円以上とした
要件:
- 告示において指定されたインデックスに連動していること
- 主たる投資の対象資産に株式を含むこと
- 最低取引単位が1,000円以下
- 販売手数料:1.25%以下(口座管理手数料はゼロであること)
- 受益者ごとの信託報酬等の概算値が通知されること
- 金融庁へ届出がされること
- 国内取引所に上場しているもの
円滑な流通のための措置が講じられているとして取引所が指定するもの
信託報酬0.25%以下(税抜き) - 海外取引所に上場しているもの
資産残高が1兆円以上
信託報酬0.25%以下(税抜き)
信託報酬の高さとリターンの関係についてリターンのばらつきは信託報酬が高くなるとぶれが大きくなる。そこで、指定インデックス以外においてはぶれが大きくならない程度の信託報酬までとする条件をつけた。
4月に入って条件が厳しいという声もいただいているがアメリカを見てください。純資産額上位投信がほとんど選ばれることになることからもそんなに条件は厳しくないと思う。
年に一回信託報酬金額を伝えることについて。アンケートの結果、自分がどの程度信託報酬を支払っているかだいたい知ってるという人が半分くらいいた。
いくら負担しているか回答してもらうとわかってるつもりの人も想像以上にとられている事がわかった。積立NISAでは年間どれくらい負担しているかお知らせする制度とした。
積立NISAの対象とする指数一覧
各指数は配当を含めるか否かの別、為替ヘッジの別もしくは特定の一国を除外またはない方するか否かの別により、別個の指数を算出している場合における当該指数を含む。
1.単品でも組成可能
株式:日本
- TOPIX
- 日経225
- JPX日経400
- MSCI Japan Index
全世界:株式
- MSCI ACWI Index
- FTSE Global All Cap Index
先進国:株式
- FTSE Developed Index
- FTSE Develpped All Cap Index
- S&P 500
- CRSP U.S. Total Market Index
- MSCI World Index
- MSCI World IMI Index
新興国:株式
- MSCI Emerging Markets Index
- FTSE Emerging Index
- FTSE RAFI Emerging Index
2.組み合わせでのみ組成可能(株式指数は必須)
先進国:株式
- MSCI Europe Index
- FTSE Developed Europe All Cap Index
- Stoxx Europe 600
- MSCI Pacific Index
新興国:株式
- MSCI AC Asia pacific Index
日本:債券
- Nomura-BPI総合
- DBI総合
- NOMURA-BPI国債
- Barclays Japan Goverment Float Adjusted Bond Index
全世界:債券
- Citi-group World Govement Bond Index
- Barclays Capital Global Treasury
先進国:債券
- Bloomberg-Barclays Global Aggregate Index
- Barclays U.S. Goverment Float Adjuusted Bond Index
- Barclays Euro Goverment Float Adjuusted Bond Index
新興国:債券
- JP Morgan GBI EM Global Diversified
- JP Morgan Emerging Market Bond Index Plus
日本:不動産投信
- 東証REIT指数
先進国:不動産投信
- S&P先進国REIT指数
- S&P米国REIT指数
- S&P欧州REIT指数
- FTSE NAREIT エクイティREITインデックス
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