9月11日(金)にIKEUCHI ORGANIC TOKYO STOREで開催されたトークイベントのレポートです。今回は今治からタオル職人の川本さんもスピーカーとして参加し、実際にタオルを織っている人から見た難しさについても知ることが出来ました。
トークイベント「池内が語るタオルの個性」
日時:2015年9月11日(金) 19:00-20:30
場所:IKEUCHI ORGANIC TOKYO STORE
川本:
タオル・ニットの主任の川本です。入社7年目で愛媛にUターンしてきました。
池内:
彼が定年を迎えるころ、日本の定年は70歳になっているだろうからIKEUCHI ORGANICの100周年は彼で迎えることになると思います。その頃には責任を持ってモノを作っているでしょう。今は研修中ですが編みについても担当しています。
池内タオルは織りの会社でしたがIKEUCHI ORGANICに変わって編みも始めました。ここ2年くらい編みをやりつつ、織りもやっています。
Q.オーガニック120の一番の特徴・魅力はなんでしょうか?
池内:
1999年ファクトリーブランド第一号としてオーガニック1が生まれました。16年間同じモノを作り続けているイケウチの基本中の基本です。
当時東京で売ることは全く想定していなくて、私もしまなみ海道が開通した記念の今治市のおみやげとして自社ブランドを作る旗振りの一人でした。過去にグリーンというオーガニックコットンを使った商品を販売していたこともあったのですが思うところがあって止めていたので8年ぶりに再発売するオーガニックコットン製品でした。
日本で使うには一番使いやすいだろうと思っていて全ての風合いはオーガニック120がベースになっています。社内には当時のものは残っていませんがコットンはペルー産です。その後インドになり現在はタンザニアのコットンを使っています。
昔の120より今の方が遙かにいいと言い続けていますが実物を見るチャンスが無かったのですが福岡ストアの前夜祭に来てくださった九州の方が10年前に買ったオーガニック120を持ってきてくれました。
「状態いいですね〜」「いいでしょ」という会話の後、「新品と変えてよ」とお願いしましたが必要なときは貸すのでと断られました。織ってる側からするとこんなもの織れないよというようなタオルです。
川本:
オーガニック120は基本ですが、少しずつ調整しています。糸の状態によって織りやすさが変ってしまうからです。
池内:
調子良い時と悪い時でどのくらい違うの?
川本:
温度や湿度によりますが1日に10回停止していたのが30〜40回停止する事もあります。そのあたりの技術を習得するのが難しいのと面白くなってきたところです。
池内:
パイルが5000本あって、そのうち1本が調子悪いと織れないんです。オーガニックは安定度が芳しくないので少し不安定な糸があるとそうなります。
Q.タオルをつくる工程を説明してもらえますか?
池内:
パイルと横糸は20単糸で経糸が40双糸です。糸に機械が要求する強度が違うので糊をかけるのですが、織れるようにするのが君たちの仕事だろうとうちでは食用澱粉しか使っていません。うちは風合い優先で生産性は次です。
そういう面では工場は大変だと思います。生産性だけ考える人がくると糊を変えればという話になるでしょう。
その後、糸をビームに巻き付けて織機で織ります。織りあがったタオルはインターワークスで染めるのですが、その状態ではまだタオルは4枚横に並んだままです。染めて乾燥させた後、4列くっついたままのタオルを1列ずつ切って、最後に鋏で縦方向に切ることで1枚のタオルになります。そうしないと皆さんの手元に届いてから寸法がずれてしまうんです。鋏を入れるのは一番最後です。
再び工場に戻ってきて一枚ずつ検品をします。検品担当者にとってユーザーから返ってくるのが一番怖いことです。社長としてはB品の山を見てこのくらい通してよと思うこともあるのですが、どうしても通してくれません。そこで、織る方はどうなってるんだ?と循環するわけです(笑)。
Q.化学糊と食用澱粉で洗った後の風合いは違うのでしょうか?
池内:
変らないはずですが、僕が触ると明らかに変わっているのを感じます。100kgのタオルに対して1500リットルの水を使いますが化学糊は70度で溶けるので排水する時ちょっと残ってしまうんです。そうした付着するのが気になるので澱粉を使っています。澱粉であれば水溶性で落ちるからです。
Q.織る工程で特に難しいところはどこですか?
川本:
全体的にまだまだ難しいんですが糸の調子をどこでとるのかです。悪いところでとるのか、それとも良いところなのか。そこを教えてもらっている最中です。
池内:
織りやすい組織と織りにくい組織があります。最終形をイメージすると織りにくくても織ってもらう事があります。自分達の要望では設計を変えてくれないというのはあると思います。工場からするとそれはないよをいうのを僕らは要求するから。
Q.織りにくいのはどのタオルですか?
川本:
オーガニックエアーが一番織りにくいですね。
池内:
皆さんが欲しいのは難しいという事です。
Q.絶好調のときのスピードはどのくらいですか?
川本:
織機のスピードがあるので基本的にスピード自体は変わりません
池内:
設計によって打ち込み密度が違います。社長的にはこの織機だと12万ピック織れないといけないのに10万ピックだったとかそういう事で見ています。製品になるのはだいたい60%くらいから90%までありますが、安定して悪いのがエアーです。
あれはタオルにしてはいけない細さの糸(通常の1/3)をタオルにしているので織りにくいと思います。
Q.オーガニックエアーを作るうえで苦労した点、それでも作りたかった魅力とはなんでしょうか?
池内:
初期段階は2003年頃の設計が残っています。発売は2014年春なので11年くらい織れなくて考えていたタオルです。コンセプトは持って行って恥ずかしくない温泉タオル。
1枚で身体を洗えて人に見せて恥ずかしくないタオル。
重さは70g近辺以下でないといけなという事でストレイツ2をベースにつくろうとすると幅30cm。そうすると長さは85cmが限界でした。HPで温泉タオル1が出来たのでモニターしてくださいとモニターを募集しましたが幅30cmは男が絶対嫌だと言っていました。
男性は長さも最低95cmないと嫌といい、女性はそこまでいらないと言っていましたが結局男性の要望をクリアできなかったのです。理論値ではこの糸がないと無理でした。
温泉タオル3まで試作して棚上げのままだったのをひょうんなことで思いついて、これだったら織れるよねと。・・・織りにくいと言ってますが。
バスタオルでも170gという軽いタオルを作りました。私は出張で年間の1/3をホテルにいますが泊まる度にタオルが気になっていました。ストレスになるので持って行くタオルを決めればいいと考えました。これなら出張にも持って行けますし、温泉に行っても絞れば朝には乾いています。
エアーはどこが織りにくいの?
川本:
糸がデリケート過ぎるんです。下糸に手を突っ込んで直すと突っ込んだ所が弱くなってテンションが取れなくなるという事を延々と繰り返されるんです。遠くからできるだけ手をつっこまなくてもいいように気を付けながら織っています。
池内:
縫製する人達にもこんな薄いのを縫えないと言われたりしました。でも、みなさんにはご支持いただいているんですよね。東京ストアで一番売れてるのはどれ?
國行:
夏場はエアーが多いですね。普段はコットンヌーボーや120が人気です。
エアーと真逆の732で双糸が始まりましたが重厚感のある商品をどうしてつくったのでしょうか。また、魅力はなんですか?
池内:
ヘビーデューティなものを作ろうとしました。プロ用途でホテルでどう使っても耐えられるというコンセプトでどんなに扱ってもびくともしません。
9/18(金)に京都センチュリーホテルの部屋数の40%で732をそのまま使います。来年には残りの60%を変えて全館でそのまま使われることになります。イケウチのタオルを使っているところは少ないですが、ここは全部IKEUCHI ORGANICのままです。
これまでは高い値段のホテルが扱ってくださっていましたが、ようやくうちでも経理がハンコを押してくれる価格帯のホテルで全てオーガニックにという動きが出てきました。
これを買う人多いよね。
國行:
男性には人気ですねプレゼントでもらった人が自分用に買いに来る事が多いようです。
女性でも慣れるとそんなに重くないと思います。
池内:
京都店の店長も732を使ってると言ってました
國行:
私も732を使ってます。
池内:
これは織りやすいよな?
川本:
これは織りやすいですね。
池内:
双糸(2本の糸を撚り合わせた糸)の方が織りやすいです。2本の方が安定します。
國行:
一番織りやすいのは732ですか?
池内:
プレミアムコンパクト?
川本:
732の方が比較的織りやすいです。強めに調整してもいってくれるので。
國行:
川本さんにとっては優秀だという事ですか?
池内:
優秀というか(織るのに)楽ちんなタオルですね。
(後編に続く)
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