長野県飯田市にあるおひさまエネルギーファンドは市民出資の自然エネルギー事業のパイオニア的存在で私も何年か前から気にかけており、今年の春に奥さんと一緒にお金を出し合ってファンドへの投資もしてみました。(その時のエントリーはこちら)
長いこと市民出資の自然エネルギー事業をやっていることを信用して投資してみたのですが、実は資金管理がずさんで配当金の不足分を別のファンドの出資金から補うなどやってはいけないレベルの行為を行っていたようです。
長野のファンド:再生エネ資金管理ずさん 監視委勧告へ - 毎日新聞
資金の消失は確認されていないので業務改善命令になる見込みと報道されていますが、金融機関としてあってはならない話で、社長のコメントの「公認会計士と顧問契約する力はなく、マンパワーが不足している」というのも頼りない限りです。
また、HPのリリースについて内容の差し替えもこっそり行ったようです。こういうのも信用なくしますよね・・・。
おひさまエネルギーファンド株式会社 http://t.co/CzRoskfgX9 の「金融庁処分(予定)に係る報道について」を途中で内容を差し替えてますが、こういうの一番まずくね? http://t.co/mxkNWLWmC6
— 翼の折れたきたきつね。もふもふ (@northfox_wind) 2014, 5月 15
金融庁の処分とその後の会社の対応を見てみたいと思いますが、今のところイメージはかなり悪いです。
【2014/5/17追記】
5月16日付で証券取引等監視委員会が「おひさまエネルギーファンド株式会社に対する検査結果に基づく勧告について」というプレスリリースを出しています。
この中で法令違反として以下の項目が挙げられていました。
- 出資者からの出資金を受け付ける預貯金口座を開設しておらず、出資者からの出資金は営業者名義の預貯金口座に振り込まれ、営業者の固有財産と出資金が一つの口座に混在したままになっていた。
- ファンド立ち上げ直後の事業利益が発生していない計算期間などでは現金分配が行えない事になっているにも関わらず、原社長が業務多忙のため個別のファンド収益の算出が困難であるとして、当初計画に掲げた目標におおむね沿った現金分配を行った。また、一部の分配金は別のファンドの出資金から借りて払い出ししていた。
- このような状態を知っていたにも関わらず管理体制を見直さず新たなファンドの募集を継続していた。
- 当局に対して顧客の出資金および運用は分別管理されていると虚偽報告をしていた。
顧客の出資金と自身の財産を同じ口座で管理するという基本中の基本ができていないばかりか、ファンド毎の収益を計算するには忙しすぎたのでとりあえず計画通りの分配をしていました。しかも他のファンドへの出資金から勝手に借り受けて分配していたのです。
法令違反といっても使い込みなどの悪徳業者というわけではなく、資金管理などを原社長が一人でやっていて忙しかったのでこうなったのだと思われますが、だとしても第二種金融商品取引業免許を持つ金融業者として基本的すぎる部分が出来ていなかったのは致命的です。
自然エネルギーを市民出資でといういいことをしようという志はいいのですが、金融業である以上は最低限やらないといけないことがあります。マンパワーもお金も足りない零細NPOのノリの延長線上でファンド事業は行われてはいけないのです。
毎日新聞の記事を読むと原社長は取材に対して「公認会計士と顧問契約する力はなく、マンパワーが不足している」と回答したそうですが、悪意がなかったのと資金の消失がなかったことで業務改善命令で済みそうとはいえ、その業務改善を行えるようなリソースがないのであれば潔く会社は解散した方がいいと思います。
一言でいうと、今回の事例は呆れかえって言葉もない・・・という感じです。
クラウドファンディングに追い風が吹いている中で悪徳業者ではなく、善意の塊からのマンパワー不足によるずさんな資金管理という意外な問題が発生し、今後の投資型クラウドファンディングに対しての規制にも影響が出そうです。
【2014/5/19 追記】
おひさまエネルギーファンドから「証券取引等監視委員会の検査結果に基づく勧告について」というリリースが出ています。
資金流用など悪気は無く、ファンド間の資金のやりとりについても金利を設定した上で税理士等の確認を受けていたなどと書かれていますが、分別管理について書かれた下記の図を見ても未だに分別管理とはどうあるべきかしっかり理解していないように感じます。
理想形じゃなくて、本来あるべき姿が金融庁監督指針の分別管理です。なんで理想形って書いちゃうんだろ?また、下記のように検査で指摘され処分を受けることになるであろう状況でありながら今後に期待して改善を促すための勧告であると言われたことを書いていますが、こういうの書くのは反省していないんじゃないかという印象を与えるので逆効果だと思います。
委員会からの勧告の際には、上記各指導と合わせて、「私的な流用や、資金の消失は認められない」、「実態のない事業に対する出資募集ではなく悪質なものではない」、「当社を始め再生可能エネルギー分野への健全な投資が進むことに期待して改善を促すための勧告である」ことも当社に伝えられたことを付言申し上げます。
分別管理を含めた法令遵守の徹底など対応していくって書いてあるけど、本当にわかっているんだろうかと不安だな・・・
【2014年5月22日 追記】
HPのリリースに掲載されていた分別管理に関する図は差し替えられて指針と現実になっていました。(投資家に郵送されたレターでは差し替え前の「理想と現実」と書かれたままでしたが・・・)
悪意のないものだったという事から大した事ではないと考えているように感じますが、資金管理がずさんだったというのは紛れもない事実でそこは重く受け止めて欲しいと思います。
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