12月17日(火)に「コモンズ30運用報告会」および「新ファンドのご案内」in東京が開催されました。
開催日時:2013年12月17日(火) 19:00〜21:00
場 所:AP東京八重洲通13F Bルーム
主 催:コモンズ投信
講師
コモンズ投信株式会社 代表取締役会長 渋澤健氏
代表取締役社長 伊井哲朗氏
運用部部長 糸島隆俊氏
講演のメモをシェアします。
伊井さんからはコモンズ30ファンドの現状と2020ビジョンが目指す姿の違いについてお話がありました。
たぶん、このパートがコモンズ30の運用報告だったのだと思いますが、運用報告という題名を入れるのであれば別の機会でもよいのでもっと深く説明して欲しいなと思いました。この日は新ファンド目当ての人がほとんどだと思いますのでこの内容でも良いのですが・・・。
【概要】
- 失われた20年と呼ばれるバブル崩壊後も成長している会社は多くあった
- グローバルな目線でこれから長く成長できると期待できる企業をコモンズ30では長期集中投資している
- これまでいい会社だと思っても長期的に業績を読めない会社への投資機会がなかったが2020ビジョンで補足できるようになる
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伊井 哲朗氏(コモンズ投信株式会社 代表取締役社長)
■長期集中投資が注目されている背景
今日はコモンズの新しいチャレンジを紹介します。
日常の活動でIR担当や経営者とも年間200名ほどお会いしていますが、経営者ですごいなと思う人はチャレンジしている人に多くいます。大企業でもベンチャーでもチャレンジをして変化を好む人が多いという印象です。
日本の経営者でもそういう経営者は増えているという実感があり、コモンズが新しいファンドを作ると言った時、社内でも不安になる人もいれば、これはぜひやろうという意見もありました。
最終的にはやることになりましたが皆さんにもコモンズ30は横に置いておくのか?という想いがあると思います。
ここ1~2年、年金基金などで長期集中投資に関心が集まってきています。その背景にあるのは先進国が低成長になっているからで日本もアベノミクスがあったとはいえまだ潜在成長率は低いままです。
アメリカも潜在成長率は2%程度で生産年齢人口が落ち着いて高齢化社会に向かうと国自体が安定成長の時代に入っていきます。そうした国では市場全部を買うと国の低い成長に対して投資することになってしまいます。
日本だとTOPIXを全部買うと1700社くらいに投資することになりますが、これからはリスクを管理しながら個別銘柄に投資対象を絞っていこという流れがうまれています。
あえて証券市場で一番悪いところで比較しますが、
- 1989年末~2012年末 TOPIX -63%
- 1999年末~2012年末 TOPIX -39.8%
そんな中でもバブル後で26.5%、ITバブル後は59.5%の個別企業は株価が上がっていました。さらに株価が倍以上になった会社もバブル後からで10.3%、ITバブル後だと24.4%ありました。
ちゃんと個別企業を選ぶことができれば高いリターンは出ているのです。
■新興国マーケットの成長を取り込むための方策
先進国はものが溢れているため、今後の成長マーケットは新興国に移っています。新興国の人口13億人のうち10億人がアジアにいます。世界中が新興国マーケットで収益をとろうとしているなか、日本の身近には中国という巨大な市場が存在します。中国には100万人都市が現在94ありますが、2020年には139に増えている見込です。
企業の経営者はこういったことをベースに成長を取り込もうと日々努力しています。日本企業による海外成長の取り込みという目で見ると海外売上高比率は様々な業種で高まっていて今では10業種が30%以上、7業種が50%以上の海外売上比率の会社で構成されています。
大きなアジアというマーケットが登場したことで日本企業の活躍の裾野が広がりました。バブル崩壊を経て筋肉質な体制になり、現地で地産地消もして日本の業界も変わってきています。
NYダウが史上最高値を更新しましたがNYダウの中身を見てみると世界でがっつり稼いでいる会社ばかりです。構成銘柄の全てが海外売上高比率50%以上でバブルのころはNYダウでアメリカを語ることができましたが、今の構成銘柄ではアメリカを語ることはできません。
プロの中にもBRICsを買うならNYダウを買う方が安心感があるよねという話もありますが、コモンズ30の投資先も同じように世界の成長を取り込む会社が多く含まれています。
コマツの場合はキャタピラーと勝負できるのか?見ていますし、ユニチャームも花王と比較ではなくP&Gと比較して勝負できるか見て本当に長期で成長していくと思われる企業に投資しています。
今年、ロンドンのブティック運用会社の人と話をする機会があって中国は17社に投資しているというので何に投資しているのか聞いてみるとシマノのような日本企業の名前がずらずらと出てきました。その会社ではずっと日本企業への投資で中国の成長を取り込んでいたのです。また、カナダでバフェット流投資をしている会社も中国への投資としてファナックや資生堂といった日本企業にばかり投資していました。
2012年3月期決算で過去最高益を記録した会社はコモンズ30の中に8社ありました。3.11を乗り越えて過去最高益を出せるのは相当な筋肉質の会社と言えます。その後2012年3月期では10社、2014年3月期では15社程度が過去最高益を記録するのではないかと見られています。
■コモンズ30ファンドの振り返り
今年のコモンズ30ファンドはいまいちだと思っている人が多いと思います。大きな相場の中でこれまで売り込まれていた東京電力やシャープなどの株価が大きく上昇したため、市場と比較するとあまり上がりませんでした。
それではコモンズ30はどういうときに強いのか?というと株価がレンジに入ったり弱気な時に強さを発揮します。いつもそうというわけではありませんが・・・
TOPIXが上がった月、下がった月のパフォーマンスを比較するとTOPIXが上がった月は45%がコモンズ30の勝ちでしたが下がった月は75%がコモンズ30の勝ちでした。
この5年間で一番ストレスがかかったのは3.11の翌週ですが、5%程度の下げで済みました。クオリティの高い会社は財政危機や震災の危機を乗り越える力があるのだと思います。
■コモンズ30が重視している見えない価値について
3600社上場している会社があるうち長期で成長しそうな会社は100~150社あります。そこから70~80社に面談し、最終的に投資委員会で判断される対象となるのが50~60社です。長期で投資をするということで持続的に成長できるのか?という定性的評価のウエイトが高くなります。
子供の成績がいいという例で考えてみると高校、大学まではいいところまでいくのではと想像できますが、では社会人としてどうかという事になると成績だけではなく先生や周りの人の意見も聞いてみる必要がでてきます。
コモンズ30ファンドでは4名のそれぞれ運用経験25~30年のバックグラウンドを持ったメンバーが検討し、4人の全会一致で投資銘柄を決定していますが、その中でも日々のウエイトの調整、現金比率の調整については糸島が担当しています。
東京エレクトロンとAMATの統合は業界のトップ同士が統合であり、日本の企業としては過去に例のないことで今年を象徴する出来事でした。東京エレクトロンの業績を見ると半導体メーカーにありがちな市況に左右される姿が見え、長期投資にはあまり向いていないものの会社としてクオリティは高いものがありました。
そこでコモンズ30ファンドでは業績や株価がぶれるのをポートフォリオ全体として調整することで投資しようとしています。また、来年からは東証外国部へ移りますので事実上外国株ということになります。
経営統合について東京エレクトロンの社長に面談してきましたが胸元から取り出したTELバリューに個人の信条もびっしりと書かれて使い込まれている様子が見えました。こういった見えない部分をどうやって高度化していくかに取り組んでいます。
■2020ビジョンが注目する「変化」について
2020ビジョンは2020年を起点とした変化に投資します。
先ほど渋澤から話がありましたが日本の繁栄の時代は明治、戦後、そして2020年に訪れると思っており、いまは2020年に向けた新しい国作りの時期だと思います。
キーワードは「人口動態」「新しい価値観」「新しい常識」で、2020年は20世紀(2000年まで)に生まれた人が全員大人になる年でもあります。ちょうど東京オリンピック・パラリンピックが開催されますが、これを第二の開国に位置付け日本を変えたいと招致に取り組んでいた友人が話していました。
時間軸が設定されると頑張るのが日本人ですのでここから2020年までは変化に向けた基礎作りに入ると思います。キーワードとなるのが以下の4つです。
- TPP
- 英語
- プライマリーバランス
- インフラ
東京オリンピックに向けて海外からの観光客増加が見込めますので英語教育にも力が入るものと思われます。 企業が本当の意味でグローバル化し、社内にも外国人が普通にいるようになって海外転勤も珍しくない時代が来るのではないかと思います。
また、パラリンピックを強化することで高齢者にやさしいバリアフリーな都市づくりが進むことを期待しています。世界に先駆けて高齢化社会を迎えている日本が環境に優しい最先端の都市作りのモデルになれれば、そのモデルを世界に輸出することもできるのではないかと思います。
観光立国へ向けた取り組みでは日本は遅れていて海外から観光客は世界で33位、アジアの中でも8位に留まっています。お隣の韓国は既に海外からの観光客が1000万人に達しているのに対して日本は800万人にすぎず、ようやく今年1,000万人の大台に達しようとしています。
■ザ・2020ビジョンの目指す投資について
市場ではなく企業を買う株式投資についてお話します。
企業価値を表すROEを欧米と比較してみると日本は6%くらいでアメリカが20%、欧州が15%くらいになります。日本でROEが7%以上の会社は全体のわずか30%しかなく、これは事業に投資価値があるから投資するという目線で考えると投資対象は30%くらいしかないという事になります。
投資にあたっての時間軸と企業価値のいずれも高い企業に投資するのがコモンズ30ファンドです。それに対して企業価値が低から高へ変化の兆しがある企業に中長期で投資するのが新ファンドのザ・2020ビジョンです。
資本コストを超える会社は日本全体の30%しかありませんが、その中でも長期的に企業価値を高めていける会社はコモンズ30で、5年くらいの中期的には高めていける会社は2020で投資するというイメージです。
これによってこれまで先が見通せないと投資を見送ってきた時代の変化が早いネット関連やバイオ関連、将来は人口が減るなかで日本では厳しいと考えていた内需関連への投資も行われるようになると思います。
お客さまと年間を通じてお会いする機会が数多くありましたが、その中で若い企業を応援するファンドができないのか?といった声やシャープやパナソニックなど大きな会社が復活するところも応援したいという声もいただいていました。そういった企業も2020には含まれるのではないかと思います。
中期で変化するのをファンドマネージャーの糸島が判断してポートフォリオを構成します。コモンズ投信としての取り組みとしてこどもトラスト、企業との対話はこれからも続けていきます。(※ザ・2020ビジョンのこどもトラストには応援金はありません)
社会起業家フォーラムも2020年に向けて変化する企業や団体との対話を進めていきたいと思います。先進国はひいてしまう傾向がありますがその中でも企業は変化し続けています。日本が変わっていく姿を体感してもらいたいと思っています。
また、ザ・2020ビジョンファンドでは寄付先をパラリンピック関連への応援とします。