いい投資探検日誌(from 八女)

しあわせをふやす いいお金の使い方を考えています。サステナブル投資家。2017年に新所沢から八女に移住しました。週末は一口馬主を楽しんでます。

ツムラ 加藤社長、テラ 矢崎社長、鎌倉投信 新井さんによる対談レポート

1月21日に開催された鎌倉投信の運用報告会レポートの後半はツムラ加藤社長×テラ矢崎社長×鎌倉投信新井さんの対談です。

株式会社ツムラ加藤社長、テラ株式会社矢崎社長 講演&運用報告会
 日時:2017年01月21日(土) 09:00 - 11:00 
 場所:FinGATE(フィンゲート) 茅場町一丁目平和ビル1F
 講師:株式会社ツムラ 代表取締役 加藤照和さん
    テラ株式会社 代表取締役社長 矢崎雄一郎さん

会社を知りたいなら講演なのですが、社長の人となり、考え方などを知りたいなら対談のようなフリートークを聞くに限ります。お二人の誠実さや自社の事業を通じて健康に貢献したいという想いが伝わりました。こういう数字には表れない部分も大切だと思います。

こちらも講演のメモを元にレポートします。

新井:
医療について悩んでいる事が2つあります。
このままだと医療費って続かないなという事と、自然なもので無いといけないという事です。

西洋医学を否定するものではなく、人間の基本的な(治癒)能力をどう生かしていくか、そうした分野で日本が特徴を表現できるという意味で漢方は魅力的だと思いますし、免疫療法は非常に魅力的と感じています。

ツムラさんは漢方を医学として認めていただくために病院や大学へ大変な努力をしながら働きかけをなされてきたと思います。

テラさんの免疫療法にも通じるところがあると思いますが、感想を聞かせていただけますか?

加藤:
全く新しい最先端のものをどうやって認めてもらうかの難しさとは違うかもしれませんが、良いものをどうやってたくさんの人に使っていただくかという点においては同じだと思います。

私たちは西洋医学が主流の中で、その考えの中で証明しないと安心して使っていただけないという事がありました。
物質、背景が違うものを一つの方法で評価しないといけないのかという思いはありました。

漢方をなぜ使っているのか先生にアンケートを取ると、開業医は患者さんに満足して帰っていただくために治療方法の種類を多く持ちたいという傾向がありました。
一方で大学病院はエビデンス重視、有効性を評価していました。

それらを少しずつやってきた結果、エビデンスがあるならという事で漢方を使う先生が増えてきました。
既成の概念に新しい概念が入っていく難しさがありますが、良いものは必ず普及していくと信じていました。

新井:
今のお話を聞いての感想とツムラをどう思うか聞かせてください。

矢崎:
先ほど加藤社長にご挨拶させていただきましたが、実は私の父親が漢方医でして、家にツムラさんの漢方薬の缶が普通にあるような環境で育ってきたので今日は身近な感覚でお話を聞いていました。

西洋医学のアプローチに限界がきているのではないかと思う事があります。
漢方のような複合的なものが結果的に効果を出している新しい評価のあり方は免疫療法も同じで人の細胞で治療する新しい考え方だと思います。

東洋医学的考え方でのエビデンスの作り方は今後重要になっていくのではないでしょうか。
これからはこういったプロダクトをどうやって社会に出していくかがキーになると思います。

新井:
これからの社会に必要とされなければ残る事は出来ません。

今日は鎌倉投信の受益者の皆さんに経営されている方の想いといかに社会に必要とされるのかを見ていただきたかったのですが、実はテラの矢崎さんにツムラの加藤さんを紹介したかったという意味もあります。
鎌倉投信的に言うとこれからの会社がテラさん。

ツムラは前任の芳井社長からのお付き合いで人、共生、匠が3つとも揃った会社です。
今日も社員さんに3名来ていただいていますが、挨拶が心地いいんです。

一番感動したのは本社の受付で座っていたら車椅子の方が横切って出社していくんです。
その時にわざわざこっちを向いて挨拶してから行く姿を見て素敵な会社だなと思いました。人が素晴らしいんです。

加藤社長も以前IR部門にいた時に知的障害のある方と机を並べて仕事していました。
共生という意味で循環型社会を作る取組としててるみファームが登場していましたが、生薬の栽培から手がけてらして、自然の物を使うので自然に戻る循環が生まれるんですね。

匠という意味では漢方をきちっと臨床試験できるように科学しています。
日本独特なものなんですよね、漢方は。

加藤:
中国は中医の先生が改良していくんです。
それでどんどん○○先生の処方という風に変わっていて古典に忠実に商業ベースに乗っているというのはあまりありません。

それでどっちがよく効くのかという話になりますが、日本は日本の中で日本人の体格や気候風土に合った形に合わせてきた伝統医学として漢方があり、中国もそこは認めてくれています。

アジアの伝統医学の相互発展に切磋琢磨協力しながら発展していこうとしています。

新井:
前社長の芳井さんから言われて印象的だったのが「次の社長は10年任せたい」と言われていた事です。
今日はそんな加藤社長を矢崎さんに紹介したかったんです。

ちなみに、樹状細胞ってどのくらいあるものなんですか?

矢崎:
皆さんから血液を取り出してもその中に数個しかありませんが皮膚には比較的たくさんあります。
例えば転んで傷ができてばい菌が入ってきたときに最初に退治するのが樹状細胞です。

面白いのはこれは樹状細胞の初動で、ばい菌だけでなく外敵を食べた後体の奥にあるリンパ節まで自分で行くんです。
リンパ節には免疫細胞が待っていて敵が来たから攻撃せよと伝令する役目も果たします。

会場からの質問:
経営者の立場からぜひ自社を自画自賛してください。

加藤:
まず、事業がわかりやすいと思います。

供給している医療用漢方製剤のシェアが大きいので東日本大震災で工場が被災しましたが、供給できなくなると患者さんが困ってしまいます。

そこで社員も含めて使命感が非常に強い、自分たちが製造しないと他にいないと自負しています。患者さんに届け続ける使命感に基づいて仕事している集団です。

矢崎:
当社もツムラさんと同じで理念とやるべきことが明確です。
患者さんを一人でも多く助ける、そのための集団で皆が一丸になっています。

医療機関との接点があるので患者さんと接しているというのも他社と比較して強み、いいところです。
開発だけで無く患者さんの声を聞ける、患者さんに向いている強さがあります。

会場からの質問:
日本的な経営を勉強していますが、西洋的資本主義に限界が来ているのではないかと思います。

また、矢崎さんに質問です。
提携医療機関40とありましたが和歌山医大の膵臓がん臨床試験はそこだけなのでしょうか?

矢崎:
臨床試験にはフェーズがあります。
まず安全性評価を和歌山県立医大で行った後、全国のがんセンターを含めて10数カ所で行う計画です。

西日本で膵臓がんの大家と呼ばれるのが和歌山県立医大でこれまで30年以上免疫療法に取り組んでおられます。

新井:
3月24日に次の本の出版が決まりました。
題名は出版社が決めるのでまだ決まっていませんが「持続可能な資本主義」という副題です。
宣伝するのにちょうどいい質問をありがとうございます(笑)

3月28日に代官山TSUTAYAで出版イベントを開催予定です。

会場からの質問:
医療費が増えていく中で今後下げることはできるのでしょうか?

加藤:
医療費の問題はここのところ激変していて、年末に急遽大臣が集まってまとめたものが今年になって詳細が発表されました。
キーワードは一つで「費用対治療効果」です。

比較的安く使って治療効果をあげるもしくは高くても効果があるものが評価されます。漢方薬は安くなっているのでエビデンスを集積していき、ドクターが治療する際に参照するガイドラインに載せられるようにしていきます。

まず漢方薬をお使いいただけるという事と、安心して使っていただける、その両方を目指していきます。

75歳以上の方の治療費が高くなっているので重症化される前をどうコントロールするか、健康寿命の延伸についても取り組んでいきます。

矢崎:
バイオ医薬の中では今回問題になったオブジーボも開発費が非常にかかっているので難しい面もありますが、産業の育成という面もあるのでそこは支援すると思います。

開発側からの視点で話すと医療費をちゃんとつけて欲しいと思いますし、免疫療法は副作用が少ないという特徴があります。

がん治療について患者さんが社会に復帰する社会的な面も含めて価値を評価して欲しいと思います。

また、今後の話としてなるべく予防的観点でできないか、再発予防で根治を目指すなどで結果的に医療費は削減できるのではないかと思います。
例えばがんになる前に予防が出来るなど、そのような方向に向かうのではないでしょうか。

新井:
最後に鎌倉投信の受益者の皆さんに期待することはなんでしょうか?

加藤:
まず、私も受益者の中の一人に入れて欲しいと思います。

新井さんと初めてお会いしたのはちょうど鎌倉投信を知ってホームページを見て投資ってなんなんだろうと感じた時でした。
鎌倉投信は国民の一人として日本の将来に想いを馳せながら投資する意味合いが大きく、そうした事を考えて銘柄を選んでいるなと思っています。

会社の立場では皆さんからの期待に応え続けるようにしますし、個人としては皆さんと一緒にいい応援し続ける覚悟です。

矢崎:
私たちもまず応援いただき、皆さんと一緒に成長させていただければと思います。

保険での治療を認めていただくにはしばらくかかるので今後も大変な時期もあると思いますが、良い治療なので今後とも応援、ご指導下さい。

 

前半の講演はこちらです。