NPO法人日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)が行った第2回サステナブル投資調査アンケートによると2016年3月末時点のサステナブル投資(ESG投資、責任投資、SRI、インパクトインベストメント、エコファンドなど)の残高は56兆2,566億円でした。
これは前年の2015年3月末時点と比較して2.1倍に相当します。
また、全運用残高に占めるサステナブル投資の割合は16.8%でした。
JSIFではサステナブル投資を次のように定義しています。
1. 地球と社会の持続可能性に配慮した投資であること
2. 原則1の投資プロセスや社会的な効果を資金の供給者に対して開示していること
日本でもGPIFが2015年9月に国連責任投資原則(PRI)に署名、年金基金連合会も2016年5月に署名するなどサステナブル投資への関心が高まりつつあります。
SRI投資からESG投資へ
責任投資の世界では、以前はSRI投資(社会的責任投資)と呼ばれ、社会的責任の観点から投資する手法とされていましたが、その後「環境:E」「社会:S」「ガバナンス:G」の観点から投資するESG投資へと発展してきました。
いまだにSRI投資の価値観でESG投資に反対する人も見受けられますが、その手法はだいぶ変わっています。
例えばSRI投資では市場全体に投資するパッシブ運用はあり得ませんでしたが、ESG投資においては市場全体に投資するパッシブ運用も内包されています。
市場全体に投資するパッシブ運用であっても企業との対話(エンゲージメント)や議決権行使を通じて企業に働きかけることが出来るからです。
SRI投資と比較すると随分ぬるくなったなという感覚もありますが、テーマ的な要素が強かったSRI投資と比較して全ての企業にとって関係のあるESG要素を評価するESG投資は、本質的には預かった資産を増やすことを目的としている運用機関が実施する上で現実的な路線に合わせてきた結果なのだと思います。
日本のESG投資の現在の姿
JSIFのアンケート調査によるとサステナブル投資がなされているとされる56.2兆円の内訳はこのようになっています。
- ESGインテグレーション 14.2兆円
- ポジティブ・スクリーニング 3.0兆円
- サステナビリティ・テーマ型投資 1.0兆円
- インパクト・コミュニティ投資 3,696億円
- ESGに関するエンゲージメント・議決権行使 19.1兆円
- 一般的なエンゲージメント・議決権行使 15.7兆円
- ネガティブ・スクリーニング 2.2兆円
- 国際規範に基づくスクリーニング 6.7兆円
内訳を見てもサステナブル投資における主流は投資先の企業と企業価値向上に向けた対話(エンゲージメント)や議決権行使だということがわかります。
そして投資先を選択する際に従来の財務情報などを基にした分析の他にESG要素を加味するESGインテグレーションが続いていますが、これらESG投資の主流な手法を見てわかるのは、投資パフォーマンスにはある程度目をつむる代わりに社会的なリターンを望むという一般的に想像されている姿とは違うものだということです。
サステナブル投資・ESG投資は企業が成長するのを中長期的な目線で株主として後押しするものなのです。
こちらの記事によると最近の研究ではESG投資においてパフォーマンスが上回るとする論文が5本、下がるとする論文が3本、ほぼ変わらないとする論文が13本だったそうで、ESG投資によるパフォーマンスの低下はほぼ見られないという結果になっています。
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また、国別だとアメリカでIT企業が投資先に含まれないことからマイナスになったそうですが、欧州では上回る結果だったようです。
日本株のESG投資残高は前年比2.3倍の31兆円に
今回のサステナブル投資残高アンケートの結果、サステナブル投資における日本株の占める割合は67%の31兆円で前年比2.3倍だったという事が日経でも報じられました。
日本でも企業価値向上を側面から支えるESG投資が徐々に広まりつつあります。