いい投資探検日誌(from 八女)

しあわせをふやす いいお金の使い方を考えています。サステナブル投資家。2017年に新所沢から八女に移住しました。週末は一口馬主を楽しんでます。

日本財団「WORK FOR 東北」説明会に行ってきました

8月6日(木)に日本財団で開催された「WORK FOR 東北」の説明会に行ってきました。

日本財団「WORK FOR 東北」個人向け説明会
 日時:2015年8月6日(木) 19:00〜21:00
 場所:日本財団 1Fバウホール

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WORK FOR 東北は被災地が必要とする人材を現地に送ることを目的としたプロジェクトで当初は復興庁が手がけていましたが現在は日本財団がプロジェクトを引き継いでいます。

岩手・宮城・福島の被災三県には全国から自治体職員などの応援が入っていますが、自治体だけでは対応できない民間キャリアが求められる「産業支援」「コミュニティ支援」「連携支援」「交流人口増加」などの分野でスペシャリストやマネジメントに携わる人材が不足しています。

WORK FOR 東北ではこれまで1年9ヶ月で115名の人材が被災地に赴任しています。

岩手県釜石市では市の観光ビジョンの策定や林業ツアーの推進、宮城県石巻市では六次産業化推進や産業支援システムの管理・運営、福島県浪江町では避難住民のコミュニケーションを促すタブレット端末の開発や集団移転に向けた関係者間の調整など様々な分野で活躍しています。

身分としては任期付公務員や準公共の民間団体職員など、年収は概ね300万円ほど、勤務期間は通常2〜3年といったところです。 

パネルディスカッション:
「復興の先へと進む地域で。私がしていること、考えていること」

 パネリスト:
  近藤 ゆたかさん(石巻市役所 産業部産業推進課)
  手塚 さや香さん(釜石リージョナルコーディネーター協議会(釜援隊))

 ファシリテーター:
  青柳 光昌さん(日本財団「WORK FOR 東北」事業統括)

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パネルディスカッションではWORK FOR 東北を通じて実際に被災地で働いているお二人のお話を聞きました。近藤さんからは民間企業と行政セクターの仕事のやり方の違いに少し戸惑ったという話、手塚さんからは林業の知識がないのに数ヶ月後に開催される林業関係の人材育成スクールの事務局として働くなど大変な面も窺えました。もちろん、やりがいもありそうですけれど。

イベントは後半に今回人材募集をしている地方自治体のプレゼンと相談会もあったのであまり長くお話が聞けなかったのはちょっと残念でした。

という事でメモを元にしたレポートです。

近藤:

石巻市の産業部産業推進課の近藤です。前職は保険会社のコンプライアンス担当でしたが、その前はマーケティング、その前はFP、そして全労済で働いていました。復興支援で働きたいと思っていた時にWORK FOR東北を知り、昨年の5月から石巻市で働いています。

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手塚:

大学を卒業してから新聞社に入って最初に配属されたのが盛岡でした。その後、東京、大阪で勤務していましたが、震災の時に自社の記者も被災地に入って取材していたり、ボランティアなどで岩手に再び通うようになり、2013年には盛岡支局へ異動、2014年秋に新聞社を退社して釜援隊(釜石リージョナルコーディネーター協議会)で今の仕事についています。

私の仕事は釜石森林組合で釜石大槌バークレイズ林業スクールの事務局として企業誘致や体験の受け入れの調整や林業に携わる人材育成、HPやFacebookなどを通じた情報発信を行っています。

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青柳:

総括するとイメージ通りでしたか?また、どんな能力が役立ちましたか?

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近藤:

そういうものかと思ったのはドキュメンテーションの多さです。3ヶ月で慣れましたが最大で43個のハンコが押されている時もありました。それだけ多くの人が関わるという事でもあるのでコミュニケーション能力は生かされました。全労済やFP時代の経験が生きています。

また、マーケティングが出来る貴重な機会でもあります。公共セクターでは法令が重要視されますが、国、県、市、町、村それぞれの立場や思惑といった構造を理解することで相手が大事にしているものを取り込みながらやっています。

手塚:

盛岡で記者として活動していたのでギャップというものはあまり無かったです。思った以上にかかるなと思ったのは私は飲みに行ったりするのが好きなのですが、代行のお金が嵩むという事です(笑)。

新聞記者は専門性も求められるのですが、私の場合は担当が文化関係だったこともあり、ゼネラリストだったと思います。そんな私が本当に役に立つのかなと不安もあったのですが、一定程度お役に立てていると自負できるようになりました。コミュニケーション能力はもちろん必要ですが、スピード感のある判断力が求められます。スポンサーと森林組合をスピード感をもちながらつないでいます。

青柳:

プロジェクトマネジメントの能力も必要ですね。関係者とコミュニケーションしながらやっていくことになると思いますが、有期での現在の仕事のあと、どんなキャリアを考えていますか?

手塚:

岩手にこだわりがあり現在の仕事をしていますが、5年間の契約などでまだその先についてはっきり考えていません。5年間という期間ではありますが、岩手で仕事をしたいと思って働くことにしました。

近藤:

私も先のことはまだ見えていません。民間と行政両方のセクターを理解できる能力というのは強みだと感じています。今後地方が強くなる局面でその能力を生かせる場面が出てくるのではないかと考えています。

青柳:

具体的な仕事内容と仕事を通じて楽しい、つらかった事を教えて下さい。

近藤:

石巻市は平成の大合併で大きくなった市なのですが、本庁に配属されるものとばかり思っていたのが最初の配属先は河北地区と呼ばれる旧河北町の河北総合支所地域振興課に配属されました。

その後、今年の4月1日付けで本庁に異動したのですが、今度は石巻市の中心部でこちらは北上川沿岸に開けた街で工業団地や水産加工業も盛んです。

河北でやっていた事は産業グループというところに配属になったので商工業、観光、畜産、農業、林業、漁業と あらゆる分野に関わりを持ちました。サバだしラーメン、大川の神楽、上品山には牧場もあるのでそこで牛を追ったり、国の施策を進める上で農家とコミュニケーションを取ったり、林業では草刈り、漁業では復旧していく様子を見たりしてきました。

産業にはとにかくエネルギーが必要です。人が持つ力を生かせるようにどうしたら企業が働きたくなるか国や金融だけでなく個人も巻き込んで動けるようにしました。

働いてみて感じた難しさは書類の仕事が多いという事です。とにかく記録して回していく文化なんです。自分の持つ企画力などが試される現場で、これまで全労済や保険会社、FPなど様々な分野で幅広く働いてきた自分の能力を試すことが出来ています。

ワクワクするのは牛ですね。上品山の牧場には雌牛しかいない(仙台牛となる仔牛を産むための牛が飼われています)ので毎月ネイルサロンを開いて蹄のカットなどをしていました(笑)

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手塚:

釜石というと最近では橋野高炉が世界遺産登録で有名になりましたが、鉄と魚とラグビーというイメージがあると思います。来ていただくとわかるのですが、海、街ときてその後ろがすぐ山という地形になっていて、市の90%が森林です。

私は森林組合と一緒に仕事をしているのですが、森林組合の仕事は民間の方が持っている山の手入れをすることです。釜石では市役所の1Fまで津波が来たのですが、森林組合の建物も津波により被災し、5名が亡くなっています。事務所が被災したことにより、山の図面が流されたり大変だったのですが、トップである参事の高橋さんという方が今後釜石の人口は減る一方だろうけれども、ペースを抑えられるようなちゃんとした産業にしたいと考えた素晴らしい方でイギリスの金融機関のバークレイズと一緒になって林業に携わろうとする人向けの人材育成の場を作ろうと震災前から取り組んでいました。

秋に釜援隊に入ったのですが、年内にはスクールを始めるというスケジュールになっていてとにかくすぐにカリキュラムや日程など決めることが山積していました。森林組合のHPを作ったり、講師を呼んだり当時は記者時代もハードでしたがそれ以上にハードな毎日でした。今は毎月1回のスクールに向けてペースをつかんで仕事をしています。

林業について知識もないのに人材育成しなければいけなかったのですが、参事の高橋さんがやりたかったけれども通常の森林組合の仕事が忙しくてなかなか手をつけられなかったところが出来ているとおっしゃっていただき、良かったなと思っています。

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青柳:

生活はどんな感じなのでしょうか?

近藤:

仕事は8時30分から17:30分で車で20分かけて通勤しています。休日は釣りが趣味なので地元の人と話しながら釣りを楽しんでいます。

青柳:

釣果はどうなのでしょうか?

近藤:

買った方がいいですね(笑)

手塚:

森林組合は7:40から朝礼があるのですが、私は必要がある時だけ朝礼にも出るようにして、普段は9:00までに出勤するようにしています。準備などで忙しい時期は22時くらいまで働くこともあるのですが、住んでいるところが仮設住宅で近所のスーパーは19時には閉店して土日は休みということで仕事の合間にスーパーで買い物をして森林組合の冷蔵庫を借りたりといった生活感のある仕事ぶりです。

休日は盛岡のさんさ踊りに参加するための太鼓の練習をしたりしていますが、冬が長いせいなのか岩手は夏は各地でイベントが多く色々遊びに行っています。

 

被災地受入団体プレゼンテーション

【岩手県釜石市】

釜石リージョナルコーディネーター協議会(通称:釜援隊)は釜石市で人と人をつなぐ調整役をしています。様々な協働先と適切な距離感をもって第三者としてまちづくり全体に関わっています。

釜石市には7月の始めに草食投資隊の夏合宿で行ってきました。確かに山が多い地域でしたが、釜援隊の手塚さんのお話を聞いて林業も頑張っているんだなと知りました。

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【岩手県大槌町】

交通の便からすると東京から一番遠くにある被災地が大槌町です。WORK FOR東北からは観光や住宅サポートの分野でこれまで採用実績があるそうです。町の職員の1/3が亡くなったこともあり、調整ができる交渉力のある人、ICT担当としてITネットワークのたちあげに携える人を募集していました。

大槌町といえば大槌・刺し子プロジェクトが有名ですね。町の職員の1/3が亡くなられたという事で復興に向けて行政としても大変ですよね。ICT担当の募集という事で今やっている仕事の関係で行けないですけど、心は揺れました。

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【岩手県岩泉町】

本州で一番広い町で有名な龍泉洞があり、水が豊かです。町の93%が森林でFSC認証を取得するなど林業にも力を入れています。

洞窟が大好きなケイバー(洞窟探検家)の女子がいたり、地域の資源を生かして個人のスモールチャレンジができると話していました。

龍泉洞には行ったことがないのですが、岩泉ヨーグルトは大好きです。

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【宮城県石巻市】

宮城県では仙台の次に大きな町である石巻市では震災前は600億円の年間予算だったのが震災後は2400億円と4倍もの予算規模になりました。様々なところから応援も来ているのですが、まだマンパワーが不足していて今回はトマトやパプリカを栽培する大規模園芸施設のマネージャーなどを募集していました。

石巻市はセキュリテのファンドでいうと石巻工房、石巻津田水産、鵜の助、とらやに我が家では出資していて事業者さんの復興を応援しています。

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【福島県田村市】

 原発事故で避難指示の出ていた地区もある田村市ですが、現在の帰還率は70%ほどで山間に位置するのでコミュニティが分断されているのが問題になっているそうです。

色々といいところがあるのですが、地元目線では気づかない余所からの前向きな目線を必要としており、いかったと言える地域づくりに携わる人を募集していました。

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【福島県北塩原村】

人口3000人の北塩原村ではここ20年で人口が20%減っています。人口減少の対策として空き家の利活用を進めています。観光にも力を入れていて年間200万人が訪れる他高原野菜の栽培などの産業もあります。

原発事故の後、風評被害もあり修学旅行などの団体旅行が震災前の10%とまだまだ回復していません。みんなのいいね!をつなぐプロジェクトのコーディネーターを募集していました。

北塩原村はちょうど7月の連休に夏休みで行ってきましたが、いいところでした。

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【福島県双葉町】

福島第一原発に近い双葉町では96%の町民が帰宅困難者となりました。避難先でばらばらに生活する中でコミュニティを再生するのは難しい中、記憶からも双葉町が消えないようにする取り組みをしています。地域全体として今後避難者がどのような選択をしたとしてもお互いに認め合えるような社会を作ろうとしています。

今回は役場機能を移転した埼玉県加須市で双葉町民のコミュニティ維持発展に携わる人を募集していました。

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NPO法人ETIC.

ETIC.では右腕プログラムと呼ばれる東北で立ち上がったプロジェクトのリーダーのま「右腕」となる人材をマッチングしています。石巻の廃校舎を生かしてキッザニアのような自然をテーマにした学びの場「モリウミアス」の立ち上げなどにも関わっています。

社会起業支援のETICらしい関わり方ですよね。

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