10月12日に「投資信託をもうちょっと身近に感じてみよう」勉強会の3回目が開催されました。今回のお題は「これだけは自分で考えたいインデックスファンドとの付き合い方」。過去2回はアクティブファンドの投資哲学などでしたが、今回はインデックスファンドにスポットが当たりました。
講師はファンド・コンサルティング・パートナーズ(有限会社エフ・シー・ビー)の房前督明さんです。rennyさんと房前さんのトークセッションのような感じで勉強会は進行しました。
インデックスファンドはコストだけ見ればよいのか?
インデックスファンドで重要視されるのはコスト。投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Yearでもコストの低いインデックスファンドが高く評価されています。
例えばニッセイアセットマネジメントは「インデックスファンドは徹底的にコストにこだわらないとダメなんです!」と訴えています。
そのニッセイアセットマネジメントでは大和証券投資信託委託からリリースされたiFreeシリーズに最低コストを更新された事への対抗として「購入・換金手数料なし」シリーズのコスト引き下げが計画されているそうです。
日経の記事からの引用です。
ニッセイアセットが今回DC用に提供した日本株投信の信託報酬は「購入・換金手数料なし」シリーズを下回っている。大和への対抗上、DC向けの次は「購入・換金シリーズ」も引き下げてくるのではと臆測が広がった。
結果的にこれは正しそうだ。複数の投信販売会社の幹部は「ニッセイアセットは近く、購入・換金手数料なしシリーズの投信8本全部を、同じ資産クラスのiFreeをよりに引き下げると聞いている」と口をそろえる。
数年前までは本当の低コストはETF。でも、積立などの使い勝手を考えるとインデックスファンドという感じでしたが最近ではETFにも肉薄するコスト水準になってきています。このような中、肉薄するコスト水準の超低コストインデックスファンドの中からどれに投資するのか選ぶ際の注目ポイントはどこなのでしょうか?
房前さんは「投資信託は資産管理という点で着目する事が必要。投資している中身についても考える必要がある。」と話していました。
信託報酬の適正水準は?
昨今、信託報酬が低くなる傾向がありますが、セゾン投信のような独立系運用会社では数少ないファンドで運営しているため経営的な観点からファンド単体での損益を考えた信託報酬が設定されています。
一方で大手運用会社では会社全体で数多くのファンドが設定されていて、他のファンドで稼いだ分を使って戦略的に低コストな投資信託を出しているところもあります。
この事についてどのくらいが適正な水準なのか一概には言えないものの、一般的にはファンド個別の損益について運用会社では考えられておらず、シリーズ全体であったり、会社全体、更に言うと金融グループ全体として運用会社の利益について見られることもあるそうです。
これはアクティブファンドについても同様で、販売会社のニーズにあった商品設定がされるという運用会社の性質がなせるものなのかもしれません。
マザーファンド、ベビーファンドの資産規模について
新しいインデックスファンドが設定された際、注目されるのがマザーファンドの規模です。マザーファンドがある程度の規模でないと運用の精度に難があったり、繰り上げ償還されやすいという面があります。
実際に投資することになるベビーファンドのサイズについては償還条項として一般的に目論見書に記載されている30億円(口)程度が目安ですが、償還するためのハードルが昔より上がっているのであまり気にしなくてもよさそうです。
インデックスファンドの品質はどこで見る?
インデックスファンドの品質についてもrennyさんと房前さんの間で深くツッコミが入りました。
rennyさんから月次レポートは月末、運用報告書は決算日時点をベースにベンチマークと比較されていて、言い方は悪いが月中に追随出来ていなくても月末や決算日に帳尻が合えばトラッキングエラーは小さく見える。日次で比較したりしていないのか?という質問がありました。
これに対しては運用会社や機関投資家も月次や決算日ベースで比較をしており、日次ベースで比較をしないのが一般的という事でした。
ただ、基準価額とベンチマークのグラフを見てどれだけくっついているかは注目していて、両者にスキマがあると品質面で気になると話していました。
実際には外国株は基準価額を算出する日とベンチマークが基準としている日に差があり、その間の為替の影響をどうしても受けてしまうので細かいところで差は出るものだそうです。(例えばセゾン投信のファンドは基準価額の算出が2日、MCSIコクサイに投資するファンドでは1日)
また、グラフについては分配金再投資基準価額、基準価額、ベンチマークという3本の線で構成されることが多くありますが、実際の場合は分配金が出た時に利益が出ていれば課税されることから非現実的な値だとして、特に毎月分配型のファンドにおいてはミスリードを誘うのではないかと話していました。
数字面では1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、3年といった単位でベンチマークとの差を確認しましょうという事です。
どの指数に投資する?
例えば日本株であればTOPIXや日経225、JPX400など様々な指数があります。
昔は日経225に投資するのが機関投資家の間でも一般的でしたが現在であれば幅広く分散投資されるTOPIXがいいだろうという事でした。
JPX400がTOPIXとほぼ変わらない値動きをしている事について元々TOPIXに似た値動きをする性質を持った指数だったという事で想定内ということでした。
また、インデックス使用料は年々値上がり傾向にありますが、一般的にインデックス使用料を個別のファンド決算につけることはなく、会社負担という形で運用会社が受け取った全てにファンドからの収入から支払われるそうです。
バンガードがMSCIから別の指数にベンチマークを変える傾向にあるのもコスト面とベンチマークの投資対象がどれだけ市場を細かく表しているか評価した結果です。
ファンドの信託報酬はどうやって決まっている?
ファンドの信託報酬の決め方についてアクティブファンドの調査コストと言っても会社訪問の費用はそれほど高くないだろうし、アナリストやファンドマネージャーなどの人件費についてはインデックスファンドもアクティブファンドもそれほど差はなさそう。ファンドの信託報酬は投資対象や運用にかかる費用などの積み上げで決めているのかという参加者からの質問がありました。
実際には信託報酬が様々な要素の積み上げ式で決まっているケースは少なく、最近になってフィデューシャリー・デューティーの流れの中でファンド毎の信託報酬の合理的な水準について考えられるようになったという事でした。
昔は監督官庁から信託報酬水準について指導があったため各社横並びだったのが銀行窓販が解禁されたことで系列販売会社を持たない外資系運用会社が参入。
外圧によって信託報酬の自由化がなされた結果、信託報酬が上がる傾向になりました。
最近では信託報酬の高いファンドと低いファンドの二極化が進んでいます。
資金の流出入について
資金の流出はインデックスファンドにおいても良くない影響があると話していました。
解約時にファンドに残すことになる信託財産留保額が設定されていないノーロードファンドは市場が暴落した際に一気に資金が流入し、リバウンド局面で解約が集中するなど一部トレーダーの低コストトレーディングのツールとしても使われていると思われる事象が見られます。
ボラティリティの大きな局面で大量の売り買いをするのは流動性の面からベンチマークとの乖離が起こりやすく、ファンドの品質という面ではあまり望ましくないそうです。
通常、ファンドの基準価額は(配当込みの)ベンチマークから信託報酬分マイナスになるものですが、信託財産留保額がかかるファンドの場合は投資家が激しく売買した場合に信託財産留保額が基準価額を上振れさせる要因にもなるそうです。
安定的に資金が入っているファンドの方が良いのではないかという事でした。