"いい投資"探検日誌 from 新所沢

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スパークス・日本株式スチュワードシップ・ファンドを取材してきました

先日、投資を楽しむ♪のまろさんからお声がけいただき、rennyの備忘録のrennyさんと私の3名でスパークス・アセット・マネジメントさんに訪問して「スパークス・日本株式スチュワードシップ・ファンド」について意見交換させていただきました。

対応いただいたのは運用調査本部ファンドマネージャー兼CSR・CSV担当の清水さんとリテールBDマーケティング室ヴァイスプレジデントの望月さんです。お時間をとっていただきありがとうございました!

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最初に清水さんからファンドについてご説明いただき、その後意見交換となったのですが、せっかくなので開示されている情報を下にファンドの中身を読み解いていきたいと思います。

その際の方法として運用評価における5つのポイントと呼ばれる5つのPを使います。
5つのPとはPhilosophy(投資哲学)、People(人材)、Process(プロセス)、Portfolio(ポートフォリオ)、Performance(パフォーマンス)の5項目です。

【参考資料】

 

Philosophy(投資哲学)

スパークス・アセット・マネジメントは1989年の創業以来「マクロはミクロの集積である」という投資哲学の下、中小型株のボトムアップ・リサーチを得意とする独立系の運用会社です。

1999年に今回のスチュワードシップ・ファンドのベースとなる機関投資家向けファンドの運用を開始し、米国の大手公的年金からも運用を受託していました。この度日本版スチュワードシップ・コードが導入された事を機に海外の機関投資家向けに提供していたファンドを日本の個人投資家向けに公募投信という形にカスタマイズして販売することにしました。

このファンドのキモとなる考え方は以下の図に表されています。

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一般的にアクティビストファンドは株主にとっての利益の拡大を経営者に求めるため、村上ファンドのように株主以外のステークホルダーから理解が得られず、衝突を起こしがちです。このファンドでは全体のパイを大きくする方向の中で株主の持ち分のバランス是正を求めることで、株主だけではなく他のステークホルダーにとっても利益が享受できるような関係を目指しています。これをスパークスでは「みんなの幸せ」のための投資と呼んでいます。ここが大事なポイントです。

また、企業活動においては行動を起こして次の四半期でいきなり利益に直結するという事ばかりではありません。このファンドでは提言を行ってから実現まで概ね2〜3年の期間が必要と考えています。株主の利益だけを要求するのではなく、企業と対等の立場で共に歩むファンドです。

では、利益の源泉はどこにあるのでしょうか?

スパークスでは企業経営者と問題認識を共有して経営の改善に着手、実際に企業価値の向上に至る過程を下の図の様に考えています。

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企業価値向上を目指す対話を特に行わないファンドであれば、ステップ2にあたる企業価値の向上の過程にある企業に投資を行います。一方このファンドではステップ1にあたる経営の質の向上が必要とされる過程で投資を行い、対話を通じて経営の質の向上から企業価値の向上へと向かう期間の短縮を狙います。今企業価値が上がりそうな企業に投資するのではなく、やれば変わりそうな企業に割安な段階で投資を行い、対話を通じて企業価値向上への時間を短くするのです。

市場がまだ注目していないうちに投資を行い、対話を通じて経営の改善と企業価値の向上をもたらそうとしているのです。

スパークス・アセット・マネジメントでは日本版スチュワードシップ・コードに対応する旨を表明していますのでスパークスのファンドは全体的に投資先の企業と対話を行うものではあるのですが、通常のファンドは主にステップ2の企業に投資するという点がスチュワードシップ・ファンドとの違いになります。

スパークスのアクティブ運用への想いは下記のレポートを読んで欲しいと思います。

 『日本株アクティブファンドは隠れインデックスファンドばかり』

 

People(人材)

このファンドでは目論見書にファンドの運用チームが実名と経験年数付で公開されています。これは12月に行われる投信法改正に伴い情報開示を充実させる事に先んじて行ったという事ですが、とても素晴らしい事だと思います。

スチュワードシップ・ファンドは阿部社長自ら運用責任者に立つという力の入れようです。(阿部社長が運用責任者になっているのは現状ではこのファンドのみ)

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しかし、残念ながらスパークスの他の公募投信ではこのような開示は行われない予定という事でした。是非とも他のファンドでも運用体制は開示して欲しいと思います。

また、このファンドに運用者は投資しているのか?という質問に対して、個別のファンドへの投資状況について回答することはできないものの、社員は自社のファンドをよく買っているようだという答えをいただきました。

 

Process(投資プロセス)

スパークスでは創業以来25年守り抜いている伝統のスタイルとして「企業収益の質」「経営戦略」「市場成長性」に注目し、企業の本質的価値と市場価値のギャップに投資を行っています。

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ブランド力やシェア、ビジネスとしてしっかりしているかなどを見極め、本業以外に余計な事業をしていたり余剰な資本がある場合に対話を通じて企業価値向上へ向けた提言を行います。

その際、投資先の企業の株を大量保有して議決権の多さにモノを言わせて企業を従わせるのではなく、あくまでもファンドの後ろにいる投資家が望んでいる事として対話を行います。企業にとっても利のある提言を行いますので、このファンドに賛同する人が多ければ多いほど良い方向に向かうのではないかという仮説です。

個人の力で新しい価値を創造するムーヴメントを起こす!と阿部社長は気合いが入っているそうです。

実際の投資にあたっては株主構成や取材での感触などから対話の余地があるのではないかと考えられる企業に投資を行い、対話を行う事になるという事でした。私募ファンドと比較して投資先銘柄が増えるのでその分大変にはなるが、運用体制も強化しているので影響力を出すためにチャレンジしていくという事でした。

日本版スチュワードシップ・コードが始まったり、コーポレートガバナンス・コードが始まろうとしていたりという状況の中、企業側にも投資家との対話を望んでいるような感触がだんだん出てきているとも話していました。

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スチュワードシップ・ファンドは設定から2年間の解約は受け付けていません。これについては対話型投資の認知向上期間と位置づけていて、その間に対話型投資の意義や考え方を理解してもらう予定のようです。積極的に情報を発信していくとFAQにも書かれていますのでどのような情報発信がされるのか期待しています。

情報発信の中身についても意見交換させていただきましたが、このファンドを通じて投資先の企業に投資して良かったと思えるような内容のものにして欲しいと思います。

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2年間解約がないという事は企業に対して長期的な目線の株主として対話できるという事でもありますので、流動性という意味で残念ではありますが、設定時だけ力を入れて後は解約ばかりという悲しい状況が少なくとも2年間は起こらないという事です。その間にどれだけ長期的な目線でこのファンドを持ち続けようという受益者を増やせられるかがカギになりますね。

企業との対話も重要ですが、個人投資家との対話も重要ですよ。

 

Portfolio(ポートフォリオ)

販売用資料のP.19にモデルポートフォリオが公開されています。これを見ると小型株が中心でROEはTOPIXと比較して低め(だからこそ対話型投資で改善の見込みがある)という事のようです。

また、ベースとなった私募投信では集中投資をしていますが、スチュワードシップ・ファンドは公募投信で1銘柄当たり10%までという制限があることから20〜40銘柄程度に分散投資することになります。

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実際の投資銘柄が月次レポートで開示されるのは2月になりそうという事でした。どんな銘柄が投資先となるのか楽しみです。

 

Performance(運用効果)

まだ運用実績の無いファンドですので同じように対話型投資を行っている別ファンドの実績が参考として販売用資料のP.20に紹介されています。

これを見るとTOPIX(配当込)よりも成績は良かったようです。

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しかし、このグラフには落とし穴があります。私募ファンドは報酬控除前の成績、また公募のスチュワードシップ・ファンドよりも集中投資をしています。

分散効果によって値動きがマイルドになった上に成功報酬20%を差し引くとTOPIXに近づいてしまうのではないか?という疑問が出てきます。その疑問に対して機関投資家向けのこのようなファンドでは成功報酬は一般的に採用されていて、公募投信に成功報酬を付けるかどうか議論はあったものの結果的に付けることになった。基本的にアップサイドを積極的に狙っていくファンドであり、TOPIXのような指数を気にしてセクターを調整するような運用はしないとの回答をいただきました。

アップサイドを積極的に狙っていくファンドという事でしたが、実は私がこのファンドで最もびっくりしたのはFAQにあったこの質問です。

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目標とするリスク・リターンをはっきり回答しています。これは鎌倉投信の結い2101以来の快挙ではないでしょうか。そして驚くべきはその値。リターンが年率25%程度を想定という回答に思わずこの数字は本当ですか?と質問してしまいました。

この年率25%という数字の出所としてスパークスでは企業の本源的価値と市場価値のバリュー・ギャップが50%以上の企業に投資することを基準にしていて、対話によりギャップの解消にかかる期間を短縮することで生まれるリターンという事でした。

確かに50%のギャップが2年で解消されれば年率25%です。リスクも年率25%程度だと中小型株ファンドと同等というイメージですね。リスク・リターンについては個人的にはこのまま鵜呑みにはできないという感想ですが、実際に運用が始まってからしっかりウォッチしたいと思います。

最初の頃にも書きましたが、対話を通じて企業が経営の質を改善してから成果が出るという順番の為、設定直後からいきなり年率25%ペースで上昇を始めるというわけではないだろうという点は誤解の無いよう補足しておきます。

 

その他

信託期間   :2014年12月2日から2024年10月15日まで

クローズド期間:2016年11月30日までは換金の申し込みはできません

決算日    :年1回決算 原則10月15日(休業日の場合は翌営業日)

購入時手数料 :購入時の基準価額に3.24%(税抜3.0%)を上限に販売会社が決定

運用管理費用 :日々の信託財産の純資産総額に対して年率1.836%(税抜1.7%)

実績報酬   :基準価額がハイ・ウォーターマークを上回った場合、当該基準価額とハイ・ウォーターマークとの差額の21.6%(税抜20%)を費用計上します。

その他費用  :監査費用、目論見書や運用報告書作成等の諸費用として上限年率0.108%(税抜0.1%)、有価証券売買時の売買委託手数料等

信託財産留保額:0.3%

 

感想:

新興の中小型株こそが日本が変革を迎える時の主要プレイヤーという投資哲学を創業時から持っているスパークスがとても尖ったファンドを出してきました。日本版スチュワードシップ・コードが始まった事によるテーマ型と思っていたのですが、ベースとなるファンドが実は創業直後の1999年から運用を続けていると聞いて、これまでも地道に中小型株に対してバリューアップなファンドを運用してきたんだと嬉しくなりました。

公募投信という事で尖り方が少しマイルドになっていますが、それによってリターンが減り、成功報酬を導入したのが裏目に出ないか心配な面はありますが、そこは頑張って欲しいと思います。(成功報酬を引いたらTOPIXと大差ないという結果は避けて欲しい)

日本企業が輝きを取り戻すのを投資家としてバックアップしつつ、投資家としても高いリターンが得られるのであればそれに勝る良い事は無い訳ですし、是非とも成功して欲しいと思います。そのためにも投資家への情報開示はしっかりと行って欲しいですし、できれば対話の場も設けて欲しいと思います。

まじめスパークスらしく、販売用資料などを読んでいてもワクワク感を感じないのがちょっと残念なところ。せっかくいいファンドを設定したのであれば投資家にワクワク感を感じさせるような見せ方を考えて欲しいと思います。職人的良さは感じるのですが。

応援の意味も込めて当初募集で1万円購入しました。2月に銘柄が公開されたら積立をするかどうか改めて判断したいと思います。

【関連記事】

スパークス・日本株式スチュワードシップ・ファンドの運用報告をチェック(2015年3月) 

株しかない 阿部修平  ←スパークス阿部社長の本です