いい投資探検日誌(from 八女)

しあわせをふやす いいお金の使い方を考えています。サステナブル投資家。2017年に新所沢から八女に移住しました。週末は一口馬主を楽しんでます。

誰にでもできる世界を変える一歩について 〜テラ・ルネッサンス鬼丸さん(お江戸百年塾新春フォーラム)

お江戸百年塾新春フォーラム「世界が変わるプロジェクト」
日時:2015年1月17日(土) 14:00〜17:10
会場:増上寺光摂殿講堂

1月17日にお江戸百年塾新春フォーラム「世界が変わるプロジェクト」が開催されました。テラ・ルネッサンスの鬼丸さん、日本環境設計の岩元さん、鎌倉投信の新井さんが登壇されたこの会では世界を変える為に自分でも出来ることがあるというのを改めて実感しました。

鬼丸さんのお話をちゃんとした場でお聞きするのは今回が初めてでしたが、「微力ではあるけれども、無力ではない」という鬼丸さんからのメッセージをしっかりと受け止めました。会場では泣いちゃってあまりメモできなかった部分もありますが、私も今回のお話をシェアしたいと思います。

内戦が続く原因が原油だったりレアメタルだったり日本に住む私たちにも関係があるというのは今までもうっすらと知ってはいましたが、今回のお話で自分事として何ができるんだろう?と考えるきっかけになりました。

まずは第一部の鬼丸さんの講演メモからのレポートです。第二部以降への導入部としても素晴らしいお話でした。

 

第一部:

特定非営利活動法人テラ・ルネッサンス理事・創設者
 鬼丸昌也さん

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テラ・ルネッサンスの活動

テラ・ルネッサンスではカンボジアやラオスで地雷除去団体、不発弾処理の支援の他、アフリカで子ども兵の社会復帰支援にも取り組んでいます。子ども兵は確認されているだけで25万人いると言われていて、テラ・ルネッサンスの主な活動地域はウガンダ、ブルンジ、コンゴ民主共和国の3カ国です。

現場で起こっている事実を知っていただくことはとても重要なことです。こういう活動をしている先輩に「たった一人が問題だと思っている事は家族や従業員や仲間に話し、共有される事で解決すべき課題に変わっていく」と教わりました。それで、多くの方に知っていただきたいと色んな場所でお話しています。

 

忘れられた戦争

コンゴ民主主義共和国はアフリカで2番目に大きく6000万人が暮らしています。国土のほとんどがジャングルで、低木地域やうっそうとしたジャングルが広がっています。国内での移動は特に東側への移動が大変で、雨期は道がぬかるんで轍が10cmから30cmにもなるため10分に一回スタックするような状態で、橋も所々修復しながら進みます。そうやって私たちが作った社会復帰センターへ毎年8月に行っています。なぜそんな行くのも大変なところに行くのでしょう?

戦争に理由があります。コンゴでは20年以上戦闘が続いており、これまでに540万人が亡くなっています。第二次世界大戦以降色んな国で戦争がありましたが、最も人が多く亡くなった戦争です。

でもだれも関心をもちません。忘れられた戦争と呼ばれています。

戦争で影響を受けるのはまず子ども達で、女性も様々な影響を受けます。3万人以上の子どもが少なくとも戦わされていると言われ、武装勢力の60~75%が子ども兵と見られています。最大のPKOが展開されている地域でもあるのですが、そこで治安維持活動をしている兵士がこう言っていました。

「治安維持の為に来たが、こどもを殺しにきたんじゃない。彼らを見ると国に残してきた子どもの姿が頭に浮かぶが、やらなければこっちが殺されてしまうのでどうしようもなく戦ってしまう。」

昨年8月の出張でもそうでした。ある村を中心に5000人が避難しないとならなくなりました。武装勢力が村を襲撃してきたからです。コンゴではいまだに戦闘が続いています。でも、戦争は終わっていて大統領がいて政府もあるんです。言い方は悪いですが日本の戦国時代初期のような状態。幕府はあるけれども影響力は弱く、地方ではそれぞれの戦国大名が争っている。そんな状態です。

 

戦闘が続いている理由

武装勢力が焼き討ちを行う際にある施設をターゲットにします。それはどこの地域にもある施設ですがなんでしょうか?皆さんが住んでいる地域にももちろんあります。答えは病院です。ターゲットが動かないから。逃げることの出来ない病人や妊婦を虐殺するのです。

なぜ戦闘が続いているのでしょうか?民族や宗教といった理由もあるのでしょうが、それはあくまでも戦闘を激しくする理由であり、そもそもの大きな理由は別にあると思います。

子ども兵を使うようになった背景には3つの理由があります。
 1.素直で洗脳しやすい
 2.武器が小さく軽くなった
 3.先進国の生活との関係

先進国に住む私たちの生活にも戦闘を激しくする理由があるのです。携帯電話やパソコンに使われるレアメタルはコンゴで採掘されています。コンゴではレアメタルのタンタルや金が露天掘りされており、その利権をめぐって戦闘が行われています。

コンゴで起きていることは国同士の戦争ではなく国内勢力が戦う内戦です。でも、最も激しかった2000年は周りの19の国がそれぞれ軍隊を派遣して武装勢力に武器を供給していきました。さらに、そのまた周りの豊かな国の政府や企業が自分たちの支持する武装勢力に武器やお金を渡しました。このように火のついた焚き火に燃料を注ぐようなことがあり、戦闘が激しくなっていったのです。
・資源 エネルギー
・お金

これは私たちの生活に関係しています。
1990年以降に行われた各地の戦闘の主な理由がこの2つでした。

 

微力ではありますが、無力ではありません

私たちにとってウガンダが初めての支援地域となりましたが、ウガンダでは23年間激しい戦闘が続きました。ここでも隣国のスーダンの石油が戦闘の理由になっていました。その石油を一番輸入していた国がどこかというと日本だったのです。

これは元子ども兵の社会復帰の支援をしたいとウガンダ北部の現場に行って話を聞いて気づいたことです。戦闘の原因は資源やエネルギーを巡るものなんだという事に気づき、じゃあ使っているのは誰なんだ?ということへ考えが巡り、それが日本だったと知りました。自分がしようとしている事は支えながらその人の足を踏んでいるのと一緒ではないかと思いました。
頭に浮かんだ言葉は偽善。いえ、卑しいという言葉でした。そして、考え続けるしかありませんでした。

先輩達からの問いかけの言葉です。
「何のために目の前のそれをするんだ?それを単なる作業で終わらせたいのか?それとも一度しかない人生で大切な何かのために証を打ち立てる仕事のどっちをしたいのか?」

頭で知って心でわかって行動を変えるのです。それまで自分の当事者性に向き合ってこなかった事をこのときは目の当たりにしました。何のためにこの支援をやっているんだろうか?

僕が変わればいいんです。
微力ではありますが、無力ではありません。

 

紛争鉱物を使わないこと

ダイヤモンドは紛争の大きな原因になります。イギリスでこんな新聞広告がありました。女性が首からさげたダイヤモンドのネックレスから血がしたたっているというものです。ブラッドダイヤモンドという映画がありましたが、その舞台となったシエラリオネはイギリス領でした。シエラリオネで採掘されたダイヤモンドはイスラエルやイギリスが買い付けています。

それを知った自分達に何が出来るだろう?と考えた結果の新聞広告になのです。あの広告をみた人は考えます。私がほしがっている宝石はどこでとれたんだろう?それを宝石商に聞くことが広まり、キンバリープロセスができました。

アメリカではドッド=フランク法という法律が成立しました。
スズ・タンタル・タングステン・金に関してどこで採れたのか調査を行うことを義務づけたのです。日本の製造業はこの対応に苦労しました。皆さんにも是非見て欲しいのですが、パナソニックと富士ゼロックス、オムロンは紛争鉱物についてコンゴで採れたものを使っていないか調査結果を報告しています。

例外としてリサイクル由来の原料であれば調査を一部軽減されることから鉱物資源のリサイクルに力を入れるようになりました。そこで昨年、ソフトバンクと共同でリサイクルを増やそうというキャンペーンを行いました。
誰でもリサイくじというキャンペーンを通じて携帯電話の原料となるレア・メタルのリサイクルを促進する一方、65万円がテラ・ルネッサンスに寄付されました。この国で流通している携帯電話やPCを全てリサイクルにまわせば製造するのに必要な量は賄えるのです。このことは都市鉱山と呼ばれています。きちんとリサイクルしていけば紛争の原因を作らずに済むのです。

 

必要なのは正しい知識ではなく確かな知識

金融にも動きがあります。例えば核兵器製造関連企業に融資している金融機関についても調査がされ、結果は公表されています。これは東京新聞でも年末に記事になりました。

 民間の国際平和団体、PAX(オランダ・ユトレヒト)は二十九日までに、核兵器製造に関連する会社と金融取引をしている銀行や年金基金など四百十一社・団体のリストを公開した。日本企業は、大手銀行をはじめ六社が含まれている。
 報告書が核兵器関連企業と見なしたのは開発や製造に携わる二十八社で、米国のロッキード・マーチン、バブコック&ウィルコックス、欧州のエアバスグループなど。
 核兵器関連企業に取引の実績がある企業には、日本から三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、オリックス、三井住友トラスト・ホールディングス、千葉銀行が挙がった。

   日本企業6社 核兵器企業と金融取引 国際団体調査(東京新聞)

A SEED JAPANでは3つのエコ貯金を提唱しています。

  • 預貯金型エコ貯金
    紛争の原因となるような企業へ融資を行っていない金融機関へ預金することです。全額をそこへ預金するのではなく、一部でもいいのでこどもたちへの贈り物としてそういった行動を起こしませんか?
    信用金庫や信用組合は営業地域への融資が設立の主旨から決められているので候補となりえるのではないでしょうか。
  • 出資型エコ貯金
    NPOバンクという仕組みがあります。これは預けたお金がソーシャルベンチャーやNPOなどへの融資に使われる仕組みです。
  • 投資型エコ貯金
    利益だけでなく社会性も考えて投資信託などを通じて投資をすることです。

こうした取り組みを通じてこの世界から戦争を起こす原因を減らしていくことを私たちには選ぶことが出来るし、選ぶ力があります。世界に変化をもたらすことができるのです。私もコンゴに行って考えるまでは知りませんでした。だから多くの方にお伝えしています。

正しい知識が必要なのではありません。確かな知識が必要なんです。確かな知識は確かな熱を生み出します。

心を震わせて伝える事が出来るのは本物に触れることから生まれます。

 

東日本大震災 ウガンダから届いた5万円

東日本大震災は私も何かしたいと思いましたが、同時に活動範囲を拡げることについても悩みました。規模からいっても自分たちができることにも限界がありますし、一晩悩んでいたらウガンダにいる職員から電話があったのです。

「ウガンダでも津波の事はニュースで見て知っている。あんなに優しい日本の人がこんな目に遭うなんて信じられない。日本の人が私たちを支援してくれていることをみんな知っています。私たちは何をするのか職員と元子ども兵たちと話し合いました。そしてみんなで半日かかって5万円の募金を集めました。」

公務員の月給が7000円のウガンダでわずか半日で5万円もの募金が集まったのです。彼女は「このお金で毛布を買って送って欲しい。日本にいるあなたは何をするの?」と言いました。それで私の中にやるかやらないか?という選択肢は無くなり、何をするのか?というそれだけになりました。

テラ・ルネッサンスでは大槌で刺し子を生かした雇用を生み出し、支援する活動をしています。

 

元こども兵の社会復帰を支えたもの

自分が誰かを支えている誇りはとても力強いものです。元子ども兵も今では公務員と同じくらいの稼ぎを得ることができるようになりました。彼らを見ていると初めての収入は家族の為だったり、隣の家や自分よりも困った人の為に使っています。自分達でも精一杯なのに他人のために使おうとするという事はそこに良心があるということです。殺人マシーンとして教育され、心の奥底に封じ込められた良心を働くことでひっぱりあげることができたのです。

私たちはコンゴでも社会復帰のサポートを始めています。共同の農場を開いて12の村で農業技術を教えています。その12の村ではお互いに相互扶助契約を結んでいて武装勢力に襲われて逃げる時、他の村が彼らを受け入れるのです。そこで避難してきた人達の生活を支えるためのセーフティネットの一つとして安心して働ける素地であり、備蓄用作物を共同農場では作ります。
株式会社アイケイさんでは環境負荷のない製品だけでカタログを作り、その売り上げの1%を寄付して下さいました。

民兵組織で呪術師として麻薬を混ぜた煙で子ども達を高揚、洗脳する役割をしていた彼のもとには今でも様々な民兵組織から復帰しないか?と声がかかります。そうして洗脳した子どもたちを地雷原を歩かせるのです。

でも彼は断り続けます。「俺はいま溶接の技術を学ぶので忙しいんだ。戦う暇なんてない。俺だって人は殺したくない。」

民兵組織が村を襲撃するときにターゲットを決めるやり方が鉄のドアでできているか?です。鉄のドアは開けるのに時間がかかるのでターゲットにはならず、木でできた扉の家を襲います。住民はみんな鉄の扉が欲しいのですが、なかなか近くでは用意ができません。そこで遠くの村まででかけては鉄の扉を注文し、出来上がるまで1週間その街に泊まったあと、出来上がった鉄の扉を自分の家まで歩いて持って帰るのです。

彼はそんな住民のために鉄の扉を作り続けています。嫌われ者だった自分がみんなから感謝されてお金ももらえる。そんなありがたい仕事をしているのに戦っている暇なんてないと言います。

 

仲間を募集しています

自分で稼ぐことができれば民兵からの復帰の誘いも断ることができるのです。テラ・ルネッサンスではこうした取り組みを担保するために支援を大きくしようとしています。私たちの取り組みは支援の受け手こそが主人公です。単年度での成果を求める風潮の中、複数年かけてゆっくりと成長させていくのをグローバルスタンダードにしていきたいと活動しています。

欧米でそうした事が評価されるためには透明性の高さとどれだけの人のサポートを受け取るかが重要視されます。多くの市民と関わりを持っているという事を証明するためにも仲間をふやしたいという事でサポート会員への加入をお願いしています。

 NPO法人テラ・ルネッサンス

【お知らせ】

2月10日(火)に渋谷のシダックスカルチャーホールで鬼丸昌也さんの講演会があります。詳細はこちらから。

『一歩を踏み出す勇気 〜資金ゼロ、人脈ゼロから始まったNGOの軌跡〜』

日時:2015年2月10日(火) 19:00〜21:00
場所:シダックスカルチャーホール
参加費:講演会 2,000円/懇親会 4,000円

 

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