いい投資探検日誌(from 八女)

しあわせをふやす いいお金の使い方を考えています。サステナブル投資家。2017年に新所沢から八女に移住しました。週末は一口馬主を楽しんでます。

コモンズ30塾「女性の活躍セミナー」セブン&アイ・ホールディングスに参加しました

1月28日(水)にコモンズ投信主催のコモンズ30塾「女性の活躍セミナー」セブン&アイ・ホールディングスに参加しました。

コモンズ30塾 女性の活躍セミナー セブン&アイ・ホールディングス
 日時:2015年1月28日(水) 19:00〜21:00
 会場:東京21cクラブ・コラボレーションスペース
 講師:セブン&アイ・ホールディングス 藤本圭子さん
    コモンズ投信 渋澤健さん
 主催:コモンズ投信

女性の活躍というテーマからか就職活動を控えた女子学生さんや学校関係者などコモンズ投信の受益者以外の参加も多かったです。対話にあたっては投資家以外の目線からの意見も飛び交い、とてもいいセミナーでした。

様々な質問にセブン&アイHDの藤本さんが答えていく中で印象に残った言葉です。

当社は最高益あげているのですが、就職したい会社ランキングでは上位に来ることはありません。最高益を出せば行きたくなるというわけでも無いんだなと、就職したいと思わせるような会社になるような活動をしています。同業者さんとも話しているのですが小売業の地位を上げたいと考えています。」

学生という消費者目線からの評価を考えた時、利益だけ出していても評価されない。だから小売業の地位を上げたいと考えているという言葉を聞いて、なぜセブン&アイホールディングさんがダイバーシティに積極的に取り組んでいるのかわかったような気がしました。

将来にわたって生き残る会社というのは目先の利益だけではなく、他にも大事なものがあるのだと思います。

株式会社セブン&アイ・ホールディングス
 セブン&アイグループダイバーシティ推進プロジェクトリーダー
株式会社セブン-イレブン・ジャパン
 取締役執行役員 兼 秘書室長 

 藤本圭子さん 

藤本:
セブン&アイグループはコンビニや総合スーパー、ファミリーレストランなど主に流通小売業で構成されており、2005年9月に持ち株会社(セブン&アイHD)となりました。グループとしては約150社がありグローバルでは54,000店舗を展開しています。

活動の成果

今日は時間があまりありませんので具体的な活動報告の前に成果についてお話させていただきます。

まず、内閣府から女性活躍企業として内閣総理大臣賞を北都銀行さんと一緒に受賞しました。(女性が輝く先進企業表彰 内閣総理大臣表彰)女性の積極的な登用と情報開示が評価されたものです。

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東証の企業行動表彰というものが毎年あり、昨年は女性の活躍推進がテーマに設定されており、こちらでも表彰されています。(企業行動表彰:女性の活躍の推進に向けた積極的な取り組み

また、日経women誌で毎年発表している『女性が活躍する会社Best100ランキング』で総合7位、日本生産性本部の『第一回 日本生産性本部エンパワーメント大賞』も受賞しました。こちらはグループ全体での横断的な取り組みと女性管理職の登用が評価されたものです。

 

ダイバーシティ推進の取り組み

女性管理職の登用は早くから取り組んでおり、民間企業の中では高い比率となっています。2030年までに係長以上の女性管理職比率を30%を目指していますが、数値目標を挙げること対して様々な意見もいただいていますが、KPIを設定してPDCAサイクルを回すことが重要だと考えています。

2012年にダイバーシティ推進プロジェクトを立ち上げました。また、グループ会社間で横断的に活動を進めるため、8社が参画するダイバーシティ推進連絡会も立ち上げ、各事業会社が横並びとなって比較をしたりする中でグループ全体として進んでいる状況です。ダイバーシティには様々な要素がありますが、まず3年間(2016年2月まで)は女性に特化して取り組んでいます。

当社の場合、前提としてお客様の6〜7割が女性でした。商品開発や売り場作りといった場面に女性目線を取り入れる事でお客様ニーズにしっかり対応し、買っていただける。そうする事で更にブラッシュアップしていくという人づくりにおける正の好循環を目指しました。

女性の登用についての取り組みについて始まりは早く、1993年に女性役員が誕生しました。その後間が空いて2006年に鈴木がアナリスト向けに女性の登用を進めると発信し、2012年には社内向けに発信しました。このようなトップコミットメントがあった事でグループ全体として女性の登用を推進する流れとなり、表彰を受けるようになりました。

 

具体的な活動内容

女性活躍推進はまず意識改革から始まり制度運用の見直しへと続きます。
具体的な活動内容について紹介いたします。

●ママ'sコミュニティ

女性を積極的に登用していく上で育児をしながら働くママ達の本音が話せるコミュニティーを作りました。このまま育児と仕事を両立できるのか不安に思っている気持ちをランチタイムに集まって本音ベースで話してもらい、愚痴ではなく建設的な意見を出し合いました。

その中で不安に思っているのは自分だけではなかった。この先どういう風に働いていけばいいのか考えるようになった。働き方について夫と話せるようになったという声もいただいています。

●女性管理職の会

女性管理職の会では会社を超えてグループ横断的に女性管理職が集まり、ロールモデルを作るための活動を行いました。この中では自分達の後に続く人を育てる意識づくりの共有などが行われています。

●パパ'sコミュニティ

女性が活躍するためにはまず男性がそうした意識を持たないと活躍推進できません。そこでイクメン推進プログラムをたちあげ、女性の活躍の場を後押しするための意識づくりを行いました。若い世代では考え方も変わってきており、育児に参加したり働くママを応援したいと考える人も増えています。実際に面接で育児休暇がとれるか聞く男子学生も増えてきています。

時短勤務など働くママ達を登用していく上で現役管理職の意識を変えるのが大事になります。ダイバーシティマネジメントセミナーは多様な人材を活用しながら業績を上げていくためのセミナーです。管理職の人は自分のマネジメントは間違っているとは思っていない人が多いので外部の人に来ていただいています。NPO法人のファザーリングジャパンさんにお話しいただいたりする中で管理職の人たちにも気づきが生まれています。

 

その他の取り組み

このように女性だけでなく、全ての人を対象に活動しているのが良かったのではないかと思っています。

育児休暇中に復職に向けてのDVDやオリエンテーションの開催や時短勤務しながら子育てをする人達へのエールを込めてグループ誌での啓発活動も行っています。毎月グループ誌のアンケートでどこを読んだか調査しているのですが、3位くらいにはいつも入っているコンテンツでこうした取り組みを続ける事で本気で会社も取り組み始めたんだと社員に意識されるようになりました。

また、上司から心無い言葉をかけられたりしている現場からの声を吸い上げ、上司向けにNGワードなどが書かれたハンドブックを作成し、働きやすい環境づくりに取り組んでいます。

今は女性がターゲットとなっていますが、今後は障碍者や介護など他の分野についても広げていく予定です。

 

女性を中心として店舗づくり

女性を中心とした店舗づくりのモデルとなっているのが西武百貨店所沢店です。

こちらでは店長をはじめとした幹部社員からパートさんまで女性が中心となっています(一部経理社員などのみ男性社員)。女性メインにして良かったのがフラットな感覚です。

会議ではペーパーも議事録もありません。会議室にこもることなく、車座形式で積極的な意見交換が行われ、出来ることはやっていきましょうという流れになりました。男性幹部の場合、売り場からの提案も「まず紙に落として」が多いのですが、意見を聞いたらその場で関係者が集まり現場の声を聞けるようになりました。

成果としては会議や残業時間が半減し、売上も順調です。
全体としては提案が増えてスピードアップを図ることが出来ました。

雌飛

ある時、雌伏という字を見て雌が伏せるという言葉にムッとしました。そこで反対語を調べてみると雄が飛ぶと書いて雄飛と知って更になんなの?と思いました。

雌が羽ばたく雌飛という言葉になるようにしたいと思います。

 

コモンズ投信 渋澤健さんとの対話
渋沢:
お話を聞いてトップコミットメントが大事だと思いました。現場から反対もあったと思いますがどうやって乗り切ってきましたか?

藤本:
毎年会長の鈴木が各社社長と次年度の計画について話す場で「今年は何人女性役員を出すんだ?」と聞いています。「やりたい」「やりたくない」ではなく、問い詰められる事で「やる」しか選択肢が無くなるとどうやって育成していこうか考えるようになります。

元々結果が出なければ男性女性に関係なく降格させる土壌がありましたので、女性でも結果が出なければ降格されます。昇格試験に何度か落ちた場合も降格します。そうすると降格になった側も成果が出なかったので仕方ないねと思えるようになります。

ただし、そこで終わりではなくもう一度頑張れば昇格できる敗者復活の制度もあります。実際に一度管理職になったものの降格し、再度管理職になったケースもあります。

 

会場からの質問
Q.小売業は仕事が厳しく労働時間も長いと思います。出世した人もいるだろうし、そうではなくそこそこ働ければいいという考えの人も男女問わずいると思います。女性の活躍によって社員の幸せ度はどう変わったのでしょうか?

藤本:
社員の皆さんがそう思ってはいないと思いますが、立場が変わると見える景色も違ってきます。それによってモチベーションも変わってくる幸せが満足度なのではないでしょうか。


この後参加者がグループ毎に感想などを話しあい、発表しました。それを受けて藤本さんがグループ発表であった質問に答えるという対話のセッションへ。

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従業員満足度はパートやフランチャイズではどうでしょうか?
藤本:
本部と現場では満足度はそんなに違わないのではないでしょうか。現場の方が休暇も取れたりフレキシブルに仕事が出来るのですがまだ十分に意見を吸い上げ切れていません。

フランチャイズについては組織が異なるため、申し訳ありませんが一緒に語ることができません。

ここまで徹底した仕組みがすごいが大企業だから出来たのではないか?
中小企業への応用についてどう考えられますか?

藤本:
中小企業であってもまずは意識を改革しないといけません。

渋沢:
トップの考えが変わればすぐに方向転換ができる分むしろ中小企業の方がやりやすいのでは。

国内と海外で働き方や意識がどう違うのでしょうか?

藤本:
海外はプロジェクト対象外で現地に任せています。
今回のお話は日本のグループ全体での話になります。

2015年度末の女性管理職比率のターゲットに部長が入っていないのが残念です。

(セブン&アイHDでは2015年度末までに女性管理職比率課長職級以上20%、係長級以上30%を掲げています)

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藤本:
まだ部長をターゲットにするところまでは至っていません。一般的には課長以上が管理職という会社が多いと思いますが、弊社では部下がいれば管理職と見ています。そのため、係長でも管理職としています。今は係長、課長を増やしている段階です。

どれくらい育休を取っている男性がいるのでしょうか?
藤本:
育児休職を取る男性はまだまだ少数です。制度としてあっても育休を取りづらい雰囲気があるのだと思います。
実際には育児のために有給休暇を取ってるのが中心です。育休を取ることで自分の評価はどうなるだろうという点が気になっている人が多い現状を変えていかないといけません。

女性の登用のロールモデルがなかなか無いのですがどうしていますか?
藤本:
ロールモデルについては社内報で紹介するのが中心です。でも、いつも温かく見守って見かけた時に声をかけてあげる事が泥臭いですが最終的に一番いい事です。

女性に昇進したいか聞いても「責任を取りたくない」と言われるとおじさん達から聞きますが・・・
藤本:
聞き方やタイミングがあると思います。決して女性だからといって意識が低いわけではないのではないでしょうか。すぐに飛びついていいんだろうか?というような女性ならではの美意識のようなものもあると思います。

まずは聞いてみてやりたくないという事でしたら事情を聞いてみて欲しいと思います。

昇格させたいが経験がないのでどうしようと悩んでいる人もいます。その分野でのパイプラインは必要なのでしょうか?

藤本:
経験が無くても意識の高い人は応えるはずですが、そもそも女性でそこまでいっている比率が低いと思います。これまで女性にはアシスタント的な仕事をさせるのが多かったのもありますが、今は抜擢することも必要ではないでしょうか。

女性が活躍すると男子の就職が減ってしまうのではないでしょうか?
藤本:
今はマンセッションという言葉があってそのように考える男子学生がいます。
それに負けずに頑張って欲しいと思います。

多様性を号令したことによる男性からの不満はなかったのでしょうか?
藤本:
妬みやっかみが本音ではあるかもしれませんがそんなにはないと思います。

お子さんが多い場合のロールモデルはあるのでしょうか?
藤本:
ワーキングマザーのモデルは残念ながらまだありません。全体の傾向から見ると実家が近くにあるなど何らかの周りのサポートがあると2人目以上となるようです。だからこそ男性も育児参画が必要になってきます。

会社に保育施設をという声もありますが、東京の場合は保育所があっても満員電車に乗せて連れてくるのが大変という問題もあります。

藤本さんが他社でダイバーシティ化が進んでいると思われる会社はどこでしょう?
藤本:

有名ですが資生堂さんやキリンHDさん、カルビーさんはスゴイと思います。
カルビーさんは社長がダイバーシティなくして成長はないとまで言い切っていて凄いです。小売業界は比較的進んでいると思います。

当社でも出産で辞める人はいませんし、部長であっても時短勤務している人がいます。
昇格と同時に転勤させたいけど結婚しているし子供も産みたいだろうからどうだろう?と男性上司から相談されたことがありますが、それこそ均等な機会を与えるべきだと答えました。

まず機会を与えて都合が悪ければ他の人にチャンスは回るという事をしっかり伝える必要があります。

女性活用とは違いますが残業時間はどうでしょうか?
藤本:
残念ながら残業時間はまだまだ多いです。鈴木(会長)はなんで残業するの?と言っているのですが、残業だけはトップが言ってもなかなか減りません。男性の育児参画という意味においても長時間労働が最大の悪だと考えていて、これはこれからの課題です、

当社は最高益あげているのですが、就職したい会社ランキングでは上位に来ることはありません。最高益を出せば行きたくなるというわけでも無いんだなと、就職したいと思わせるような会社になるような活動をしています。同業者さんとも話しているのですが小売業の地位を上げたいと考えています。

 

【関連資料】

セブン&アイHLDGS CSRレポート2013 年次報告2 働きがいのある職場づくり。
女性の活躍推進 | イトーヨーカドー CSR活動報告2014
その時、秘書は何をしているのか?あのカリスマの秘書が見てみたい!【Vol.01】|ヒューマン|WEB GOETHE
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