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"いい投資"探検日誌 from 新所沢

しあわせをふやす いいお金の使い方を考えています

分断して最適化することの問題点と処方箋 『米国はどこで道を誤ったか』ジョン・C・ボーグル

インデックスファンドで有名なバンガードを創業したジョン・C・ボーグルさんの本です。アメリカがなぜ道を誤ったのか、言い換えれば資本主義はどこで道を誤ったのかについて熱く、そして戦闘的に語られています。

米国はどこで道を誤ったか―資本主義の魂を取り戻すための戦い

米国はどこで道を誤ったか―資本主義の魂を取り戻すための戦い

  • 作者: ジョン・C.ボーグル,John C. Bogle,瑞穂のりこ
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2008/03
  • メディア: 単行本
  • 購入: 1人 クリック: 2回
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ボーグルさんはこの本の中でアメリカを3つの形で表現しています。

  1. 株式会社アメリカ
  2. 投資社会アメリカ
  3. ミューチュアルファンドアメリカ

この3つのアメリカはそれぞれで問題を起こしてしまっています。

  • 会社が経営者の利益のために経営されることで株主であるオーナーが被害を被っている(株式会社アメリカの問題点)
  • 株主が個人から金融機関という代行機関に変わったことによりオーナーとしての権利を行使しなくなり、株式を所有する時代から株式を借りる時代に変わった(投資会社アメリカの問題点)
  • 依頼人に尽くす管理者からセールスマンに変貌した金融機関が本来投資家が受け取る利益の大部分を取っている(ミューチュアルファンドアメリカの問題点)

中でも今回注目したいのは投資会社アメリカというファンド(機関投資家)にまつわる問題です。

ファンドはとてもいい仕組みではりますが、株価が上がることにしか興味を持たない間接的な株主を大量に生み出しました。経営に興味を持たないファンドを通じた間接的な株主の大量発生は経営陣を監督するというオーナーとしての役割をも放棄するようになります。

間接的な株主の代行者である機関投資家がしっかり株主としての権利も代行すればよいのですが、この会社で利益が出そうにないなら売ってしまって儲かりそうな別の会社の株を買えばいいと考える人達に投資先の会社でオーナーのように振る舞えというのは(悲しいことに)現実的に無理な話です。

企業が四半期決算を発表するようになったことで機関投資家もますます近視眼的になり、株式を引き続き持っていた場合にどうなるかという長期的な目線で見ることができなくなりました。すぐに株式を売ってしまうかもしれない機関投資家と投資先の会社の間で信頼関係が生まれるはずもなく、経営陣はオーナーである株主(とりあえず目の前にいる機関投資家)をも軽んじるようになります。

結果的に経営者はやりたい放題で自分達の給与やボーナスをふんだんに受け取るようになり、出来るだけ沢山ボーナスをもらえるように短期目線での成長を目指すようになりました。(時には利益が出ているように見せかけることまでしちゃいました)

こうした行き過ぎた資本主義への反省が規律のある経営者、投資家およびその代理人を求めるようになり、企業が長期的に本来価値を向上させるような行動をすることを投資家としても求める必要が出てきました。企業が長期的に本来価値を向上させるような要素の中にESG(環境・社会・ガバナンス)も含まれています。

ボーグルさんが3つの問題点にそれぞれ処方箋を書いていますが、かつて自分がいたバンガードからさえも拒否されるような荒療治が提示されています。金融機関が本来投資家が受け取る利益の大部分を取ってしまっているという話ではいつものボーグル節が全開ですが、企業経営者や機関投資家に対しても同じように戦闘的な解決策が提案されていて企業統治に関する分野についての見識も素晴らしい人でした。適正なコストが投資家の利益に通じるという信念だけの方ではなかったんですね。

近代化の中で様々なものが分業という名前の下に分断されました。様々なことを分担することで生産性が向上し、豊かな社会が生まれましたが、一方でそれぞれの分野で最適化が図られた結果、全体で見たときにいびつな形になってしまいました。

歪んだ身体をバランスの取れた形に戻す整体のような役割がESGであり、スチュワードシップであり、フィデューシャリー・デューティーです。でも、やっぱりそこでもそれぞれの仕組みで最適化を図ろうとするとおかしくなっちゃいます。

「木を見て森を見ず」という諺があります。運用は最善の効率で行えばよいというだけではいけないと私は考えています。

ウォーレン・バフェットの言葉と同じように読んでいて背筋の伸びる本です。