いい投資探検日誌(from 八女)

しあわせをふやす いいお金の使い方を考えています。2017年に所沢から八女に移住しました。

『投資は「きれいごと」で成功する』は投資本ではなくビジネス書

鎌倉投信のファンドマネージャー新井和宏さんが書かれた『投資は「きれいごと」で成功する』を読み終わりました。

最初の一文はこれです。

「おまえら、人の金で社会実験するつもりか」
2010年はじめ、私は怒号の矢面に立っていました。

ダイヤモンド社らしいですよね。社長の鎌田さんが書かれた『日本でいちばん投資したい会社』とは全く違う始まり方です。

タイトルはきれいごとで成功するとありますが、きれいごとでも儲かる投資法を解説!というウキウキ気分なものではなく、鎌倉投信の投資哲学とビジネスモデルを丁寧に解説したものです。これを読んでも儲けを目指す株式投資に直接役立つことはあまりないと思いますが、鎌倉投信が目指している姿はこういう事だったのか!と納得できると思います。

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非常識な愛すべきヘンタイ達

新井さんは本書の中でも受益者のことを「愛すべきヘンタイ(笑)」と言っているのですが、ヘンタイぶりを表すエピソードとしてこんな事がありました。投資先のトビムシの子会社、西粟倉・森の学校がついに単月黒字になったことを受益者総会で牧社長が報告したときの様子です。

黒字になったと報告したとき、会場にはたくさんの拍手が起こりました。おかしいですよね。ファンドの投資先は黒字が前提なのに、鎌倉投信の場合は黒字になったで拍手が起こるのですから。

もちろん私もその場にいて、なんの疑問も抱かず心から良かったな〜と拍手をした一人ですが、言われてみると儲けが目的で投資していたら投資先の会社がようやく赤字を抜け出しましたって報告を聞いても「そもそもそんなところに投資すんなよ」「早くそんな会社は売ってしまえ」と思うのが世の中の普通なんですよね。

でも、鎌倉投信の結い2101に投資している投資家(受益者)は違うんです。

東日本大震災が起きた時、世の中の多くの投資家はリスクを避けるため株を売りました。でも、結い2101の受益者は違いました。こんな時だからこそ投資先のいい会社の力になりたいといつも以上に入金したのです。

信じることを支えにすればいい会社だから買い時じゃないかと思えるようになります。

リスクを越えるのは、投資先への想いであり、まごころです。そして金融はまごころの循環です。
まごころがなければ「疑い」を生みますが、まごころがあれば「共感」が生まれる。まごころがあってはじめて、人はリスクを越えられるのだと思います

結い2101の投資家は今まで株式などに投資したことのない人達もたくさんいます。そういう人達でも非常事態にこんな時こそと入金できるのはまさに金融業界における非常識な行動でしょう。でも、それを成し遂げたのが鎌倉投信なんです。

ずるいビジネスモデル

ベンチャーが成功するためにはちょっとした工夫や「そう来るか!」と思わず唸る、「やられた感」がある「ずるいビジネスモデル」が必要と新井さんは言います。もちろん鎌倉投信にも「ずるいビジネスモデル」があります。

  1. 投資先が小さすぎて真似できない
    →大手にとって規模のメリットがない
  2. リスクもリターンもとらないローリスク・ローリターン運用
    →リターンが低いから投資効率が高くて表彰されても眼中になく、攻撃されない
  3. 「つながり」を媒介に投資先企業と鎌倉投信がともに成長していく
    →お客様である投資家、投資先の企業、鎌倉投信が一緒に企業価値をあげていく

既存の金融機関も融資先同士のビジネスマッチングを行っていますが、鎌倉投信の投資先は価値観を共有しているもの同士なので成功率が高く、そして行動も早いのです。

ただ、このビジネスモデルにも弱点があります。

投資家のみなさんから応援する気持ちがなくなること。お金のリターンだけに目がいき、とにかく儲かればいいという気持ちになってしまう。これも絶対に避けなければならないリスクです。

なんのためにわざわざリターンの低い結い2101に投資したのか投資家が忘れた時、投資家はきっと儲けを求めて離れていきます。だからこそ価値観を共有し続けるために様々なイベントが開催されているのです。

経済学と経営学

『日本でいちばん大切にしたい会社』を書いた坂本先生のもとでいい会社について学ぶうちに経済学と経営学は対極にあるのではないかという考えを持ち始めたと書かれています。確かに世の中には経済合理的でない行為(おもてなしとも呼ばれています)をプラスすることで顧客の満足度があがり、結果的に利益にも結びつく事例があります。

これを利益を目的にやってしまっては効果がないと思うのですが、そこを本業として心をこめてやっているのかが大事ですね。

ベンチャー死の谷

投資先のトビムシがベンチャー死の谷と呼ばれる資金繰りの危機を乗り越える一方、鎌倉投信にも容赦なく死の谷は襲いかかっていたエピソードも書かれていますが、乗り越えてくれて本当に良かったと思います。

まとめ

投資本ではなく、ビジネス書なのでいちいちもっともだなと思いながら一気に読み終え、すっきりとした読後感を味わいました。こんな面白い会社が日本にはあるんだという事をたくさんの人に知って欲しいと思います。

投資は「きれいごと」で成功する――「あたたかい金融」で日本一をとった鎌倉投信の非常識な投資のルール

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トビムシの竹本社長のブログです。受益者総会で黒字化を発表した時に拍手が起こり、投資家みんなが喜んでくれたことについて書かれています。