"いい投資"探検日誌 from 新所沢

しあわせをふやす いいお金の使い方を考えています

鎌倉投信受益者総会(2014)レポート(5)クロネコヤマトの「満足創造経営」ヤマトHD社長 木川 眞氏講演

9月27日に開催された鎌倉投信 結い2101受益者総会レポートです。 

ヤマトホールディングスの木川社長の講演の前に新井さんがヤマトHDが東日本大震災で寄付をしたお金がどのように生かされたのか、実際に現場に行ってインタビューしてきたDVDを見ました。

園児も先生も奇跡的に助かった保育所ですが、津波にのみ込まれた場所にもう一度建設しない限り国から助成金は出ないという厳しい現実の中、ヤマト福祉財団からたった1つの条件で助成金が出たのです。

その条件とは「園児の為にできるだけ早く保育所を建てて下さい」。本当に必要としている場所に自由に使えるお金を届けたのです。

場がシーンと静まり返る中、木川社長の講演は始まりました。

ヤマトHDという超巨大企業のトップが自らヤマトを進化させながら歩んでいく姿を語る姿に本物の経営者が持つ迫力を感じました。

外部から来た社長としてヤマトが停滞しないようにショック療法で進化を起こす。きっと前経営者が望んだ通りの姿になっているんだと思いました。

「結い2101」第5回受益者総会

日時:2014年9月27日(土)10:00〜17:00
場所:大さん橋ホール 

 クロネコヤマトの「満足創造経営」
   ヤマトホールディングス株式会社 代表取締役社長 木川 眞氏

 

新井(鎌倉投信):ヤマトHDさんが142億円の寄付をされました。ヤマトHDさんにとって純利益の4割にあたります。当然ながら木川社長は株主代表訴訟を覚悟した上でトップダウンで決められました。我々鎌倉投信は少なくとも東北でどう生かされているのか、それをお客様にご報告すべきであると考えて7〜8月にかけて2週間東北に入りました。

園児が全員助かったという伝説の岩手県野田村保育所に行って、前園長先生と現園長先生のお話をDVDにまとめました。

 

【DVDの内容の概要】

現園長:当日は偶然月に一回の避難訓練の日だったんです。お昼寝から起きたときに地震が発生しました。いつもよりすごい揺れが長く続いたので、いつもは上履きだけで避難するんですが、防寒着も着せて高台に避難しました。

>震災の後保育所を復旧しようとすると、元あった場所に建設しないとお金は出ないと国から言われました

前園長:元あったところに保育所を作らないとお金を出してもらえないという事だったのですが、その選択は絶対あり得ませんでした。今回は私達も子ども達も助かったんですけど、また元の場所に建てるとなった時、次も助かるという保証はないので前の所に建てようという思いは誰にもないんですね。でも、国からの助成金は元あった場所に建てないと出ないという事でした。あり得なかったですね。

>ヤマト福祉財団から助成金が決まった時はどう思いましたか?

現園長:やったー!これでもう心配しなくていいと泣いて喜びました。

>受益者総会の会場の皆さんへのメッセージ

前園長:本来、株主の皆さんがいただくべきものをこちらがいただきました。本当に救われたっていう気持ちだけはお伝えしたいです。そうでないと保育所は建っていなかったと思います。

現園長:私たちも今生きていることが信じられないくらいの気持ちですけれども、おかげさまで毎日働かせてもらって子ども達と一緒にいられる事に感謝しております。

これも本当にヤマト財団と皆さんのおかげだと思っております。これからも野田村の子ども達を大切に預かって、日本、世界に羽ばたける子ども達を育てていけたらなと夢は大きく持っております。

本当にありがとうございました。

 ※野田村の保育所の避難の様子については下記サイトが詳しいです

 

ヤマトの満足想像経営 

木川(ヤマトHD 代表取締役社長):
今日お越しになられた皆様には株主というだけでなく、日頃からヤマトをお使いになられている方も多いと思います。ありがとうございます。

今日は満足創造経営についてお話させていただきますが、ここで言う満足とは誰のためにしていただくものなのでしょうか?株主、お客様、社員、社外。当社には様々なステークホルダーがおられますが、それぞれに満足を与えたい、4つの満足を最大限にを目指しています。

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当社は2019年の創業100年に向けて基本的な理念について常日頃から社員に浸透を図っていますが、言うだけではなく見える形で行動で示さないといけません。経営者というものは自ら実行している姿を社員に見てもらわないといけないのです。

2回目のイノベーション「宅急便」

ヤマトは日本にまだトラックが200台しかない時代に2台のトラックで運輸業を始めました。今では社員数は20万人を超え、売上は1.4兆円、運送事業の周辺にある様々な事業も展開しています。

ヤマトの歴史を振り返ると最初は特定事業者の貸切でしたが、たくさんのお客様の荷物を一緒に運ぶという路線事業を日本で最初に始めました。これはおかげさまで成功しましたが、資本力があまりなく、後から路線事業に資本力の大きい他社が参入してきたので50年経ってもサービスエリアは関東一円に留まる中堅どころといった立ち位置でした。

その後、オイルショックを迎えて倒産の危機に瀕した時、創業家二代目の小倉昌男さんによる2回目のイノベーションが起こりました。倒産の危機という逃げ場の無い中で企業間の荷物から個人間の荷物を電話一本で翌日に配達するという新しい領域へ踏み出したのです。

当時、個人が荷物を運ぶには郵便小包かチッキと呼ばれる鉄道小荷物しか方法がありませんでした。 両方とも送るのが大変でいつ着くのかもわからいようなサービスでしたので、個人間の荷物を一つずつ送るという事に対して「そんな事は民間企業はできない、だからこそ国鉄と郵便なんだ。」と社内でも反対の声があがりました。小倉さんはこれは間違いなく国民にとって必要なサービスだと言って賭けたのです。

幸いな事に宅急便は大成功でした。期待以上に伸びた事に対して後から小倉さんがこんな事を言っていたそうです。「この事業はニーズがあると検証した上で始めたが、こんなに成功するとは思っていなかった。気付いてみたら裏ドラが3つくらい付いていたようだ。」

小倉さんがすごいのは最初に始めた事ですが、もっとすごいと思うのは始めた新しい事業を伸ばすために毎年お客様に合わせてブラッシュアップし続けたという事です。

宅急便を始めて38年になりますが、ヤマトは一貫してトップを走っています。先人が努力した結果、お客様のニーズに応えるサービスを次々と導入しました。ゴルフ宅急便、スキー宅急便では手ぶら文化を、クール宅急便は新しい食文化を生み出しました。

 

いい会社が伸びる3つの条件

一方で日本はこのままだと人口が減る為、今までと同じようなやり方ではいずれ成長力はなくなるだろうと次のイノベーションに向けた動きがあります。まず2005年に持ち株会社化して宅急便オンリーではない会社になりました。

経営のトップとして考えるいい会社とは何か、年に一回世界中のエリア責任者を集めた会議を開き、今年の思いを話すようにしています。当社は部下が原稿を書いてくれない文化ですので、今日も私が自分で話す原稿を書いています。

いい会社が伸びる3つの条件があります。

  1. しっかりした経営理念が社員と共有されている
  2. イキイキした社員
  3. ワクワクするような革新的戦略

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我が社はどうだろう?と振り返った時、1.については自信があります。

2.は主にセールスドライバーの事になりますが、頑張ってくれていますが本当に自分の仕事に満足しているかどうかというところです。

3.は革新的、ワクワクしているか?引っ張っていく戦略か?という事ですが100周年に向かって実践していきます。

 

挑戦し続ける

常日頃大事にしている事が3つあります。
 ・挑戦する(イノベーション)
 ・決断する
 ・危機が起きたときの対応

1つ目の「挑戦する」については宅急便にだけ依存していてはいけないという事でバリュー・ネットワーキング構想を立ち上げました。企業間物流に飛び出すという事なのですが、それだけではヤマトらしさを体現できません。

そのために立ち上げたのがプロジェクトGです。
ヤマトは官僚嫌いで有名ですが、今ではそれなりに温和にやっています。もちろん戦うところは戦っていますが生活インフラ企業として地方自治体とは距離を縮めたいと考えています。

プロジェクトGでは地方自治体やNPOと協業を進めていて、これまで676自治体と話をし、184案件について153の協定を結びました。具体的な内容としては高齢者の見守り、買い物支援サービスや復興、観光イベントの支援、イベント時の手荷物預かりなどがあります。また、地方の産物を世界に販売していくサポートも行っています。

見守りサービスでは高齢者に3つボタンが付いた端末を渡し、雪下ろしや買い物、問いかけなど何か手伝って欲しいことがある時に押してもらえればサービスドライバーが伺う御用聞きのようなサービスです。ドライバーが現地に行き、何か必要があれば街に伝える仕組みです。

このサービスは本業の上に乗せるもので追加コストはいりません。「まごころ宅急便」という現地の女性センター長のアイデアから生まれたサービスです。CSVという言葉がありますが、世の中はこのような本業を通じた社会貢献の軸足に想定以上のスピードで進んでいます。

 

思い切った決断

2つ目の「決断力(腹をくくる)」については思い切った決断をして株主にも納得してもらうようにしています。

例として東日本大震災の時の救援物資輸送協力隊があります。これは現地の現地の動きを本部が追認したものです。宅急便1個につき被災地に10円寄付するというのもこれまでクール宅急便を支えていただいた東北を軸に考え、一企業としてできる支援として決断しました。

純利益の4割にも相当する寄付は株主代表訴訟のリスクを孕んでいる難しい問題でした、東北へ恩返しするという事で理解していただきました。実施にあたって社長の前任者、前々任者にも2時間ほど相談しましたが「中途半端はよくない。やろう。」と言っていただきました。

寄付するのを決めたのはいいのですが、赤十字以外に自分が決めたところへの寄付するというのは税法上寄付と認められないという問題がありました。4割も寄付した上に更に税金もという事になると特に海外の株主が黙っていません。財務省とじっくり調整した結果、全額無税にしてもらいました。後で「ヤマトだから(全額無税に)できた。」と財務省の人に言われました。

普段「サービスが先、利益は後」「成さずは罪」と言っていたので、東北への寄付は社員のモチベーションへ大きな影響がありました。現場の社員は勝手に救援物資の輸送を始めた。じゃあ会社(本部)は何をしてくれるんだ?と見ていたのです。会社のアクションとして見せた事で社員も社員の家族も予想以上に喜んでくれました。

 

逃げない対応

3つ目の「危機対応力(逃げない)」という事ですが、大きな会社ですので毎日色んな事が起きています。昨年秋にはクール宅急便の問題もありました。これは適正な運用がされていなかった為起きた事で、絶対に逃げないのと嘘はつかないという事を決め、できるだけ早く対応をする必要がありました。

その為には実態がどうだったか短期間で把握する必要があります。現場から実態を正直に聞けるように経営として社員に謝る事にし、「今回の問題は会社の問題であり、短期間に直したいので事実を正確に教えて欲しい。」とまず現場に経営として謝った上で情報を集めました。

正直にという面では昨日起こった事としてクロネコメンバーズの個人情報に不正アタックとログインされてしまった形跡がある事がわかりました。社内では対応についていろんな意見がありました。どういう状況なのか調査してから対応すべきという意見もありましたが、公表を即断しました。

こちらはまだ進行中の件ではありますが、物事に正直に対応するようにしています。
もちろん問題は起こらないに越したことはありません。

 

褒める文化

4つ目は「発言力」です。20万人の社員にどう伝達するか?全営業所は回りきれないので支社には年に二回出向いて「こんな社員であって欲しい」という話をブラッシュアップするなどしています。

また、褒める文化を導入しました。褒めた方にも褒められた方にもポイントが貯まり、貯まったポイントでバッジがもらえます。年間の上位者は本社に呼んでパーティをしています。

これについても社内から反対論もありました。褒めるという事で甘やかす風土は良くないと。組合も人事評価に直結するだろうと反対しました。今では5年続けていて参加率が社員の90%にのぼります。この数字は経営コンサルタント曰く奇跡的だそうです。記名式で褒めるというのはちゃんと見つめていないとできない事です。

他にも感動体験DVDを作りました。仕事を通じて感動したものをまとめたもので社内で研修に使っています。社員のモチベーションが高いのはお客様からも力をいただいているという事がこれを見ていただくとわかっていただけると思います。

 ※この後感動体験DVDを見させていただきましたが、会場のあちこちから感動にすすり泣く声が聞こえました。

 

木川社長を交えたパネルディスカッションへ続きます→レポート6

 【鎌倉投信受益者総会2014レポート】