スパークス・アセット・マネジメントさんに勉強会の見学をさせていただいた後、水田さんから『Patient Capital Outperformance』という論文の内容について説明をお聞きしました。
スパークスさんがリリースしているまいこばなしでも昨年の12月に取り上げられています。
良いアクティブ運用とは?ー対ベンチマーク運用の衰退とハイリーアクティブ運用の再起ー
アクティブ運用とパッシブ運用を比較する際、2009年頃まではアクティブの平均とパッシブの平均を比較していました。こうするとアクティブの平均はコスト分くらいパッシブの平均に負けることがわかっています。
ただ、これは本当にアクティブ運用とパッシブ運用を正しく比較しているのでしょうか?
Cremersさんが2009年に書いた論文によるとアクティブ運用は純粋なアクティブ運用と隠れパッシブ運用に分けることが出来て、純粋なアクティブ運用の平均ではパッシブ運用の平均以上の成績を残していることがわかったそうです。
こうなると隠れパッシブって何よ?って話になると思いますが、Cremersさんはポートフォリオの各銘柄の保有ウエイトとベンチマークウエイトの差の絶対値を合計して2倍したアクティブシェアという値で分類しています。
アクティブシェア0%のポートフォリオはまんまベンチマーク通りのポートフォリオで、アクティブシェアが100%のポートフォリオはベンチマークと重複が全くない事を表します。
Cremersさんはアクティブシェア80%のことをハイリーアクティブと呼んでいてアクティブシェアが高いことがアクティブ運用の最低条件だと言っています。
ひふみ投信を運用するレオス・キャピタルワークスの藤野さんも日本株アクティブの多くは隠れインデックスファンドだと話しています。アクティブシェアの高いアクティブファンドだからといって必ず好成績というわけではありませんが、ベンチマークとは違った値動きをするためには高いアクティブシェアが必要です。
アクティブシェアを高くするためには、ベンチマークとそもそも異なる銘柄を組み入れる(例えば中小型株を積極的に組み入れる)、少数銘柄に集中投資するなどの方法があります。
また、Cremersさんは2016年の論文でハイリーアクティブ且つポートフォリオの各銘柄の保有期間時価加重平均が2年を超えるファンドが優秀なファンドの条件としています。
こうして考えると企業の実質的な価値の成長に腰を据えて投資しているファンドを選ぶ事でコスト分だけパッシブ運用に負けてしまう隠れパッシブなアクティブファンドもどきを避けることが出来そうです。(成績が良いかどうかはわかりませんが)
私もスパークスのスチュワードシップ・ファンドに投資している他、セゾン資産形成の達人ファンドを通じてスパークスのファンドに投資しています。セゾン資産形成の達人ファンドの組入ファンドを見ているとしっかりと隠れパッシブを避けてちゃんとしたアクティブファンドを選んでいるようです。
隠れパッシブかどうかを見分ける簡易的な方法としてはポートフォリオの上位10銘柄がベンチマークの上位10銘柄とどのくらい重複しているか、腰を据えた投資をしているかは運用報告書のポートフォリオ中の全銘柄を2年前と比較してみることでざっと調べる事が出来ると聞きました。
また、機関投資家がアクティブ運用を委託する際にもアクティブ・シェアが基準値以上であることを求められるそうです。であれば、個人向けのファンドでもアクティブ・シェアを販売用資料などで開示してくれるようになるといいですね。
良いアクティブファンド探しの第一歩は隠れパッシブ運用を除外すること。ここからスタートするのが良さそうです。