前作で老後難民という言葉を生み出した野尻さんが今度は老後難民にならないために世代別にどのように準備をしていけばいいかを書いた本です。勤労者3万人アンケートを元に実態を分析しつつ、95歳まで生きることを想定して世代別にどのように資産を積み上げ、使っていけばいいか提案しています。
日本人の4割が老後準備資金0円 老後難民にならない「逆算の資産準備」 (講談社+α新書)
- 作者: 野尻哲史
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/09/23
- メディア: 新書
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考えてみればサラリーマンや年金制度というもの自体が新しい常識です。昔々は地域ごとに小さな経済があって、ごくごく小さな世界でパズルのように生きていくために必要なピースが組み合わされてました。やがて文明が発展すると共に移動速度や量が増え、それに伴い人や物もたくさん移動するようになりました。
小さな主役がたくさんいる社会からお金を使って他人にお願いすることで自分の生活レベルを上げる、そんな社会に発展してきたのだと思います。今の生活を昔に戻した方がいいなんて思いませんが、なんでもお金で解決するという考え方はどこかで線を引かないと長生きしていくであろうこれから先は厳しいなと思いました。だって退職後に必要な金額の想定が1.5億円ですよ・・・。年金を差し引いても6400万円用意しておく必要がある計算です。
年金も昔は親や祖父母と同居が一般的であった時代はそんなになくてもどうにかなったと思いますが、核家族化が進み生計が別になるとそれぞれの家族が生きていけるくらいのお金が必要になります。同居できない代わりに親の生活を支えるための年金という制度と考えると、ここでもお金を使った分断が起きていることに気づきます。
都市部では子どものいない世帯も増えていますから、自分の老後は自分で面倒をみないといけません。そもそも平均して90歳まで人間が生きるなんて考えてもいなかった時代に設計を始めた制度なので無理がありますよね。長生きすればするほど医療費や介護費も積み上がります。
節約だけでは現実的な問題としてどうにかするのは難しいです。
確定拠出年金という時間をかけて徐々にお金を積み上げる制度、中途解約ができない確定拠出年金の弱さを埋めるNISAなど今ある制度をうまく使って老後難民にならないための準備を考えた方がいいのかなと思います。
資産形成や資産運用のための具体的な方法というよりも、老後難民を避けるために今からできる事はなんだろう?年代別にどんな風にしていけばいいかお金の取り崩し方まで提案されているので幅広い世代の人に手に取って欲しい一冊です。
テクニックではなく、そもそもなんで老後資金を用意するの?って気付きが得られると思います。