いい投資探検日誌(from 八女)

しあわせをふやす いいお金の使い方を考えています。サステナブル投資家。2017年に新所沢から八女に移住しました。週末は一口馬主を楽しんでます。

金融包摂勉強会レポート(1):ARUN合同会社 巧能聡子さん・アライアンス・フォーラム財団 村上純子さん

2月4日(木)にクラウドクレジット主催のメディア・ブロガー向けに開催された金融包摂勉強会に参加してきました。

金融包摂とはFinancial Inclusionとは貧困層や中小事業者など基本的な金融サービスへのアクセスが困難であった人達へ金融サービスを利用できるようにすることです。
スピーカーは各方面で金融包摂に関連する取り組みをされている4名の方達でした。

今回はARUNとアライアンス・フォーラム財団のスピーチ内容をレポートします。

  • ARUN 代表 巧能聡子さん
  • アライアンス・フォーラム財団 プログラム・オフィサー 村上純子さん
  • Living in Peace 大野貴一郎さん
  • クラウドクレジット 代表取締役 杉山智行さん

f:id:m-at:20160204210231j:plain

ARUN 巧能さん

ARUNの事業内容

ARUNでは社会的投資を行っていますが、きっかけとなったのは1995〜2005年にかけて私がカンボジアに住んでいてマイクロファイナンスの成功地域で現地の起業家に出会った事でした。
途上国においてビジネスで社会課題を解決していこうという起業家がいたのです。

f:id:m-at:20160204191721j:plain

例えばカンボジアでは電気がない地域が70〜80%を占めていますが、ソーラーホームシステムの会社があります。
ソーラーホームシステムを導入することでテレビが見れる、扇風機が使える、携帯電話の充電ができる、夜でも子どもが勉強できるようになったのです。
他にも医療サービスのない村に診療所を作り、問題があった場合は二次医療へカルテの転送をする事業を行っている会社もあります。
起業家と投資家をつなぎ、持続的で豊かな共生社会に資する意思あるお金のフローを創出しています。

f:id:m-at:20160204192151j:plain

社会的投資とは社会課題を解決しながら経済的な利益を同時に生み出す投資手法です。
ARUNでは重要なリターンとして社会的インパクトも重視しています。
これまで1億円強の金額を6社に投資していますが、みんなが幸せになってリソースを十分に使える社会にしていこうとしています。

金融包摂について

金融包摂の例としてマイクロファイナンスがあります。
マイクロファイナンスでは底辺の個人に対して家計の支出や収入に対するギャップを埋めるのが目的となりますが、ARUNではもう少し上、中小企業を対象に雇用を生み出すためもう少し大きな事業を対象にしています。

このような小規模な設備投資に対する投融資は通常の金融ではリスクが高すぎ、社会的な投融資としては貧困度合いが改善された後のステージという事ですっぽりと抜け落ちており、ミッシングミドルと呼ばれています。

例えばRootCapitalではコーヒーや綿花などの農業協同組合に特化したローンを行っています。 

社会課題を解決していく中で大きなリターンを生み出していく仕組みでは社会的投資家が投資し、リターンを再投資することで循環するサイクルが生まれています。
投資家からの投資方法は様々で出資や寄付、助成金といったものがあります。

これらの経済的リターンだけに固執しない社会的投資は世界的に大きくなってきていています。

Sankalpと呼ばれるインドの社会起業家フォーラムが4月20日〜22日にかけて開催されます。
インドでも社会的課題を解決するイノベーションは大きくなってきています。
途上国ビジネスの最新情報や社会的起業家とのコミュニケーションづくりに役立つフォーラムです。
スタディ・ツアーを計画していますので興味のある方はぜひ参加して下さい。

 

アライアンス・フォーラム財団 村上さん

金融包摂とはファイナンシャル・インクルージョンの日本語で貧困層に金融アクセスを増やしていくための包括サービスです。

彼らは収入がないわけでなく小さかったり、複雑だったりする事で既存の金融にアクセスすることが出来ていません。
人口密度が低い、世帯所得が著しく低いという理由で特にサブサハラ地域では遅れています。

f:id:m-at:20160204193248j:plain

携帯電話がもたらしたイノベーション

そんなサブサハラ地域では2011年から3年で金融アクセスが急成長しました。
それには携帯電話が大きな役割を果たしています。
日本では携帯電話の普及率は104%ですがアフリカでも70〜80%の普及率です。
貧困層がなぜ携帯電話を使えるのかというと$30程度の安いガラケーとSIMカードを購入するだけで利用できるからです。
定額の契約料金はなく、使いたい時に使う分だけ入金して使える仕組みが導入されることで携帯電話の利用者は爆発的に増えました。

M-pesaと呼ばれるモバイル送金システムはサブサハラアフリカで大きく普及し、2009年にはケニアの決済市場の30%を占めています。
金額にして320億ドル、ケニアのGDPの10%に達する規模だという事がわかってGDPを上方修正したくらいの規模になっています。

Pay as you go方式によるイノベーション

もう一つの例として未電化地域でソーラーランタン購入をモバイルマネーで決済する仕組みがあります。
彼らは少額であれば用意できますが、まとまった額を一時に準備できないので毎日蝋燭を買っていました。
蝋燭の金額といっても彼らにしてみれば収入の結構な比率を占めています。
このような状況ではなかなか生活改善が出来ません。
Pay as you go=使いたいだけ使うという方式で毎日ソーラーランタンを使いたいだけ携帯電話でお金を払います。
そして使った額がいずれソーラーランタンの金額に達すると自分のものになるのです。

f:id:m-at:20160204193553j:plain

金融包摂への取り組み

こうした仕組みは健全な市場促進を促します。
テクノロジーが規制を遙かに追い越してしまっている現状では消費者保護や制度に安定性が求められています。
COMESAに加盟する19ヶ国に金融包摂に関する覚書を締結し、各地のマイクロファイナンスの代表を集めてワークショップを行いました。

ワークショップではCOMESAに対して提言書を作り、採択させることを目指しています。
私たちは地域共通のガイドラインとして提言を正式採択してもらうことのサポートをしており、金融アクセスを良くして生活環境が良くなるように活動しています。

 

【関連記事】