11月24日にLiving in Peace主催のマイクロファイナンスフォーラム2013が開催されました。
開催日時:2013年11月24日(日) 14:30〜18:00
場 所:日本財団ビル
第一部 マイクロファイナンス貧困削減ファンドが実現したこと
第二部 少額投資による資金調達の状況
第三部 新しい資金調達手法としてのクラウドファンディング
フォーラムの様子を私のメモを元にレポートします。第二部は少額投資による資金調達の状況と題して東京大学大学院の柳川教授の講演がありました。
【概要】
- 全世界でクラウドファンディングが注目されており、これまでと違ったモチベーションでの資金が集まっている
- 購入型クラウドファンディングと3Dプリンターの組み合わせで製造業にイノベーションが起きるかもしれない
- 投資型クラウドファンディングは詐欺を防ぐためにも募集金額や一人あたりの投資金額に上限をつけるなど制度設計はしっかりとする必要があるのではないか
柳川範之氏(東京大学大学院経済学研究科教授)
これまで金融やコーポレートガバナンスの制度設計に関わってきましたが、クラウドファンディングにはかなりのインパクトがあるのではないか?と考えています。少額寄付をネットを通じて集めるものから始まり全世界で28億ドルの規模になっています。
アメリカではJOBS法が制定されましたが、その背景にあるのはベンチャービジネスが低調にあることへの危機感があります。日本もベンチャービジネスを盛り上げるために議論されていますが、単純にネットを通じて資金調達するものではありません。ベンチャーキャピタルとの違いは資金調達の単位が少額に変わっただけでしょうか?それだと本質的な変化は無いように思えます。
これまでと異なったモチベーションで資金を出すようになった事が大きな違いです。
百万円を寄付できる人も世の中にいることはいますが少数派で、その人を中心に世の中は動きません。しかし、千円を寄付する人はたくさんいます。それを東日本大震災のとき実感しました。
これまではお金を集めるのにコストがかかっていましたが、取引コストが大きく下がったことによりたくさんの人が参加できるようになりました。この事によってお金出すときのモチベーションが変わります。熱意を買うなど金銭的以外の小さなモチベーションをもって100円、千円を出せるようになり、投資がリスクを取りやすくなったのです。
人はリスクを避ける傾向にあります。50%の確率で100円を払うのと、100%の確率で50円を払うならどちらがいいでしょう?また、50%の確率で1億円を払うのと、100%の確率で5千万円を払うならどちらがいいでしょう?
お金の単位を変えるとリスクへの対応が変わります。300円で買える宝くじが売れるように少額だとリスクをとれるようになり、これまでとは違うところにお金が向かいます。
pabble は一週間で一千万ドルを七万人から集め、その資金で工場が回りだしました。購入型のクラウドファンディングはお金を出した人に割安で先行販売するのと同じと言えます。お金を出してる側は寄付でも投資でもない感覚で参加しています。
これは作る側にとって大きなインパクトを生み出しました。製造コストの問題をカバーできる資金調達の仕組みが生まれたのです。クラウドファンディングと3Dプリンターとの組み合わせで銀行に頼らなくてもよくなるかもしれなません。
バラ色というわけではありませんが、担保を持たないベンチャーのビジネスに大きなインパクトを与え、社会貢献と営利活動を合わせ持つ会社にとってプラス効果が期待されます。
全部が変わるわけではありませんが、株式会社制度に訪れたイノベーションと言えます。寄付の延長線とは概念が違い、資金調達の場として取引所の存在価値が問われるようになります。
しかし、これらの制度設計は大切です。現在は寄付型が主流であるため、うまくまわっていると思います。しかし、投資型になると普通の金融商品と同じ扱いになり、詐欺的行為が行われないような仕組みを導入していました。これから投資型を広めていく上でどこまで金商法の例外とするか検討が行われています。
例えば募集金額、投資金額共に少額に留めるようにするといった事が考えられます。拙速に規制緩和すると詐欺的行為が出てきた際に優良なものまで含めて全部つぶれてしまう恐れがあります。予め(大きくは)儲からないことを宣言しておく必要があるでしょう。
【関連記事】
マイクロファイナンスフォーラム2013レポート(1) 第一部講演 慎泰俊氏
マイクロファイナンスフォーラム2013レポート(2) 第一部講演 小松真実氏