鎌倉投信の結い2101が3月29日で運用開始から5年を迎えました。今週の鎌倉投信メールマガジンでも直近の3年間で見るとTOPIXの上昇についていけていない事について書かれていますが、投資家同士の話の中でも時々結い2101の高い現金(キャッシュ)比率が話題になることがあります。
なぜ結い2101は現金を多く持っているのか結いだよりに連載している運用部長の新井さんのコラムを振り返ってみます。
現金比率が高いワケ
運用コラム第4回「キャッシュ比率が高い理由」からの抜粋です。
流動性の低い銘柄が入っていると資金化するのが大変になります。そこで「結い 2101」では長期的には目標とする安定的なキャッシュ比率を30%(株式組み入れ比率70%)として、運営していく予定です。
割高な時点では急いで買わないことを徹底する、お客様がどの時点で投資されてもいいように心配りをする。そんな手間ひまかけた 投資信託にしていきます!
当時は設定間もなかったこともあり、急いでポートフォリオを構築するのではなく、じっくりと買い入れするためという説明でした。また、長期的には安定的なキャッシュ比率を30%と設定していることがわかります。なぜキャッシュポジションをこのように大きく持つのかについて運用コラム第44回「リスク」では次のように書かれています。
理論的には、価格変動のリスクはそれを取った分だけリターンが大きくなると考えられています。東京の株式市場の価格変動リスクはだいたい20%程度。リターンはマーケットの期待によって大きく変わってしまいますが、価格変動リスクはリーマンショック時などの一部の例外を除けば、安定的に管理をすることが運用者としての腕の見せ所でもあります。
現在の「結い 2101」の価格変動リスクは実績で9%台。運用開始以前からお伝えしている価格変動リスクを10%以内にするという運用方針で、これからも安心をお届けしながら、いい会社を応援する運用を実践していきますので、ご支援をよろしくお願致します!
結い2101では価格変動リスクを年率で10%以内に抑えるために現金比率が高くなっています。そのため、力強い上昇相場についていくことが出来ませんが、下落局面ではしっかりと資産を守る運用を行っています。
結い2101が目指す年輪運用
下落リスクを抑えることについて鎌倉投信社長の鎌田さんの著書にこんな言葉があります。
鎌倉投信はあえて高いリターンを目指していません。投資信託なので元本保証は出来ませんが、悪い環境下でもマイナスを極力抑え、今日よりも明日、明日よりも明後日と少しずつ資産を増やしていく年輪運用を目指しています。
プロのプロたる所以は、「どんな環境下でもマイナス幅をいかに小さく抑えられるか、マイナスの期間をいかに短くするか」なのです。
時間をかけてじっくりと資産を増やしていく年輪運用を目指し、マイナス幅や期間を短くするためにキャッシュ比率をコントロールしているのです。
アクティブファンドはベンチマークを上回る成績を目指すのが一般的ですが、結い2101にはベンチマークが設定されていません。この事について運用コラム第32回「セミプロ向けセミナーの内容(3)」には次のように書かれています。
「結い 2101」では、東証一部との連動は目的としていないため、代表的な市場の数値を使っていません。そのかわりとして企業の純資産と配当の 増加率を使っています。つまり、「短期的に株価がどうなっていても 企業の業績が安定的に成長していれば、いつかは株価の総体である市場がその企業業績を説明するようになる」という考え方です。 この場合、最低でも5%程度は企業が平均的に成長していますので、 「結い 2101」では報酬控除前の期待リターンを年率約5%(報酬控 除後で年率4%)としています。
結い2101ではTOPIXのような株価指数ではなく、投資先企業の純資産と配当の増加率を参照しています。運用報告会や受益者総会では運用責任者の新井さんから投資先企業の純資産+配当の推移のグラフがいつも紹介されています。長期的に株価は企業の業績に収斂するという基本的な考えを持つと、このようなアプローチがスッと受け入れられます。
株価指数を超過しようとしているのではなく、企業の成長と共に資産を育てていく事を目指しているのです。
個人投資家向けの商品としての工夫
個人投資家には下記のような特徴が見られます。
- 過去の失敗を引きずる
- 下方リスク(損失)への低い許容度
- 知識レベルに大きなばらつき
- 市場が下がった時に売却する習性
結い2101ではこれら個人投資家が持つ特徴に対して次のような対策を取りました。
- 低いボラティリティ(価格変動)
- 安定的なリターン
- シンプルな商品
- 投資先を応援する仕組みづくり
結い2101がキャッシュを多く持つのは、投資を長く続けてもらうための工夫でもあるのです。
TOPIXリスクコントロール指数との比較
価格変動を抑えるという意味ではTOPIXにも価格変動(ボラティリティ)をコントロールしたリスクコントロール指数があり、結い2101が目指しているリスク10%の指数もETF(MAXIS トピックスリスクコントロール(10%)上場投信(愛称:NISA向けリスコン10))として東証に上場しています。
直近2年の値動きを比較したのがこのグラフです。赤が結い2101、青がTOPIXリスクコントロール(10%)、緑がTOPIXです。
TOPIXもリスクを10%に抑えると結い2101になんとなく似た値動きになることがわかります。また、一方で直近の力強い上昇相場に結い2101は置いていかれているものの、リスクコントロール10%指数よりは総じて良いパフォーマンスを残しているという事も言えそうです。
結い2101の安定した値動きに魅力を感じるものの、コストが気になったりいい会社に投資するといった事に心を動かされない人は、リスコン10を検討してみるのも良いかもしれません。