75皿目から "ESG投資" のテーマが続いています。
- 投資リターン向上に自利利他が必要/本日のスープ75皿目
- 上場審査にESGを!/本日のスープ76皿目
- 企業の成長を後押しするESG/本日のスープ77皿目
- ESG投資がその普及と引き換えに失うもの/本日のスープ78皿目
もう少し続けさせてください。
前回、まろさんが「ESGインデックス(株価指数)」について、こんな指摘をされています。
ESG投資も指数作成みたいな方向に行ってしまうと、たんなる投資リターン向上のための道具として従来の投資に取り込まれてしまうのでは?
私も同じことを感じてしまいます。
今「ESGインデックス」なるものが出来たとします。となると、それに採用された会社を一まとめにした「株価」の動きが逐一記録されていくわけです。この一まとめにした時点で個々の会社には「ESGインデックス 採用銘柄」というラベルがつきます。その時点で個々の会社がESGの面で評価された個性が逆に薄まってしまうのではないか、見えなく(見ないように)なってしまうのではないか、個性を埋没させることになるのではないか、と感じるのです。「ESGインデックス」に連動するETFやら、インデックスファンドやらの組成が視野に入っているような印象を持ちますので、「ESGインデックス」に採用される会社は大企業(大型株)が中心になることでしょう。これも個性を埋没させることに拍車をかけそうです。
つまり、この「ESGインデックス」、それに連動するETFやらインデックスファンドやらをポートフォリオに組み込むことを、「ESG投資」のメインストリームにしてしまうことがとても残念に思われるのです。というか、何とかして避けられないものか、と考えています。というのも、企業の持続的な成長に寄り添う、関係していく「投資」の在り方として、「ESG投資」は、個人投資家のすそ野を広げるという点で、非常に大きな可能性を秘めているように感じられるからです。
ここ数年、注目が高まっているROE、これは財務的な結果、そして、株主目線での指標です。一方、ESGには財務的な結果は基本的に関係ありませんし、株主だけではなく社会全体から見た指標です。
ESGの観点で高く評価される、改善し続ける会社が、持続的に業績を伸ばし市場からの評価をそれに合わせて向上できているか否か、より多くの研究、調査が必要だと思いますが、ESG投資は長期的に見れば報われる(=良好な投資リターンをもたらす)ものと想像しています。
もう一つ重要だと考えるのは、ESG投資は個々の会社の個性を見極めること、見守ることが大前提だということです。そこにESG投資の本質が在るのです。
「株式投資=マネーゲーム」、「株式投資=ギャンブル」という偏見を持っている人たちに対して、ESG投資は、全く違う価値観、考え方の枠組みを提示することができるのではないか、と思います。個々の会社の個性を埋没させてしまう「ESGインデックス」ではなく、その個性を独自のESGな物差しで評価しポートフォリオをつくってくれるアクティブマネジャーがドンドンと登場するのを後押しすることこそが大事だと私は考えます。
「ESGインデックス」を否定するわけではありません。でも、これが「ESG投資」のメインストリームになることは大反対です。仮にそんなことになったら、それは業界、いや、社会全体の怠慢とさえ言えるのではないでしょうか。
【バックナンバー】
- ESG投資がその普及と引き換えに失うもの/本日のスープ78皿目
- 企業の成長を後押しするESG/本日のスープ77皿目
- 上場審査にESGを!/本日のスープ76皿目
- 投資リターン向上に自利利他が必要/本日のスープ75皿目
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