いい投資探検日誌(from 八女)

しあわせをふやす いいお金の使い方を考えています。サステナブル投資家。2017年に新所沢から八女に移住しました。週末は一口馬主を楽しんでます。

エコトワザ 大塚玲奈×IKEUCHI ORGANIC 池内計司 トークイベントに行ってきました

IKEUCHI ORGANIC TOKYO STOREで開催された対談イベント「エコトワザ 大塚玲奈×IKEUCHI ORGANIC 池内計司」に行ってきました。

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 日時 2015年5月21日(木) 19:00〜20:30
 場所 IKEUCHI ORGANIC TOKYO STORE
 定員 20名
 講師 大塚玲奈さん(株式会社エコトワザ代表取締役)
    池内計司さん(IKEUCHI ORGANIC株式会社代表取締役)

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エコトワザの大塚さんは2012年に開催されたikt2013 Previewイベントでちょっとだけお話を聞いたことがありましたが、日本中からこだわりの品を厳選して送っているという大塚さんとの対談でどんな話が飛び出すのか楽しみにしていました。

エコトワザの大塚さんによるブログ記事です

事業承継についてなどちょっと聞きにくい内容まで突っ込んでいただきとても良かったです。ミシン糸までオーガニックにするというヘンタイぶりにさすがだな・・・と思っていたのですが、口にしても安全な商品を作っているのだから食品安全のISOを取得する(食品をつくるわけでもないのに!)というのには驚きました。NYの展示会で30年後には赤ちゃんが口にしてもではなく、食べても安全なタオルを作ると話したと聞きましたが、ジョークではなく本当に実現してそうです。(と、ハードルを上げてみました)

大塚:

子ども時代をアメリカで過ごしてリクルートで働いた後、エコトワザを起業しました。日本全国から集めた家族と地球に優しいものを「食」を中心に毎月宅配するサービスをしています。池内さんとの出会いは10年くらい前に環境に優しい会社にインタビューしていた中でインタビューをさせていただきました

今日は池内社長が質問に答える対談という事でしたので、私がIKEUCHI ORGANICに持っている謎10選に答えていただきます。

Q. ショップの制服は社長の趣味ですか?

池内:

僕の趣味ではありません。池内タオルは男性のお客さんが多く、粗野なデザインすぎるのかなと思い、ナガオカケンメイさんに新しい池内タオルをデザインしてもらいました。

ショップはアップルのジーニアスバーをイメージしてラボっぽくしているので制服が研究着になりました。残念ながらこの制服はオーガニックではありません。こういう研究着をオーガニックで作っているところはないのです。そのうち自分達で作っているかもしれませんが・・・

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IKEUCHI ORGANICのショップでは研究着が制服です。

工場の制服はあまりにもダメ出しが続いたので糸を仕入れているリーメイに特注しました。社員全員のサイズを満たそうとすると6つのサイズになるのですが、そんなに社員が多いわけでもないのでそれぞれ最小ロットで発注しても余ります。そこで少しお店で売っています。

IKEUCHIマニアなら思わず欲しくなる本社工場の夏の制服(ブラックポロシャツ)。もちろん私も持っていてこのイベントには着ていきました。

このポロシャツはリーメイのサイトからどの畑で取れた綿がどうなったのかトレースすることができます。コットンヌーボーもトレースできるようにしたいと思っています。

リーメイとは2011年にコットンヌーボーで使うタンザニアの糸が出会いでした。今ではIKEUCHIで使用している綿糸の99%くらいがリーメイですが、もともと使っていたわけではありません。
最初にオーガニックコットンを扱い始めた時はペルーの綿、その後アメリカ、インドと変わっていき、ある時期からインドの綿はすべてリーメイの綿になっていました。リーメイ以上の品質のオーガニックコットンは無いんじゃないかと思っています。

大塚:
エコトワザでリーメイのパトリックさんにもインタビューしたことがあります。
インドでコットンを作っている農家が苦しんでいるのを見て、村中にオーガニックにしようと呼びかけ、作り手と使い手が歩み寄るコミュニティを作りました。

池内:
パトリックさんは日本でいう青年海外協力隊のようなもので国際協力活動をしたあと、綿糸を売る会社で働きました。そこで農家が苦しむ姿を見て自分で行う事にしたのです。タンザニアでのスタッフは全員タンザニア人、インドでもスタッフは全員インド人で出来るだけ地元に雇用を生み出すようにしています。

Q.ミシン糸もオーガニックになると聞きましたが、もうなっているのでしょうか?

池内:

ミシン糸をオーガニックにするのは難しく、5月にはコットンヌーボーをミシン糸もオーガニックなバージョンに切り替えたいと話していましたが現時点ではオーガニックにはなっていません。オーガニックミシン糸のバージョンは生産中ですが、いつから店頭に並ぶかは特にアナウンスはしません。

オーガニックコットンで製品づくりしているところでもミシン糸までオーガニックにしているところはないのではないでしょうか?IKEUCHI仕様で糸をつくっているので今後カラーバリエーションも増やしていきます。オーガニックなミシン糸は難しいので全ての製品がそうなるまで10年くらいはかかるのではないでしょうか。

Q.どうして社名を変えたのですか?

池内:
創業61年目に入った時、一年かけて次の60年の方針を決めようとしました。
理屈っぽい 長々と説明が必要なタオルでしたが、この思いを次の世代に伝えるための年にしたのです。これをどうやってわかりやすくするかについてデザイナーとコンセプトを作りました。そうして8月にはリデザインすることにしたのです。

iktは生まれてから最初の5年はバイリンガルで日本より海外で評価されていました。幼稚園に入る頃になると父親が事業に失敗したため苦労することになりましたが、15年目を迎えて父親としては優秀なハイスクールに入れたいと考えました。

そこでナガオカケンメイさんに既に決まっているコンセプトをわかりやすく伝える事をお願いしたのです。ナガオカケンメイさんは自分のショップ以外のデザインをしなくなって10年たっていましたし、「なんで僕なの?」と言われましたが直接会って想いを伝えることで受けてもらいました。

これがイケウチのオーガニックだとブランドをIKEUCHI ORGANICに変える事になり、どうせだったら社名も変えてしまう事にしました。

大塚:
イケティーも(海外ではikt(アイケーティ)と発音できないので使われていた呼び名)良かったんですけどね。

池内:
社名を変えてみてどうですか?

大塚:
社名を書くときに半角にしないと!って思うようになりました。

池内:
リブランド前はiktの92%がオーガニックでした。ストレイツ1はiktを有名にしてくれた商品でしたがオーガニックでなかったのです。そこでストレイツの新バージョンをオーガニックで作り、完全オーガニックにしました。また、タオルを社名から外すことで他の製品もやっていくよというのを明確にしました。

Q.ニットはなぜ始めたのですか?

池内:
アメリカと日本ではお客さんが違います。アメリカはシーツ屋さんの一部がタオルを作っているので展示会では池内はいつになったらシーツを持ってくるの?と言われ続けていました。

日本では赤ちゃんが口に入れても大丈夫という点を評価されましたが、タオルは大丈夫なのに服はだめなの?とお母さんを心配させる種にもなっていました。そこでベビー用品を作りました。

大塚:
うちも二人の子どもが池内さんのタオルを使っています。サイズが大きいので半分に折るとちょうどブランケットになるんですよね。ニットは伸びるのですぐに成長する子供にもうまくフィットしてくれるのがいいですね。

池内:
伸びるニットと言いましたが、赤ちゃんにとってストレスになる縫い目は絶対入れないことにこだわりました。ミシン糸があるとそこで伸びが止まるのです。IKEUCHIのニットは縫い目がないのでしっかりと伸びます。

 *今年の2月に開催されたベットリネンとベビー用品の発表会のレポートです。

Q.NY にお店を出すという噂を聞きました

池内:

東京、京都、福岡ときて海外はNYに出店しようと展示会でNYに行った時に見てきましたが、家賃が銀座の4倍というあまりの高さに宝くじに何回か当たらないと無理とわかりました。単独出店は諦めてインショップを計画しています。

福岡の直営店は6/12(金)オープンで6/10(水)に内覧会を行います。福岡は場所を探し始めてすぐご縁に恵まれ、すんなりと場所が決まりました。

Q.池内タオルがオーガニックに向かったきっかけとなった環境対策の話を聞かせてください

池内:

池内の環境対策はノボテックスのノウハウで生まれました。1987年に世界で最初にオーガニックコットンを商品化したのがデンマークのノボテックスでグリーンコットンと呼んでいました。

ノボテックスのノルガードさんは繊維のトップリーダーとして度々来日していましたが、ある講演の質疑応答でグリーンコットンを日本でライセンスしたいという質問が出ました。ノルガードさんはグリーンコットンには25ppmという厳しい環境基準を満たす染色工場が必要になるので日本では無理だと答えたのですが、たまたま参加者の中にINTERWORKSを知っている人がいてノルガードさんに数値上ではノボテックス以上の工場が今治にあるという事を話したのです。

INTERWORKSは吉井タオルの吉井さんから自分がお金を出すから身体を出せと言われて作った染色工場で、排水は12ppmまできれいにしています。なぜそこまでしたのかというと、瀬戸内海をきれいにするために染色工場はもう作らせないつもりで作られた世界一厳しい排水基準をクリアする必要があったからです。

ノルガードさんは羽田空港からこれから今治に行くので染色工場を見せて欲しいと電話してきましたが、部外者を中に入れるには7人の理事の賛同を得る必要があります。無理ですと断ったのですが、ノルガードさんは今治まで来てしまいました。結局工場を見せることになり、見学を終えたノルガードさんは工場は素晴らしいが池内さんの環境への意識が低すぎると言いました。そこから環境へ本腰をいれて取り組むことになったのです。

INTERWORKSの中を見学するのは難しく、基本的に株主などの関係者でないと中には入れません。(同業者の多い)今治の人はオープンの時に見学したくらいです。でも、東京の人は株主であったり社債に投資いただいている鎌倉投信の投資家さんなどが見学しています。

 *昨年鎌倉投信の投資家向けツアーでINTERWORKSとIKEUCHI ORGANIC本社工場を見学してきたレポートです。

人から人へご縁に恵まれてここまで来ることができました。ノルガードさんにはその後も懇意にしていただき、環境への取り組みについて色々と教えてもらいました。実は池内タオルでは過去にオーガニックに取り組んだ事があったのですが、本当のオーガニックとは何かという事に疑問を抱いてやめていました。ノルガードさんから感情ではなくデータで環境を示すオーガニックについて学び、再びオーガニックを手がけることにしたのです。

データで環境を示すためISO14001を取るように言われ、調べたところ当時愛媛には1社しかISO14001に対応したコンサル会社がありませんでした。費用を聞くととても中小企業が出せるような金額ではなかったのでインターネットで調べて愛媛以外のコンサルタント会社にお金はないけれどもISOを取得したいと片っ端からメールしました。

鹿児島のあるコンサルタントさんが一緒にやりましょうと言ってくださり、電機メーカー向けのマニュアルを自力で変更する代わりに何度か家庭教師にやってくるというようなやり方でISO14001を取得しました。でも、エコマニアからは品質管理のISO9001を持たないで14001だけ取ったのはなぜだと言われました。そうして翌年にはISO9001も取り、タオル業界で唯一ISO9001とISO14001を取得したのです。

エコテックス認証は2001年から日本で検査できるようになったのをきっかけに取得しました。いまは全製品がエコテックスのクラス1認証を取っています。

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ISO認証を卒業して3年、口に入っても安全なものを作っているということでコットンヌーボー2016までには食品工場の基準を満たそうとしています。だからといって食品を作るわけではありませんが(笑)

もしも来年のコットンヌーボーの時にこの話題を口にしていなかったら今年はダメだったんだなと思ってください。

Q.池内社長にはお子さんがいらっしゃいますが、なぜ会社に入らないのですか?

池内:

うちには子どもが3人いますが、会社(IKEUCHI ORGANIC)のことはあまり意識していないと思います。

タオルを愛してくれる人に会社を継いで欲しいと思っているので次の社長は一族以外からの社長になると思います。事業を出来るだけ負担にならないような形で引き継ぎたいと考えています。

Q. 今治タオルとIKEUCHI ORGANICについて教えてください

池内:

今治タオルと呼ばれるものは四国タオル工業組合に所属したメーカーが今治近郊で生産しているものです。5秒でコップの水に浮かべたタオルが沈む5秒ルールなど商品認定テストが有名になりましたが、主に吸水性、毛羽落ちなどがテストされ、合格したものだけが今治タオルのブランドタグを付けられます。

ただ、今治タオルのブランドタグがついているのはいいタオルの最低基準を満たしているに過ぎないという事を知ってください。タグがついているから同一品質というわけではありません。あの基準は1991年に池内計司がいいタオルの基準として作ったもので、あれから15年くらいたっているわけですから当然技術も進歩しています。

IKEUCHI ORGANICでは昨年全ての製品の今治タオル認証をとりましたが、オーガニックエアの誕生で全てとは言えなくなりました。オーガニックエアは糸を相当減らして軽さを出しているので強度の面で普通のタオルに比べて見劣りする部分があります。

Q.タオルをやわらかくするにはどうしたらいいのですか?

池内:
丁寧に洗うかもしくは吸水材を使うことですね。(IKEUCHI ORGANICでは給水剤は使ってません)

また、糸を撚らない無撚糸をつかうとふわふわになりますが毛羽落ちしやすくなります。どういったタオルを作りたいかにあわせて選んでいます。

会場からの質問

Q.メイドインジャパンや今治で作ったというのは海外でどのように評価されていますか?

池内:

メイドインジャパンは海外では品質が高いと思われます。これはトヨタやホンダなど他のメイドインジャパンが高品質なものを出してきた事による良いイメージです。今治といっても中国?と言われます。

Q.タオル愛への目覚めのきっかけはなんだったのでしょうか?

池内:

自分の仕事については好きになる性格です。オーディオ好きの自分がテクニクスに入社して起きている時間はほとんど仕事のことを考えているうちにすっかりテクニクスファンになりました。タオルについてもそうです。

昨年倒れたのですが、入院が決まっても意識ははっきりしていたのでエレベーターで病室に向かっている最中にばったり倒れてしまいました。その時死ぬ時はあっさりだなと思い、頭に浮かんだのは会社のことを今のうちに伝えておかなければいけないという事でした。

Q.他の企業との協業などは考えていないのでしょうか?

池内:

ある業界には以前からラブコール送ってます。繊維にはノウハウがあると思っているのでいいものを作りたいと思っています。社名を変えたのでタオル以外のものでもなんでもできます(笑)

Q.海外での生産について検討はされないのでしょうか?

池内:

海外での生産については考えたことがありません。タオルを作るには染色工程や後処理などで大量の水を使います。今治はよい水がたくさんあったという地理的条件があってタオルメーカーが集まっています。水という面で海外が難しい他にデータだけではない風合いなどに日本人ならではの感覚が必要だと考えています。