いい投資探検日誌(from 八女)

しあわせをふやす いいお金の使い方を考えています。サステナブル投資家。2017年に新所沢から八女に移住しました。週末は一口馬主を楽しんでます。

コツコツ投資×エシカル消費(2)池内計司×竹川美奈子×安原ゆかり トークセッション

3月2日(木)にIKEUCHI ORGANIC TOKYO STOREでコツコツ投資×エシカル消費というトークイベントが開催されました。

池内計司さん(IKEUCHI ORGANIC代表取締役)によるお話、安原ゆかりさん(日経WOMAN編集長)をファシリテーターに迎えて池内さんと竹川美奈子さんのトークセッションをメモを元にレポートします。

 IKEUCHI ORGANICについて

池内(IKEUCHI ORGANIC 代表取締役):
まずは自社ブランドムービーを見てください。うちはお金無いよと言ったんですが昨年、有名な方が作ってくれました。

また、ECのバックヤードフェス2016で行われたBACKYARD AWARD 2016でIKEUCHI ORGANICが表彰されてムービーを作ってくれました。こちらのムービーはまだ出来たばかりで先日飛行機の中で初めて見たのですが、社員がこう思っているのかとわかって嬉しかったです。

イケウチは18年前から自社ブランドで安全を追求してきました。

最初のオーガニックコットンは枯れ葉剤を撒くはまずいでしょうというところから始まりましたが、ここ10年で遺伝子組み換えの種はまずいに変わりました。

コットンに関して言えばオーガニックで無ければほぼ遺伝子組み換えです。

遺伝子組み換えについては色々言われていますが、コットンは食べないのでとことんひどい事をしています。遺伝子組み換えはダメって言うのはイケウチくらい。コットンは虫に弱いので虫が食べたら殺す遺伝子組み換えをしています。コットンボールを収獲した後、飼料として家畜が食べるとインドでは2週間で豚が死ぬと言われています。それでも人間は家畜と違うから大丈夫と言われています。

イケウチでは環境負荷の少ないものづくりをメッセージとして投げかけていますが、最初の60年で赤ちゃんが口に含んでも安心なレベルになりました。次の60年で食べられるところまで行きましょうと。

今治にある工場で食品工場としての安全性に取り組み、1年ちょっと前に食品安全のISO22000を取得しました。今はそれをベースにタオルを作っています。HACCP認証は宇宙まで持って行っても安全という認証なので社長の阿部は宇宙に持って行く最初のタオルにしようとしていますし、僕は年内にハラールも取ろうとしています。

どこが問題なのか、安全性を求めている、支えてくれるお客様が望んでくれている方向へ向かっています。

また、売るまでの環境負荷だけでなく使っているタオルも長く使って欲しいとタオルのメンテナンスもしたいと思っています。先日IKEUCHI ORGANICタオルクリニック、IKEUCHI ORGANICタオルドクターを商標登録しました。

イケウチにへたったタオルを持ち込んでいただくと、メンテナンスをしてこんな風にちょっと元気になりましたよとカルテをつけます。そんな風に長くタオルを使ってもらうためのサービスです。

IKEUCHI ORGANICはこんな会社です。

トークイベント「コツコツ投資×エシカル消費」のきっかけ 

安原(日経WOMAN編集長):
今日はなぜお二人はジョイントしたんでしょうか?

お話を聞いていて思ったのはお互いに好きなのではないかと思うんですが、理由を聞かせてください。

池内:
竹川さんはうちの重要なお客さんの一人です。竹川さんとは最初どこで知り合いました? 

竹川(LIFE MAP,LLC代表):
日付も覚えています。2010年7月23日です。池内さんは忘れているかもしれませんが、某投信会社の受益者総会でお会いしました。

投信に投資している人を受益者と呼ぶのですが、受益者総会というのはその人たちに向けて運用内容を報告する会で、そこには投資家さんたちが集まっていました。その1回目の受益者総会にまだ投資していないのに池内さんがパネルディスカッションに登壇されたんです。(竹川さんも登壇)

その後の懇親会で横に座ったのが池内さんで、「オーガニックコットンってお肌にいいんですよね?」って聞いたら「お肌にはよくないけど環境にいいんです」って返ってきて(笑)

色々コットンやオーガニックに対するお話を聞いてこだわりのすごい人だなと・・・。

感想:
懇親会の席に実は私もお邪魔していたのですが、竹川さんと同じく池内さんのぶっちゃけトークに惹かれてIKEUCHI ORGANICマニアになりました。トビムシの竹本さんとの出会いも1回目の受益者総会の懇親会の席で、今思うとあの日は私にとってまさに転換点でした。

安原:
お客様だという以外の理由はないんですか?

池内:
出た本がベストセラーだし、ちょっとしゃべってよと(笑)

竹川:
もっともらしい理由を話しましょうよ(苦笑)

池内:
昨日、竹川さんの本を読んできましたよ 。

竹川:
池内さんから一緒にやりたいと言われたので、個人的にも好きなお店ですしお受けしました。

安原:
意外に深い理由はなかったと・・・。

IKEUCHI ORGANICのブランド

安原:
先ほどのムービーでもiというロゴが目立っていましたが、iをマークにした理由はなんでしょうか? 

池内:
創業61周年にCIをやろうとしました。それまで池内タオルは海外ではIKTというブランドで展開していたんです。でも、日本国内では風で織るタオルと呼ばれていたり、その中でも社長の池内が変に目立ってたのでブランドイメージを統一したいと考えました。

デザイナーに頼んで新しいブランドコピーを2013年8月に鎌倉投信の受益者に見せたら全然だめだったんです。(現社長の)阿部はNYの展示会で見せたけれども伝わらなかったと。そこで根本的にやり直そうとナガオカケンメイさんにイケウチをブランディングしてとメールしました。

返ってきた返事は「なんで僕なの?」という1行でした。

ナガオカケンメイさんはD&Departmentをやっていて、イケウチのオーガニック120を当初からお店で売ってくれていたんです。せっかくお金を使うならナガオカケンメイさんだったらイケウチの想いや我が儘もとりあえず受け止めてくれるかなと。一つだけ出した条件は池内を消すことでした。

でも、聞けば聞くほどイケウチのオーガニックは余所と違うんです。そこでIKEUCHI ORGANICという名前になりました。

ロゴが黄色なのはなるべくオーガニックを連想させないから。オーガニックというとよくあるグリーンではなく絶対使わないであろう黄色にしました。

竹川:
なんでIKEUCHI ORGANICを好きになったかというとこだわりがおかしいんです。半端ない。別にタオルを食べないんだから食品工場と同じ安全基準にしなくてもと思うんですが・・・。

でも、一番良かったのはそれまで色やデザインが地味なのがオーガニックだと思っていたんです。環境に良い物はわくわくしたり幸せに感じる物が無いと一回買って満足してしまって次も買おうとは思わないんですが、イケウチの場合はオーガニックなタオルだという事を除いても使っている事に幸せ感を感じます。

また、社員の人がIKEUCHI ORGANICの事が本当に好きなんだなと思います。社員さんインタビューの連載(→イケウチのヒト)もありましたが、それぞれ池内さんほどじゃないですが変なんです(笑)

仕事で金融機関の取材をよくしますが、自社の商品が好きな人が少ないんです。安易に商品を作ったり、自社の商品を買ってなかったり・・・。形が無いからこそ愛が無いとだめなはずなんだけどそれが少ないのが金融の残念なところです。

もの作りにおいて愛が感じられたのが一番大きいと思います。

感想:
IKEUCHI ORGANICを好きすぎてタオルソムリエの資格まで取ってしまった私ですが、まず最初に触った瞬間に明らかに他のタオルとは違うと感じる品質に惹かれました。それでいて環境などにも一般人ならひいちゃうくらいこだわり抜いているところがマニア魂をくすぐってくれます。これはアップルにも感じるのですが、働いている人がこの会社で働いていることを誇りに思っているというのが伝わってくるというのも会社員として心底羨ましいです。

常識を破った二人

安原:
お二人の共通点だなと思ったのは規格外だというところ。お二人とも常識を破ったところがあります。

竹川さんも2007年に出した本、あれは金融においてショッキングな本でした。業界の人がみんな思っていても口に出して言わない常識を書いていたので出版前に読んですごいいい本だねと言ったら「なんと言われるか怖い」と言っていました。

そこに共通点があるのではないでしょうか。

竹川:
投信の本を出したとき、それまで運用担当者が出した本も含めて1万部も売れてなかったんです。編集者が10万部目指しましょうと言ってくれていたんですが、そんなに売れないだろうと好きに書いたらすごい売れて、色んな所からボールが飛んできて、どうしようか怖くなりました。

結果的に売れてしまったら逆に何も言われなくなったんですが。 

安原:
最初は池内さんも業界から色々と言われたんじゃないですか?

池内:
タオルに色を付けた事で池内はオーガニックでは無いと言われていたので、当時は「後ろ指を指されている池内タオルです」と自己紹介していました。

オーガニックは何もしてはいけない。それこそがオーガニックコットンだとオーガニックコットン業界は言っていたのですが、実は色んなことをしているんです。メーカーが直接売っているのは池内くらいであとは企画をして販売はしているけれども作るのは外部に委託している裸の王様状態でした。

例えば糸を染めるのに自然素材以外も使いますし界面活性剤をつけないと糊は糸につきません。そうやって何もしないで出来上がったタオルは水も吸わなくて当たり前。うちのオーガニックタオルは洗濯機で浮くんですとか言っていましたが、水を吸わないとそもそもタオルじゃないですよね。なんで色をつけないの?と思いました。

色をつけないのがオーガニックだと言う人にじゃあ貴方はオーガニック野菜は生でしか食べないんですか?と聞きました。いわばうちのは料理したタオルです。それでも池内はオーガニックじゃないと言われ続けました。

欧米の展示会に出かけていくと日本のオーガニックはなんでみんなベージュなんだと聞かれます。地球のために何もしないんだとメーカーは言うが、お客様の好きな物を安全に作るのがメーカーの仕事だろうと。技術が無いのを隠してるだけだと海外では言われています。

竹川:
そういう辛口なところがボールが飛んでくる理由ですよ。オーガニックコットンは肌にいいんじゃないですよ。環境にいいんですよと最初に言われたんです。直球で(苦笑)

長い時間軸

安原:
お二人の2つめの共通点は時間軸が人より長いことにあると思います。その長さはどこから?

池内:
エシカルっていわれるのが好きじゃ無いんです。

ロハスとかフェアトレードとかもそうですが、フェアトレードは品質が悪くても我慢して使いなさい一方的に言われているようで。個人の感想ですが。

竹川:
最近マーケティングチックに使われているのでなんでも一緒くたにされるのはちょっとと思いますね。

池内さんのエシカルと言われるのは嫌いというのは置いておいて、品質が悪くても買ってあげてる風なのは嫌だというのは未来志向な考え方ですね。

池内:
オーガニックコットンがお肌にいいというのはちょっと違いますね。地球にいいのがお肌にいいんです。でも、アトピーが治るとかいう嘘の上塗りをするような事はやめて欲しいです。

正確には今までより悪くなることはないという程度にお肌にいいという事です。

感想:
エシカルってちょっと気取った感じがあって私もあまり好きな言葉ではありません。考え方は好きですけど、もっと身近な言葉にした方がいいんじゃないかと思います。

竹川:
今、未来そして自分、社会のマトリクスの話をしたいと思いますが、人によって動くきっかけは違いますのでお金を儲けるための投資からスタートしてもいいのかなと思います。徐々に自分から社会へと位置があがっていく事もありますし。

竹川:
寄付も今必要な人に譲ると考えられがちですが、例えばテラ・ルネッサンスが行っている就労支援なんかはもちろん今困っている人を助ける意味もあるんですが、彼らが就職してものを作るようになればそれを私たちが買うことになる未来につながることもあるのかなと。

人やお金の行った先で今、未来の軸や自分、社会の軸の中の位置づけは動くのかなと思いました。 

安原:
池内さんは投資はされるんですか? 

池内:
したいんですが民事再生以降貧乏していたので。ここ3年くらい少しだけ鎌倉投信を買っています。僕と同じですごい変わっているので。

竹川:
変わってる者同士なんですね。 

池内:
最初に受益者総会に参加したとき、会は10時から始まるのに僕の出番は16時からだったんです。そんな後ろの時間に誰も話を聞いてくれないよと思っていたら16時になっても誰も帰っていなくて。そんなに長い間話を聞いたのにそれでも物足りない方は(登壇者やボランティアが参加した)懇親会まで来て話していました。

安原:
資産形成における時間軸は長いですね。

竹川:
資産形成なので値動きでは無く企業価値に対して長期目線を持つことが大切です。値動きだけ見るんじゃ無くお金の行き先をちゃんと見るということ。

オーガニックのコストパフォーマンス

安原:
オーガニックは肌にいいわけじゃないという話がありましたが、オーガニックのコストパフォーマンスについて。もっと安くて使い捨てられるものがある中で、長く使える代わりに高いというそのあたりについて聞かせてください。

池内:
少し高くても長く使えればいいと思っています。うちのものづくりの基本方針は最初の品質が長く使えること。それがうちの環境方針、設計方針です。

家の中を全部気に入ったタオルにしようとした時、また買いに行っても同じタオルはまず売っていません。売り逃げとは言いませんが、デザインを変えていくのがタオル業界の常識なんです。うちはモデルチェンジを極力しないでお客様が気に入ったタオルをいつでも買えるようにしています。

民事再生以降の18年間でモデルを10くらいしか作っていません。2年に一度新製品を出すくらいのペースですが、OEM時代は年間200モデル作っていました。

当然作り方も全然違います。

安原:
先ほどのムービーを見ていると芸術品を作っているような感じでした。

池内:
開発に時間をかけられるようになりました。また、作るのにも時間をかけられるようになりました。

こうすれば稼働率が良くなるのにではなく、風合いがよくなければしません。あくまでもタオルの品質最優先でやること、やらないことを決めています。

これは18年前に作ったタオルです。

池内:
グリーンコットンと書かれていますが、ノボテックス社が当時オーガニックコットンをそのように呼んでいて、ノボテックスと出会った事でこうしたオーガニックタオルを作りました。1999年から2001年頃につくられたタオルです。

池内:
この間見つけたんですが、我が家でふきんに使っていたんです。貴重なタオルなのに!

(現社長の)阿部にメンテナンスしてもらって風合いが戻りました。

感想:
18年前に作られたとは信じられないくらい柔らかいタオルでした。すごい・・・ 

竹川:
私が一番好きなタオルはなんだと思います?

池内:
なんだろう?

女性はボリュームのあるタオルが好みなんです。逆に男性は繊細なタオルが好み。

先日ある人が男の人にとって癒やしてくれるのはタオルくらいしかないからと言っていました。

竹川:
シーツが好きなんです。高かったけど、幸せな気分で寝られます。

モデルチェンジの回数が少ないというのは金融商品とは違いますね。投資信託は今日本に6000本以上あってこれは上場企業の3倍以上の数です。NISAが始まる前の年には890本も新しく投信ができました。こういうのを見ているとちょっと愛が無いと思うことがあります。

コストは二極化しています。合理的にインデックスファンドを買う人にとってはすごく安くなっている反面、必ずしも市場全体だけで無いこだわりがあるひとはコストは高くなりますがそれも一つの考え方です。

ファンドマネージャーの調査費用などがコストとして乗っかってきますがそれでも買いたいかどうか。例えばIKEUCHI ORGANICに投資している鎌倉投信などはインデックスより高いコストですが、お金を払うかはそれぞれの価値判断次第です。

安原:
先ほどエシカルという言葉は好きでないとおっしゃいましたが、エシカル=倫理的というのも汚れた自分にはどうかと思いますが・・・。

池内:
エシカルが嫌というわけではなく、オーガニックやロハスなどこういう言葉をファッション的に言われるのが嫌なんです。

なんでもエシカルと言っておけば今風という使われ方が好きじゃ無いです。

竹川:
私は汚れてはいないです(笑)オーガニックコットンもそうですが希少価値がありますよね。

コツコツ投資をしている人にも普通に生活している中でなかなか出会えないのでコツコツ投資を続けるために投資家さん同士の交流会を始めました。みんなが投資やお金について話せる場がなかったので、そこに行けば気軽に話せるという場を作りました。

本を書くときにも取材に応じてくれるコツコツ投資をしている人に出会うのはなかなか大変でした。

最終目標はそうした交流の場がなくなればいいなと思っています。日常生活の中に普通にコツコツ投資をしていてこの金融商品はどうかなと誰とでも普通に話せるという。

池内:
それは僕に似ている。

IKEUCHI ORGANICがオーガニックを外せる日が夢なんです。世の中が全部オーガニックというのが夢。

タオルは今でももう食べられるけど味がね・・・(笑)

竹川:
飢餓が来て食べるものがなくなっても最後生き残れるのは池内オーガニックのタオルがある家だったりして(笑)

池内:
コットンは繊維なのでファイブミニの代わりにはなると思います。ミキサーにかけて(笑)

感想:
60年後には赤ちゃんが食べられるタオルを作る・・・という話がいつのまにかもう食べられるけど味がって話に(笑)そのうちタオルの色だけじゃなくて味も選べるようになるかもしれませんね。

竹川:
稼いだものをどこに使うかちょっと考えてもらえればと思います。安原さんはどう思いますか?

安原:
働くのは大変です。稼いだお金はいいところに旅だってくれるといいなと思います。

ちなみに私は10万円で2000円もアップルにいくのかと思いました。物を買うのと投資は同じだと実感しました。

 

会場からの質問:
私はちょっとだけ投資しています。普段は株を買ってほったらかしているのですが、自分の生んだお金をいい所に使いたいという時、池内さんのところに投資するにはどうしたらいいですか?

池内:
鎌倉投信の結い2101に投資すると、そのうちのいくらかがIKEUCHI ORGANICに投資されています。

竹川:
この話だけで投資するんじゃなく、ちゃんと説明会に参加したり目論見書を読んで投資哲学やコスト、他の投資先などに納得してから投資してくださいね。

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