いい投資探検日誌(from 八女)

しあわせをふやす いいお金の使い方を考えています。サステナブル投資家。2017年に新所沢から八女に移住しました。週末は一口馬主を楽しんでます。

金融の役割はつなぎ役 〜鎌倉投信 新井さん(お江戸百年塾新春フォーラム)

お江戸百年塾新春フォーラム「世界が変わるプロジェクト」
日時:2015年1月17日(土) 14:00〜17:10
会場:増上寺光摂殿講堂
主催:お江戸百年塾

1月17日にお江戸百年塾新春フォーラム「世界が変わるプロジェクト」が開催されました。第三部では鎌倉投信の新井さんが加わり、資源・現場・金融のコラボレーションについて話されました。

「金融の役割はつなぎ役。主役ではない。」という言葉に金融の原点に戻って愚直に実績を積み上げている鎌倉投信の強さを感じました。日本環境設計さんは鎌倉投信の投資先にもなったわけですが、利益が出そうとかそういう話ではなく、わくわくさせてくれる投資先だと思いました。

第三部:

鎌倉投信株式会社 取締役 運用部長
 新井和宏さん

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新井:
鬼丸さんのお話にもありましたが、金融と資源に大きな問題があり、一つでもアクションを起こしてくれたらという想いを持っています。鎌倉投信は金融が正しくありたいと思っているだけで役割はあくまでも”つなぎ役”。周りにいる人が導いてくれています。

これは学校で使われている「生活」のガイドブックですが、この中に日本環境設計のFUKU-FUKUプロジェクトが既に紹介されています。教科書や参考書に企業が載ることは少ないのですが、いくつか事例があります。

一つはIKEUCHI ORGANIC(旧池内タオル)。鎌倉投信の投資先でもありますが、風力発電でタオルを作ったりオーガニックコットンを使ったり環境にとことんこだわった会社です。ここの池内社長は変態でバスタオルを1枚作るのに472gのCO2が排出されるのをカーボンオフセットしていました。

今年は更に変態的で、種から綿になり、糸になって今治まで届くまでの環境負荷を計測しました。このバスタオル1枚14kg分のCO2を製品の値段を変えずにカーボンオフセットしてしまいました。コットンヌーボー2015の1,000セットは完全カーボンオフセットされた製品です。

もう一社は石坂産業さん。周辺の森を守りながら産業廃棄物のリサイクルをされている会社です。

もう一社は日建さん。実は鎌倉投信の投資先でした。旧社名は山梨日立建機と言います。地雷除去の重機を作っている会社でしたが昨年日立建機さんが日建さんの株を売却してしまったため、鎌倉投信では日立建機さんを売却しました。

このように、鬼丸さんをしっかりと応援しています。昨年、鬼丸さんと投資先を一緒にまわり、訪問した3社全てから寄付金をいただきました。金融機関が企業訪問するのにNPOの人が同行しても寄付金をいただける事はなかなかありません。鎌倉投信の投資先の会社は共感力が違います。ただ仲良く旅しているわけではないんです。

鬼丸:
素敵な企業は役割が違うだけで、目指している方向は一緒で共感しあえるから話がすっといくのではないでしょうか。

新井:
某社さんはすごかったです。行動がすぐでした。

鬼丸:
私が話している最中に日付を調べ出して「この日は空いてますか?」と言われました。「空いています」と答えたら「じゃあ講演して下さい」ってその場で講演の依頼をいただきました。当日は200人入るホールと全国の事務所に中継された映像で1000人が講演を聞いて下さいました。NPOに寄付をしても企業の利益にはなりませんが、大事なものを感じていただけるのです。

新井:
鎌倉投信では投資先の会社の社内報が送られてくるのですが、そこに鬼丸さんが講演している模様が出ているのを読みました。お客様からお金を託されていますが、これは社会が豊かになるために使ってくれという事だと思っています。日本には寄付をたくさんする文化がない中で「自分のお金は社会に役立って欲しい」と託していただいている。そういう風に思い込んでいるので、こういう行動も社会の為だと鬼丸さんを連れて行っています。

岩元さんとの出会いは1回目の受益者総会でした。当時投資先だったらでぃっしゅぼーやさんがFUKU-FUKUプロジェクトの回収をしていました。当時は回収した服を今治まで送るための送料(5000円)も集めないといけなかったので募金箱も一緒に置いてあったんです。その後、昨年になって岩元さんとの出会いがあり、鎌倉までいらしていただきました。

岩元:
1時間の時間をいただきましたが、最初の15分しかプレゼンはせず、あとは雑談でした。私の話を聞いて新井さんから「未来が見えました。よくこんなことをしてくれましたね。」と言われたのですが、普通だったらその次は?と聞かれます。新井さんにはぐるぐるまわるイメージが見えたんだと思います。

新井:
岩元さんのお話を聞いてピンと来ました。「これで戦争減るわ」と思い、鬼丸さんにこの事を話しました。

鬼丸:
ネイティブアメリカンの言い伝えでもウランのある場所は昔から掘るなと言われていましたが、近代になってウランの使い道ができると掘るようになりました。昔は使わなかった地下資源を大量に使用するのではなく、地上で使われた資源をリサイクルし続けることで戦争を無くすきっかけになってくれればいいと思います。地上にある資源をリサイクルすれば無駄に掘らなくていいのです。これはすっと入っていくコペルニクス的転換です。

新井:
岩元さんのお話は衝撃的でした。これを早く普及させないといけないと思います。ヤマトHDさんが震災の後、荷物1個につき10円寄付したのと一緒で皆さんに関わってもらうことが社会が早く変わる方法です。

いずれリサイクルしていない企業からはものを買わなくなるそんな時代が来るように企業が変わっていくと思います。そうしない企業から買わなくなる。それを誰よりも先に実現しようとしています。

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岩元:
10月21日を資源循環の日にしたいと思います。世界に発信していきたいと思います。

新井:
これが日本から出るのがいいですね。今日この増上寺から。この話を聞いたからには伝道師となって広めて欲しいと思います。これは参加した皆さんに課せられた役割です。金融というのは本来主役ではありません。主役はこちら(鬼丸さんと岩元さんを指して)です。

金融が前に出ても仕方が無いのです。変えているのはこの2人です。でも、つなぐことはできます。つなぐことが社会を作ることだと信じて必要なだけ提供しています。お金だけでなく信頼でつながっていたのが昔の金融でした。まごころの循環。こういったものを見てもらえれば少しわかってもらるかなと思います。投資先の会社の人が鬼丸さんに出会って泣いて喜ぶというのはそういう事だと思います。

鬼丸:
現場で支援活動をしていると結局問題の原因をどうなくしていくかという事にたどり着きます。資源が使われ続ける限り問題は続くのでNPOだけでは問題解決できません。ではどこが変わればいいかというと経済や企業です。ほとんどの人が働いている企業でいい企業が増えれば世界は変わります。

資源の収奪で戦争が起こっていますが、その裏では金融が絡んでいます。いい社会に変えようとする会社に対して金融という仕組みを使いながらちゃんと成績を残している実績は奇跡だと思っています。世界は平和になる、この社会はよくなっていく。
確実に希望が増しています。絶望的な状況は黙っているとどんどん増えていきます。希望は自ら取りに行くかないと増えません。それが泣いて喜ぶという表現になるのではないでしょうか。

新井:
技術があっても経営が必要です。多くの会社は技術先行になりがちですが、日本環境設計さんは素晴らしい社員さんが集まっています。この間、岩元さんが社外に出ているという事を知った上で会社に行ってきました。そうして岩元さんがいないところで社員の皆さんと話すと本音が見えてきます。みんな岩元さんのファンなんです。岩元さんは「俺はだめだけどみんなは優秀だ」と言っています。技術に寄っているわけでなく、社員を信じているのです。

大久保寛司:
せっかく社員さんが来ているのでインタビューしてみましょう。岩元さんはどんな方ですか?

社員:
みんなを鼓舞してくれる人です。未来のこどもたちのために。
初めは怪しいと思いました。でも、やっていることを見ていると3か月くらいで洗脳されました。夢がスケール大きく、わくわくして実現にむけて一緒にやっていきたいと思います。

大久保:
普通、入社してみると入社前に感じていたのとギャップがあると思いますが、その辺りはどうですか?

社員:
裏表無く感じます。岩元さんは日頃からオチを考えています。

岩元:
オチは必ずつけたいと思っています。社員は霞ヶ関の事務所に10名いて、残りは今治にいますが理系の変わった人が多いです。私だけが文系です。

大久保:
話していてわかります。変わってる人を採用するんですよね。聞いた話だとシステムを作ってる人は会社に出てこないけれども一人で作り上げてしまったそうで。

岩元:
人は大事なので3年かけて口説きました。会社来なくていいから、家でやっていいよと。

大久保:
2020年の東京オリンピックの時までには街中に回収ボックスがあるといいなと思いました。とんでもないアイデアを必ず実現できると思いましたか?

岩元:
夢はあります。実績を重ねていくとやり方や方法は見えてくるのですが生まれたばかりの会社が走っているのが子供の状態です。それをいかに大人にもっていくか。私はそれがうまいんです。ベンチャーでありながらお金ではこれまで一回も挫折がありません。仕組みが大事です。利益があがったら20年くらい同じになるようにします。あとはユーモアが必要です。

2007年に「2015年にはデロリアンのリサイクルシステムを作る」と話して創業しましたが他のお客さんに話してもわかってもらえませんでした。そこで小さな実績を積み重ねて針の穴を通すような単月黒字をずっと続けてきました。いいことをやっても会社が苦しかったら続きません。赤字から上向いてくるのが普通ですが、うちはずっと黒字なので安心できる投資先でした。

新井:
技術依存型の産業ですのですぐに真似されると思いますが、仕組みで勝つようにしています。枠組みの中で将来的な収益源泉があり、技術に極度に依存しないのがすごいところです。
鬼丸さんの凄さは政府が入ってはいかんという危険なところに入っていくところです。
誰も知らないところで活動するからお金が集まらない。でも、そういう人達が社会を変えていくのです。そのつながりを大事にしていくとその先が見えてきます。

ブラック企業の紹介をしてもうちのお客様は喜ばないと思います。それよりもいい会社、いい人と付き合って拡げていきます。ブラック企業を売ればいいのでは?そんな声もありますがそんな投資で喜びますか?応援する方が気持ちがいいでしょ。難しいけれどもそれをやり続けます。

岩元:
10月21日はたくさんの蜂を飛ばしたいと思います。皆さん、よろしくお願いします。

会場からの質問:
現状、銀行などがNPOに融資するのに担保が必要になります。プロジェクトファイナンスなどノンリコースの仕組みについてどう考えていますか?

新井:
鎌倉投信は無担保で(社債に)投資しています。トビムシの林業再生、地域再生のようにソーシャルベンチャー支援には時間がかかります。お客様には4%の利回りを目指すと説明していますが、4%を超えた部分に関しては社会のために使わせていただいています。

それには目利き力が大事になってきます。鬼丸さんのお話に地域の金融機関として登場した信金さんや地銀さんも鎌倉投信のお客様です。「目利き力が違いますね。」と言われた事がありますが、サラリーマンだとリスクが取れないのです。私たちは社会全体を見ているので一定確率でつぶれます。そこに腹を括れないために安全なところへ融資するようになるのです。

トビムシにも政府系のお金がようやく入りましたが、リスクを取って融資することを政府ができないなら産業は育ちません。リスクを取る覚悟がないと無理なんです。一定確率はつぶれてしまうと思いますが、その中でもどうやって倒産しない会社に投資するか検討しています。

大久保:
子ども兵は赤ん坊や子どもをさらってきて民兵組織が兵士として育てることで生まれます。最初に自分が住んでいた村を襲わせ、自分の親を殺させて殺人マシーンに仕上げます。最初、子ども兵の社会復帰をしようとしたら地元の人に怖いから止めてくれと言われたそうです。そういう人を人に再生しているのです。

鬼丸さんはこう言いました。
「子ども兵の問題を知ってしまった。誰もやらないから僕がやるんです。」

 

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