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"いい投資"探検日誌 from 新所沢

しあわせをふやす いいお金の使い方を考えています

責任ある投資 資金の流れで未来を変える [著]水口剛

読書

『責任ある投資とは』

『責任ある投資』この言葉を聞いたときにどういったイメージを持つでしょうか?

社会的責任投資(SRI)をイメージする人もいるでしょうし、「責任ある」という言葉から投資について何らかの制限を設けるものだと考える人が多いのではないでしょうか?

自分の場合も社会的責任投資(SRI)の発展系というイメージを持っていたのですが、この本を読んでみて長期投資の一手法としても考えることができるのかなというイメージに変わりました。もちろん、投資の先にある経済活動においても持続可能性を考慮した方がよいだろうという考えがあってこその手法ではありますが。

自分が投資を始める際にウォーレン・バフェットの投資哲学を勉強しましたが、それは10年間株式市場が閉鎖されても困らないような企業に投資すべきという厳選長期投資の考え方でした。

短期、中期投資であれば株価の変動を意識して売買すればいいので企業がどんな手段で利益をあげていようが構いませんが、長期的に株式を持つという事は長い間投資先の会社のリスクを背負うという事にもなります。例えば10年間何があっても売ることができない(逃げられない)となると利益の成長はもちろん大事なのですが、それだけではなく10年先までしっかりと企業が発展し続けられるよう従業員や取引先との関係、地域との共存や環境への配慮などなど気にしておきたいことは色々と出てきます。

結果的に企業を利益以外の様々な要因で分析することになり、そのようにして選んだ企業に長期的に投資し、株主として責任を持った行動をとることが『責任ある投資』なのだと思いました。

社会的責任投資の歴史

社会的な責任を意識した投資は教会が宗教上の戒律に反する企業への投資を禁じたところから始まりました。1920年代のアメリカやイギリスのキリスト教会が余裕資金を株式で運用していた際、教義上問題のある「罪ある株式」と呼ばれた酒、タバコ、ギャンブル関連の会社に投資を禁じました。これを第一世代のSRIと呼んでいます。この頃は投資利益よりも倫理観を重視していました。

1970年代に入るとアメリカで人権問題や社会問題へ関心が高まったのを受けて差別撤廃、反戦、消費者問題などを対象に広げて除外するだけではなくよい取り組みをしている企業に投資するようなファンドも登場しました。これを第二世代のSRIと呼んでいます。この頃になると株主提案やポジティブ・スクリーンなど積極的に社会にインパクトを与えるのを目指すことで利益を犠牲にしない方針へ転換しています。

2000年代に入ると環境や人権、雇用、地域貢献への配慮をすることは長い目で見れば企業利益につながるというCSRを適切に評価することでよりよい投資成果を目指す第三世代のSRIと呼ばれる時代がやってきました。

ヨーロッパでは第三世代のSRIが積極的に採用されている反面、日本ではSRIはあまり浸透していません。

『責任ある投資』を日本で広げるための方策

この本の著者は責任ある投資を日本で広めるために年金基金への導入や上場企業には有価証券報告書の統合報告化を法制化することを提言していますがこれについて自分は否定的な考えを持っています。

今のところ日本においては投資に持続可能性要素を組み込む必然性を感じている投資家や関係者が少ないため無理に法制化しても決められたことだけやればいいという形骸化してしまわないかが心配ですし、世間一般の人の年金運用へのイメージはこのツイートに現れていると思います。

株を買う=バクチと思っている人が日本中にたくさんいる中で責任ある投資を法制化というのはまだ早すぎる段階で、社会が責任ある投資への必要性を十分に感じるように活動していく必要があるでしょう。特に金融機関は派手に市場で暴れては金融危機を引き起こすことを繰り返している事もあり、まずは「責任ある」が付く付かないに関係なく投資へのイメージを地道に良くしていく必要があります。

手前味噌ではありますがrennyさん、まろさんと一緒にやっているリレーブログ「本日のスープ」も自分にできることの一つです。

その上で金融の持つポジティブな力を社会が共有するようになって「責任ある投資」へ向かってくれるといいなと思います。

今あるファンドのテコ入れ

既にあるSRIファンドについても言いたいことがあります。既存SRIファンドの運用レポートはあくまでもお金が増えたか減ったかがメインで社会的責任をどのように評価して投資行動に生かしたのか等の説明は十分にされていません。

社会的責任について考慮した投資を行ったという付加価値について投資家が評価するための要素を投資家に提供していないため、結果として投資家はSRIファンドも通常のファンドと同じようにどのくらい利益が出たかで比較するしかありません。

投資先を選定する中で企業に対しては様々な項目についてアンケートをとったりしているのに投資家への報告ではその辺りがごっそり抜けているというのは人には聞くけれども自分は報告しないという面でいかにも片手落ちです。

この本では上場企業の有価証券報告書を統合報告化することを提案していますが、私としてはSRIファンドの運用報告の統合報告化を提案します。

まとめ

投資先の選定においての考慮だけではなく、株主提案などの投資してからの行動など責任ある投資がどういったものなのか実例を交えてとてもわかりやすく解説されていました。

投資に限らず融資などにおいても責任ある行動とはどういったものか著者の考える形が書かれており、地球の環境を次の世代に引き継ぐ上で金融に出来ることはなんだろう?というのを考えさせられる本でした。

投資はあくまでも利益を出すことに専念するという考え方もあると思いますが、やはり株を持っている以上は株主としての責任は発生するわけで、特に年金基金など多額のお金を運用しているところはそれだけの金額に見合った責任をも背負っていると思います。

年金のように直近の受給者だけでなく将来世代のために運用される性質のお金は将来のためにも投資先企業のオーナーとして責任ある投資をして欲しいというのが私の考えです。

責任ある投資――資金の流れで未来を変える

責任ある投資――資金の流れで未来を変える