いい投資探検日誌(from 八女)

しあわせをふやす いいお金の使い方を考えています。サステナブル投資家。2017年に新所沢から八女に移住しました。週末は一口馬主を楽しんでます。

横浜サカエ塾 ファンドマネージャー対談「吉野永之助氏×新井和宏氏」に行ってきました

バトン主催の横浜サカエ塾 ファンドマネージャー対談「吉野永之助氏×新井和宏氏」に行ってきました。

ファンドマネージャー対談「吉野永之助氏×新井和宏氏」

 日時:2014年11月1日(土)
 場所:鎌倉投信本社
 主催:一般社団法人バトン
 講師:吉野永之助氏(伝説のファンドマネージャー)
    新井和宏氏(鎌倉投信株式会社 資産運用部長)
    鎌田恭幸氏(鎌倉投信株式会社 代表取締役社長) 

バトン主催としては2014年最後となるセミナーはファンドマネージャー対談という事で元キャピタルの社長でもあり、コモンズ投信でコモンズ30ファンドの初代ファンドマネージャーでもあった吉野さんと元BGI、今は鎌倉投信で結い2101を運用している新井さんの対談でした。

運用報告以外で新井さんが前面に出てくる事はあまりないのと、吉野さんと新井さんの対談は是非とも聞いてみたいと思い、参加してきました。行ってみたら鎌田さんもいらしていたのには驚きましたが。

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後田さんがファシリテーターとして質問、お三方がそれぞれ回答するという形式で進みました。有料セミナーですので詳細には書けませんが、雰囲気を簡単にレポートします。

 

Q.昨年投資を始めた人にとっては直近、先行きがわからず不安だったと思いますが、どういった心構えをしたらいいですか?

新井:投資は本質的にシンプルなもの。いけないものは不安。信じられるものをしっかりと持つことが大事です。我々はそれをいい会社としています。心との戦いが大きく、ほとんどの人が出来ない事ですが、不安になった時でも買いたいと思うものを作ることが大事です。

 

Q.応援したい会社とリターンを得る会社は都合良く合致しますか?

新井:リターンの定義によります。短期なのか長期なのか。どちらの会社もボラティリティはあり、どちらでもいいのですが、安い時に買うことの出来る会社はどちらか?という事は意識が必要です。

吉野:運用をしていた時に見ていたのは社長、組織、人間力。株を買うなら素質のいい会社を選びましょう。素質に心配のある会社は持っていても不安で最終的にやられてしまいます。コモンズ投信を辞めて個人投資家になり、これまでと違って会社にアプローチ出来なくなりました。IR担当者もそっけない会社は結果的に良くありません。

 

Q.個人でも機関投資家と互角に渡り合える環境になったと言われていますが

吉野:情報は確かに公開されているけれども、個人にそれを読み解けというのは酷な話です。株主になると届く営業報告書は読んでいて気持ちのいいものがあるので、そちらで見分けた方が楽かもしれません。

新井:報告書を比較すると結構差があります。一生懸命作っているものと、やる気あるんですか?というものと。機関投資家と個人に情報格差はあります。例えば人材や社長の素質などは公開情報からは読み取れません。それは機関投資家が圧倒的に有利です。

例えばある会社に行った時、あなたはこの会社のどこが好きなんですか?と聞いたら目をキラキラさせて嬉しそうにIR担当者が話し始めました。こういうのは個人投資家にはなかなか見えないですね。

吉野:社長の挨拶が1ページ、Q&Aが4ページと凝った作りの報告書でもその中に一言も「投資家」という言葉が出ない会社もあります。消費者はいても投資家は頭に無いんです。アメリカのIRレポートは投資家の為に働くと書いていて、所有と経営の分離がしっかり根付いています。

 

Q.吉野さんは新井さんと考えが違う点があるそうですが・・・

吉野:これまでピュアに運用をやってきて、自分のファンドを売った事がないんです。コモンズでは近いことをしていましたが、営業と運用の両方やるのは大変です。

鎌田:以前は投資顧問でしたのでお客様とも1対1の契約で、金額も大きく、対話がストレートでした。今やっている公募投信はお客様も知識もバラバラです。全国にお客様がいるのでどうやって均一的に満足度をあげるか難しさを実感しています。

吉野:今日来ている皆さんも私のどんな話に興味があるのかわかりません。最終的には私の話を聞いて、私の人柄を信じてねという事になります。

後田:保険業界にいた身としては人を信じてというほど危ないものはないと・・・

鎌田:アセットマネジメントや信託銀行にいると誠実にお客様の資産を預かるという「受託者責任」の概念が自然に出てきます。

新井:ファンドマネージャーとポートフォリオマネージャーは利益相反しています。私はポートフォリオマネージャーなのでいかにリスクを最小化するかパズルのように考えて、このくらいならいけるかと決めています。ファンドマネージャーはリスクを取りたがる傾向にあり、頭の発想が異なります。

鎌田:新井はいつも悩んでいて、この会社はいい会社なんだけどやっぱり買えない!と言っています。

吉野:成長力があっていい会社はおかしくなるリスクが少ないと考えることができるので偏ってもいいのでは。

新井:ポートフォリオマネージャーとしては全てのケースにおいてリスクが最も小さくなる組み合わせを目指します。一般的にはバーラのモデルを使うのですが、私はそれが全てでは無いと思っています。

機械に任せた結果、自分がやらなくなった事で運用者の能力が低下しています。また、運用者も専門性を追求した結果、株式なら株式のみで債券を語れないマネージャーがいます。効率をあげようとして非効率なことをしているのです。

 

後半は会場からの質問にも答えながら2時間のセミナーが終わりました。後半の質問は下記のようなものでした。

  • 苦手な分野を教えて下さい
  • 人気はあるけど最低だと思う金融商品を教えて下さい
  • 金融緩和がありましたが消費税など今後の見通しについて
  • 信条とお金についてどう考えているか
  • 総理大臣になったらやりたいこと
  • インフレになるんじゃないかと思いますがどうでしょうか?
  • 今年一番びっくりしたこと、来年注目している点

セミナーの後は懇親会。鎌倉投信本社で飲みながら話すのは久しぶりです。うちのブログの読者さんともお話できました。あの場で飲みながら話すのって独特の雰囲気があるんですよね。楽しい時間でした。

新井さんが話していた機械に任せた結果、人間が考えないようになったというのはIT業界でも起きている事で、今だとOSが結構設定をしてくれているのでトラブル対応の際に基本的な概念を理解していないエンジニアがいたり・・・。ブラックボックス化して楽になった反面、仕組みは知っておかないといけないというのと近い話だなと思って聞いていました。

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