いい投資探検日誌(from 八女)

しあわせをふやす いいお金の使い方を考えています。2017年に所沢から八女に移住しました。

世界の森と東京の森 東京森と市庭 竹本さん〜東京の森nightレポート(1)

代々木上原のCASE galleyで開催されていた東京の森展のスペシャルイベントとして東京の森nightが開催されました。

話を聞いていて思ったのは確かにヨーロッパや北米の森は日本と違って平地にあるなという事でした。赤ずきんちゃんがおばあさんの家に行くのに山を登ったという感覚はありません。奥多摩から富士山を見た写真では結構高い山の上まで針葉樹が植林されている様子がよく見え、昔の人はよくこんな上まで植林して手入れをしていたなと驚きました。せっかく残してくれた森をいかに活用するか。今の世代に生きる私たちにとっての課題ですね。

一緒に参加していたshimoさんのレポートはこちら

 「東京の森展・東京の森night」に行ってきました | セルフ・リライアンスという生き方

第二部の木工房ようび 大島さんのお話はこちら

 森とつながる家具 木工房ようび 大島正幸さん〜東京の森nightレポート(2) 

 

【東京の森展 Special Event】東京の森night
日時:2015年2月23日(月) 18:30〜
場所:CASE gallery
主催:株式会社東京・森と市庭

第一部:世界の森と東京の森
 株式会社東京・森と市庭 代表取締役
 竹本吉輝さん

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世界の森、日本の森

昨年こちらで北欧の森と東京の森というテーマで話しましたが、今回はさらにレイヤーが変わって世界の森と東京の森について話すことになりました。森林と言っても色々ありますが、今回熱帯雨林は除きます。家具や住宅など暮らしの中に安定的に木を出していく森に限定すると欧州や北米が中心です。 

日本は国土の68.5%が森でこれは世界で3位の比率です。日本が森づくりの参考にしたドイツやオーストリアでも1/3くらいですのですっかり追い抜きました。地域で見ると北欧が1位、2位でそれぞれ70%くらい。3位が日本で他に森が多いのが北米のカナダ。カナダは50%くらいしかありませんが、とにかく面積が広いです。

北欧の林業

日本は森というと山を思い浮かべますが、北欧は平地に森があります。これは北欧の森の写真ですが、北欧も北米も氷河が削ってつくった空間が森になっています。

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氷河が削った土地なので栄養分もなく、そんな環境でなんとか育ってきた森です。北欧を思い浮かべてもらうとノルウェーはギザギザの背骨の方に山脈が連なっていますが、それ以外はなめらかな土地です。フィヨルドもありますが、平地に森があります。

また、スウェーデンは神奈川県プラスα、フィンランドは北海道くらいの人口しかいません。北欧は低い人口密度に広い森が広がり、石と木を丁寧に取り入れて生活してきたので社会の中に木が組み込まれています。ただし、今も尚美しい森がありながら家具に使う木は堅い木なので木材の輸入大国だったりもします。

また、暮らしの中に木がしっかり入っているので経済が止まっても木材を出し続けないといけません。リーマンショックはアメリカの低所得者向け住宅ローン(サブプライムローン)が発端でした。そのためリーマンショックの後、アメリカでは一気に住宅用木材の需要が減ってしまったのです。一方北欧ではペレットが生活の中に燃料として根付いています。ペレットを作るためには木を出さなくてはいけません。社会インフラの中に端材を使ったペレットが組み込まれているのです。結果として日本に行き場を失った北欧の木が安い価格で入ってきました。

日本の林業
日本はプレートが隆起して出来上がった国なので土壌に堆積物が含まれています。
また、北海道から沖縄まで幅広い気候で形成されています。この写真を見ると日本は絶対に氷河が削ってできた地形ではないことがわかると思います。

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この写真は奥多摩の一番高いところから富士山を見た風景ですが、ここから富士山に行くにはいくつもの山を越えなくてはいけず、大変です。北米のような平地での集積林業を日本にそのまま導入するのが物理的に難しいのは空間を見ればわかってもらえると思います。

日本の近代化による木材輸入

日本は狭い国土に1.3億人が住んでいて経済発展による近代化を成し遂げました。55年体制で大きなものが2つできました。都市公団と住宅ローンです。これらは都市化とニアリーイコールで、都市部の会社が生産効率を高めていくために必要とされたのが住宅だったのです。そして地方からやってきた多くの人を受け入れるために住宅ローンが作られました。

日本の木は戦争の際に使われ、終戦時には禿山に近い状態になっていましたが、その後拡大造林が行われました。でも、1960-70年代の急速な近代化には日本の森は収穫期に間に合わなかったのです。それで木材を海外から輸入することにしました。木材の場合、30年以上前に完全自由化しているため、TPPの検討には乗っていません。林業界からロビーイングが無かったのでは無く、近代化都市化を進めていく上で輸入材が必要だったのですっかり自由化されているのです。

ようやく植えられた木が収穫期に入ってきた時には安価で大量に供給されている輸入材が中心になっていて木を伐り出すコストが見合わなくなりました。住宅もRCになったり、足場も昔は木や竹でしたが鉄や非鉄になりました。日本の山から木が出てくる状態になった時、日本で木は必要とされなくなっていたのです。

林業は光のデザイン

これは岡山県西粟倉村の暗い森です。

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先達が植えて枝打ちしてきた森なのでまっすぐ伸びてはいますが、密集して暗い森になっています。日本中にこういった森があり、それをどうにかしようと奥多摩に入ることになりました。

有名なフォレスターである速見さんは森を光のデザインと言いました。上から光が入って光合成するのですが、密集した森では上からしか光が入らないめ木は横に太らず上へ上へと伸びるようになります。間伐すると横に広がった枝葉からも光合成できるようになるので、木も横に太くなっていきます。

こちらは西粟倉が目指している100年の明るい森です。

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先ほどの暗い森のすぐ隣にあるのですが、空間に光を取り入れるようにすることは空間がきれいにできている所と言えます。林業が地域にしっかり根付けば結果としてこういう空間になっていくので、それをお手伝いするのが私たちの仕事です。

光のデザインという事でもう一つの光を紹介します。ヒメボタルは水、空気がきれいなのはもちろん、その他に下層植生が豊かな空間でないといないホタルです。

f:id:m-at:20150223190313j:plain西粟倉にはゲンジボタルの他にヒメボタルが住む森もあります。森を手入れして下層植生を豊かにすることは昼間の光のデザインだけでなく夜の光のデザインすることでもあるのです。

関係性のリデザイン

暗い森に手を入れる事はその価値を伝えていくことでもあります。そしてそれは安価な値段だけで木を使うというような関係性では無く、生産者と消費者の関係でもあります。森を持つ地域も大変です。消滅可能性都市という言葉がありますが、この間コンビニに行ったら『10分でわかる消滅可能性都市』という本がありました。10分でわからせるなと思いましたが、社会的課題として注目されています。

関係性をリデザインしていくことが必要です。木と都市の関係が伝わってリデザインされることでやがて風景となります。そこに重きを置いて家具を作っているのがこの後話される大島さんです。

都市、山の風景が新しくデザインされていくことがそのまま未来文脈につながります。
西粟倉村は待機児童がうまれるくらい若い人が入ってくるようになりました。家族で移住して子どもを育てていくという事は未来につながることを直感している人が集まる場所になってきたという事です。風景を育てるのと都市をつくるのは近似しています。

分離的結合と結合的分離

欧米は基本的には分離されているという考え方です。分離されているからこそ共生していこうというのが欧米的自然との向き合い方で、人と自然への向き合い方は分離しているものをいかに結合していくのかというアプローチをします。

日本は家族、夫婦、集落、自然が一体化している価値観でした。自然という言葉もnatureに相当する言葉がなかったので自然(じねん)に置き換えました。ネイチャーという感覚がなく、世界に人はいるし、そこと人とは呼応しているという感覚です。結合しているが故にいかに分離していくのか。コモンズ(共有地)という言葉がないくらい集合体としての感覚が強かったのです。

個別に見ていくと日本と欧米の価値観や考え方、地理的にも地質的にも違います。私たちの佇まいも思想も違うので同じものを輸入して真似すればいいというものではありません。木の見立てについても同様です。 

 

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