いい投資探検日誌(from 八女)

しあわせをふやす いいお金の使い方を考えています。サステナブル投資家。2017年に新所沢から八女に移住しました。週末は一口馬主を楽しんでます。

いい会社訪問「新社長に聞く これからのIKEUCHI ORGANIC」 at 東京に参加しました

4月14日(金)にIKEUCHI ORGANIC TOKYO STOREで開催された鎌倉投信のいい会社訪問「新社長に聞く これからのIKEUCHI ORGANIC」に参加しました。

IKEUCHI ORGANICさんのイベントには多数参加していますが、阿部さんのお話をじっくりお聞きするのは初めてという事で楽しみにしていました。昨年社長に就任された阿部さんですが、イケウチらしいものづくりを永続するための仕組みづくりに着手しています。 

阿部さんのお話、これからのIKEUCHI ORGANICについてなどまだまだ聞いてみたいことが沢山あります。また、お話聞きたいです。

新井(鎌倉投信):
まず紹介したいのが4月3日の朝日新聞の一面トップにIKEUCHI ORGANICさんが出ました。鎌倉投信も2面に出ています。面白いのは地元の今治は一面トップじゃなかったというんです。

阿部(IKEUCHI ORGANIC):
当たり前だからじゃないですかね

新井:
今治としてはそうかもしれないけど地元なんだから・・・。
まず今日は阿部さんになんでIKEUCHI ORGANICに入社したのかも含めて自己紹介をお願いします。

阿部:
IKEUCHI ORGANICの前身の池内タオルに入社したのが2009年5月でした。その前に2008年12月のエコプロでアルバイトをしていたのがきっかけです。その前はカジュアルウェアの小売会社で働いていました。

ロードサイトに店舗を構えてどかんと在庫を抱えて、ライトオンなどと類似した業態でしたがユニクロ、イオンモールの台頭で業績が悪化しました。特になんでも揃うイオンモールの出現によってロードサイトの店舗はわざわざ来ていただくお店になって客足が落ち、2005年に民事再生しました。

事業は継続することになりましたがその後事業部をクローズしようとなり、店舗用の不動産を売却することになりました。2008年5月に事業部の廃止を決めて最後のお店が売却できたのが8月でしたが、その直後にリーマンショックが起こりました。

その時取締役をしていて親会社に残る事もできたのですが、ケジメという事で会社を辞めました。次は何をしようかと考えている時に社外取締役の方からゼミ時代からのつながりがあった池内を紹介いただきました。

最初はアルバイトからお世話になったのですが、当時はものづくりなど全然知らず繊維つながりというだけでこんな会社があるんだと思いました。働いてみるとチャンスがいっぱいあるなと。当時は展示会にいらっしゃった方のフォローもできていなかったんです。エコプロの後の展示会も手伝ったのですが、同時にアパレル業界で就職活動もしていました。アパレル業界では結局同じ事をやるのかなという疑問もあってこちらに最終的にお世話になることになりました。

新井:
池内さんに憧れて入社したわけじゃないんですよね。それで社長にまでなってしまったと。
南青山にお店を開く前は神保町に事務所があって池内さんが阿部が阿部がといつも話していたので営業の阿部さんという印象でした。

阿部:
法人営業をずっとしていました。

新井:
阿部さんの事をずっと存じ上げていますが、今日は残念なことに池内代表が裏にいるんです。監視下にある(笑)たぶん、今も出たいのを我慢していると思います(笑)

外からやってきて池内さんに対する憧れもなく入社して現実問題として何が一番大変でしたか?

阿部:
売る側だったんです。ずっと。今思うと供給側には責任ばかり押しつけてたなと思います。

小売りだと新しい商品が入るために既存の商品をどけることになるんですが、それを社員やアルバイトさんが残業で閉店してからレイアウト替えしていました。もし、商品が納品されなかったら計画が狂うんです。納期遅れはペナルティだと言っていましたが、立場が逆になりました。

納期を守れないのには守れないなりの理由があるんですがそれを認めてもらえず値引きになってしまいます。小売りにいたからしょうがないと思うところもあるのですが、作る側からしたらそこは営業がコントロールしろよとなります。常識がここまで違うんだなと思いました。

新井:
どんな業界でも一緒ですよね。投資信託もそう。製造側と販売側のどっちかが強すぎても結果は良くならないんです。直販しないといいものは提供できないという事ですね。

阿部:
売る側としての幻想として自分が欲しい時に欲しいだけ商品があるのが普通だという考え方がありました。それができない体制なのだとしたら供給側の責任にします。

今、仕入れさせろ。無いなら事前に在庫を持っていろ、商品を管理してないとダメだという考え方ですが一方通行過ぎると今では思います。製造して全アイテム在庫を揃えておく事がどれだけ大変か製造に来てわかりました。

新井:
売れるものは偏るし、売れないものは残るし大変ですよね。
池内さんの所に入社して今はとうとう社長になってしまいました。社長になって今までと一番違った感覚はどこにありましたか?

阿部:
社員でいた頃は引っ張ってもらってる方がいて楽でした。今は誰も言ってくれないですし、社内に言ってくれる人が少なくなります。でも、不思議に社外には言ってくれる方が多くなるんです。ここが一番違うかな。

新井:
池内さんは口を出す部分は変わりましたか?

阿部:
今、池内はものづくりについて担当しています。
商品が一番大事なのでそこの哲学、肝を後進に伝えないといけません。私は製造業にずっといたわけでないので私はマネジメント、池内は商品周り。代表の池内と社長の私という立場でやっています。

製品の神髄を伝えることは難しいので池内が元気なうちにそこをきちんと引き継いでもらわないと永続していけません。

新井:
そこの部分は誰に引き継いでいますか?

阿部:
商品設計と品質管理、生産部に対して引き継いでいます。

新井:
これまで池内さんの個人プレーで池内さんはカリスマ経営者でした。これからは組織で応えていくように変わらないといけません。

阿部:
個々が考えないと誰も指示してくれないのですが、そういう会社になっていくんだと思います。社長のタイプもこれまでとは違います。池内はがんがん行くタイプでしたが。

新井:
これまでIKEUCHI ORGANICの素地を作ってきて社名を代えてタオル屋でなくなりオーガニック屋への第一歩を踏み出しました。

100%オーガニックへの挑戦という事で商品タグから縫い糸までオーガニックコットンで作っています。今はコットンヌーボーだけですが、縫い糸などは使用量が少ないのに色の種類が多いんです。

阿部:
染めが大変ですね。

新井:
オーガニックコットンはなんで何%使用しているのか出さないんでしょうね?

阿部:
説明するとタオルは二重構造になっています。ベースの組織の上にループ状になったパイルがあるのですが、お客様の触れるのはパイル部分です。なのでパイル部分だけオーガニックコットンにしてベースは通常綿を使えば価格も抑えることができます。(世の中の多くのタオルはパイル部分でオーガニックコットンを使っていればオーガニックコットンタオルを名乗っています)

我々は環境価値にこだわってオーガニックコットンを使っているのでパイルだけでなくベース部分も含めてオーガニックコットンを使う事を変えることはできません。

新井:
次の施策が食品工場のISO取得でした。タオル屋さんですよね?
よく取ったなと思います。最初食品工場のISOを取ると池内さんに言われたときはとうとう頭がおかしくなったんじゃないかと・・・びっくりしました。

阿部:
まずタオルを食品とISOの検査官に認めてもらわないといけないんです。味はおいておいて(笑)、とりあえず食べても安全だというフードファブリックとして認めていただきました。

新井:
その話を聞いて実はISOの担当者がすごいんじゃないかと思いました。

阿部:
懐が深い審査官さんで・・・楽しんでいただきました。

新井:
すごい事なので、ISO取得の証書の隣に審査官さんの写真くらい載せてもいいんじゃないかと。それくらいすごいことです。

これまで次のステージを見据えてやってきたと思いますが、それを見ながら阿部さんにお伺いしたいのがこれからの池内をどうしていきたいのかという事です。

阿部:
どうしていくかというのはIKEUCHI ORGANICを継続しないと意味がないと思っています。会社も継続しないといけないですし、哲学をいかに続けていくか。仕組み化するか。

世の中は転換点にあると思います。カリスマが引っ張るジョブス的な経営から池内イズムを誰がどう継続させるのかという転換点です。次のカリスマはいらないんです。ブランドを構成する個々がきちんと考えていける組織が強いんだと思います。老舗企業は金剛組など不思議と誰かがたってる事はありません。誰かが引っ張ってる形じゃないと気づいたんです。我々もそういう会社になりたいと思います。

今後誰に継いでも同じ事ができる会社にしたいんです。そうすることで全く特殊なことでなく当たり前のことになります。当たり前のことをする会社が少ないだけです。今後私たちのような会社が増えると思いますがどこが続いていけるのか、オーガニックコットンを使うのは続けないと意味がありません。社会全体に関してもそうだと思っています。石を投げることをずっとやっていける会社になりたい。

新井:
僕らもそう思って二人三脚でやってきました。一つは日本になぜ100年企業が多いのかというと海外は個人の名前に付いているんです。でも、日本の職人は屋号に付きますが個人名が出ないんです。奥ゆかしい。老舗のお菓子屋さんでも職人の個人名は出てきませんよね。人の命は尽きるものなのです。

そうした時にIKEUCHI ORGANICとはなんなのか。メインはタオルでしょうけれどもオーガニックに対するこだわりが残るのかなと思います。タオル屋という名前がつかない以上は存在意義がオーガニックでないといけません。

ちょっと気になるのはオーガニックコットンの生産者から見るとなかなか供給が難しくなっている背景を聞かせてもらえますか。

阿部:
我々が原綿を仕入れているのはスイスのリーメイ(REMEI)という会社です。そこがバイオリー(bioRe)プロジェクトというタンザニアとインドに農園を持っています。綿生産を運営するのがバイオリー(bioRe)、収獲された糸を販売するのがリーメイ(REMEI)です。
オーガニックコットンを栽培して糸にするプロセスで重要なのは遺伝子操作しているかどうかなのですが、今遺伝子操作していない種を入手することがすごく難しくなっています。

アフリカやインドだと種屋さんが最初に無償で遺伝子操作された種を育てたら儲かるよと農薬とセットで売っているんです。すると彼らの多くは教育を受けていないので神様が来たと思っちゃう。そうして自然と遺伝子組み換え綿の農業に取り込まれてしまいます。何が悪いかというと薬を使うので土壌や水質の汚染がひどいんです。

オーガニックコットンといいつつ遺伝子操作されているものもあります。理想は自家採種ですが収穫量が少なく難しいです。遺伝子組み換えされた綿は収量も品質もいいのですが、いいというのはあくまでも人間にとっての話で他の生き物や地球にとってはどうなのと。そこまで発想を広げないと人間は生き残っていけないのではないかと思います。だからその選択をしています。

新井:
オーガニックコットンはそこらじゅうで目をすることがありますが、それが遺伝子組み換えの有る、無いは消費者はわからないですよね。何を信じたらいいのか、消費者はどうしたらいいでしょうか?

阿部:
欲しいものが欲しい時に欲しいだけあるのは不自然です。
消費者が均質なものがいいと思う意識をスイッチする必要があります。

新井:
野菜や果物と一緒ですね。

阿部:
その二つを究極に求めた結果のひずみが生まれています。全部は無理だと思うけどできるところからやっていきます。食べ物だったりうちのタオルなど諸説色々あります。みんな自分のが正しいと主張していますが、どれもある種正しいのも確かです。ではどの側面から見るか、自分の価値基準をどこに置くかで情報は求めようと思えば色々あります。

「えっ」て思うことがあった時はそれを忘れずに購買行為の時に思い出してください。
どの立ち位置で選択するか決まってくるとその時々の判断で変わります。

新井:
先日こちらで竹川美奈子さんが池内さんとセミナーをした時、竹川さんが消費も投資も一緒だと言っていましたがそうだなと思います。オーガニックコットンそのものが商売の道具に使われるのを見ると残念な気持ちになります。

阿部:
知っていただくきっかけにはなっているんですけどね。

新井:
安定してあれだけのもの(オーガニックコットン)があるのは不可能なのに。

人という観点では新しく入ってきた社員さんも昔からいる職人さんもいますが、コミュニケーションを取る上で一番大切にしていることはなんでしょう。

阿部:
色んな立場を理解することと見方を飲み込むことです。

新井:
立ち位置が違うと意見が違います。営業の責任者を思い出してなんでこんなに供給できないんだと思うこともあるでしょうね。

阿部:
確約のないものを作らされて在庫が何で俺たちの責任なんだとか。

新井:
工場の人はそう言いますよね。

阿部:
不思議と管理、製造、営業も三権分立ば成り立っているんです。目線が全く違うので基本的な力のバランスがとれていないと続かないと思います。

新井:
職人さんの映像が今のIKEUCHI ORGANICの雰囲気を語っているのがあるんです。
バックヤードフェスの動画は誰が作ってくれたんですか?

牟田口:
ウェブ販売のアイルさんとお付き合いする中でIKEUCHI ORGANICを気に入ってくださって
物流やCSが肝になっているバックヤードに光を当てようというイベントで是非と声をかけていただいて撮影していただきました。広告費などはかかっていません。

 

前半の話が終わった後は店舗内での買い物タイム。オーガニック120パーカー ロングを着て登場したのが阿部さんに変わって営業を担当している岡本さんです

そして、TOKYO STOREの開店当時から店長をされていた國行さんが4月一杯で卒業されることが発表されました。まだもう少しありますが、お疲れ様でした。新天地でも頑張って下さい!

 

お買い物タイムの後はTOKYO STOREのすぐ近くにあるマザーハウス青山骨董通り店へ。こちらでも買い物タイムの後に店舗のイメージなどお話を聞きました。

こちらはコンセプトショップという事でマザーハウスの山口さんが「循環」をイメージしてデザインされた素敵なお店でした。