いい投資探検日誌(from 八女)

しあわせをふやす いいお金の使い方を考えています。サステナブル投資家。2017年に新所沢から八女に移住しました。週末は一口馬主を楽しんでます。

いい会社の理念経営塾(5) 石坂産業 石坂典子氏講演 後編

8月20日(水)にNPO法人いい会社をふやしましょう主催のいい会社の理念経営塾2014年度前半の最終回、石坂産業の石坂典子社長のお話を聞いてきました。

石坂典子氏講演の後半、会場との質疑応答のレポートです。今回も大久保寛司さんがファシリテーションしてくださり、重要な点を補足して下さいました。

いい会社の理念経営塾 組織を動かす”ふつう”の人たち

日時:2014年8月20日(水)
場所:3×3 Labo
主催:NPO法人いい会社をふやしましょう
講師:石坂典子氏 石坂産業株式会社 代表取締役社長

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全然納得していないんです。これが深さや幅になります。浅い人は少しで満足してしまいます。

会場からの質問:11年社長をやってきて、11年前の自分に言いたいことはなんですか?

石坂:私はまだ未発達のままで、何か自分自身で到達したという所までいっていません。過去も今も変っていない感覚です。

 

会場からの質問:今現在世間に変わったと見られるようになったと思いますが、就職希望者の意識はどうでしょうか?

大久保:石坂産業に最近ITから転職してきた人がいたので話を聞いてみましたが、これまで四季の変化を感じたことがなかったと言っていました。そういう環境だと人間おかしくなるんじゃないかと思いますし、転職していきいきしています。

他にも30歳くらいで元金融コンサルの人もいて「人間性の復活ですよ。むちゃくちゃ満足してます。毎日楽しくて仕方ありません。」と満面の笑みで答えていました。前職でそれなりの会社にいた人がです。

石坂社長はこう見えて闇雲に際限なく仕事を出します。本当に幸せですと言える社員がどのくらいいるんでしょうか?世の中に人参をぶらさげるより世の中の役に立つ方がいきいきするんです。全然まだだと先ほど彼女は言いましたが、本当は全然違いますよ。でも彼女はまだまだだと言いました。そこに一つの答えがあります。

加藤唐九郎は64歳で人間国宝になりました。加藤唐九郎記念館に行ったら「このような記念館が出来て嬉しいが、未だ満足できる作品ができず恥ずかしいかぎりである」と92歳の時の言葉が書いてあって思わずメモしました。全然納得していないんです。これが深さや幅になります。浅い人は少しで満足してしまいます。

個人的にこの答えが嬉しかったです。まだまだ伸びると思います。

廃棄物処理ってこういうことだと業界目標から業界のあり方へ見方が変ってきています。 

会場からの質問:今だとすらっと話していますが、アメリカの映画なら最後はぎゃふんと言わせたいところだと思います。反対派だった人達は今どうしてますか?

石坂:署名運動は3000名を超えていました。自宅にもポスティングがあり、子どもがアトピーだったりしませんか?産廃業者を無くすような運動に参加しましょうという内容です。娘がアトピーだったので一瞬そうなのかな?と思うくらい多くの人が無きゃない方がいいのではと思うのではないでしょうか?

とても敵う状態ではありませんでしたが焼却炉が無くなって反対する人は500人に減りました。見学路が出来てさらに反対する人が減り、今は3名の方が反対されています。5km離れたところに中間処理業者があってもです。その3名以外の方とは直接お話させていただいたりもしましたが、中には私には「そんなに悪いとは思っていないんですけどね。」とおっしゃられる方もいました。

隔年おきに夏祭りをしています。夏祭りの中で事業説明をちょっとしたりしているうちにだんだん雰囲気が変わって毎年やってと周辺住民から言われるようになりました。
代表となって石坂産業に反対していた人も今では「生き残る会社は違うね」と言っていて、その人の作った農作物を販売もしています。

地元のNPOも招待したのですが、入口でお香を焚いているのを見て「なんか燃やしてるの?」って燃やしている臭い消しと疑われましたが、見学が終わって「ごめんなさい。勘違いしてるようでした。」と言われました。今では一緒に活動もしています。

大久保:知らしめないと知らない人にとってはやってない事と一緒です。そこが感性。そうやって徐々に理解者が増えていきます。

見返してやりたいという感情もあったと思いますが、「あなたのおかげでここまで来ることができました。」っていう事もできると思います。どっちがいいかというとヒーローがいいよね。

 

会場からの質問:建築の設計の仕事をしていて作る側の立場なのですが、地鎮祭、上棟式、竣工式、お披露目式など作る方は華やかなのに対して解体する方はごみになっちゃうのかなと思っています。業界的には産廃業者は怖いというイメージもあるので建物を壊す時にこれまでに感謝するお葬式みたいなことをやってはどうでしょうか?

石坂:うちには解体され終わったものがきますが、今まで皆さんが住まわれた家でもあります。世の中は新しい物ばかりではないのですが、感謝して壊す人がいないのが現状です。

不法投棄にいたる原因も明日の社員のために少しでも安いところで処分しようとした結果です。一坪あたりの解体費は全うな処理だと3.5万円ですが、業界では1.8万円程度のところが多いのです。でも、皆さんはそっちがいいなと思わないで下さいね。
今のままでは社員に満足いく給与がいかず、職人さんはケガも自分持ちという世界から抜け出せないままになります。

お世話になった家にありがとうと感謝の気持ちでリサイクルをたくさんしてくれる会社に出して下さいと施主さんに言ってもらうのが一番効果的です。

大久保:家では経験がありませんが、私も車は最後に必ず掃除して、ありがとうと言うようにしています。家にもありがとうするのは素敵なポイントだと思います。

 

会場からの質問:誰にいちばん情報発信したいでしょうか?

石坂:こどもの環境教育で来てもらうようにしていますが、一番見て欲しいのはその親御さんです。親子ツアーもやっていて、大人に見てもらって必要性を感じて欲しいと思います。いらっしゃる人が増えれば増えるほどマスコミが注目してくださります。

注目されるようになると人を呼ぶ連鎖が生まれ、人のご縁をいただくようになりました。廃棄物処理ってこういうことだと業界目標から業界のあり方へ見方が変ってきています。

来年、くぬぎの森コミュニティプラザという施設がカフェ併設で出来上がる予定です。最初は開発許可がなかなか出なかったのですが、鉄骨の予定だった建物を日本の良さを考えて木造の日本建築に変えました。今はケヤキの木を探してもらうのに精一杯ですが、日本の伝統の美がそこにはあって100年の経年変化が楽しめる家になるだろうと思います。来年夏くらいまでにはと計画していて外国向けHPを作ったりもしています。

日本人の心を知りたいと世界の人が思っています。そんな交流できるようなプラザをつくりたいと思います。

大久保:日本の心という意味で『海賊とよばれた男』をぜひ読んで下さい。

日本ってこういうことなんだというのが書かれています。『働く人の資本主義 』もおすすめです。

日本の場合は和。弱い物は逃げ道を作って生かすようにしています。叩きのめしきることはしません。伊那食品もそうです。うちだけシェアが伸びてもしょうがないというやり方で、この発想をもつと幸せになります。

究極的には人の幸せのためにやっている事がたくさんの人の不幸せを生み出すのではないでしょうか。

 

間違っていない会社はいつでもどこでも挨拶できる会社です。入って行くだけで雰囲気が違います。

会場からの質問:産廃を捨てる場所がなくなるというがリサイクルに必要とされるエネルギーと新しく作るのではどのくらい違うのでしょうか?

石坂:エネルギーに転換した数値は環境省にも出ていないと思います。かなり再生できるものは多いのですが、最近の新建材だと複雑な構造になって処理できないため溶融炉でエネルギーに転換して熱エネルギーを生み出すようにしています。将来変ってくるのかもしれません。

大久保:石坂産業はシステムとしてインテグレートしているのが強みです。人間が分別する力、これはなかなか真似できません。ガラス越しに分別しているのを見ると一緒にいた人が「廃材が流れているのに食べ物みたいに見える」と言っていました。それだけの雰囲気を持っているのです。

そして必ず見学者に会釈してくれます。出入りのダンプのドライバーもお客さんなのにもかかわらず教育しました。ダンプのドライバーが笑顔で挨拶するようになったことで生き方が変わって家の中で評価が変わりました。「うちの父ちゃん最近立派になった」と子供に言われたのです。

いい経営をするにはお客さんの選択も必要です。ISOの6統合を取得する時、最初の講義で全員寝てたそうです。そこで講師を若い女性にし、マニュアルは漫画にしました。
そこに知恵があります。

徳島のねじをつくっている会社に行った時も全員が笑顔で挨拶していました。石坂産業もそうです。間違っていない会社はいつでもどこでも挨拶できる会社です。入って行くだけで雰囲気が違います。この会社に勤めていることが誇りなんです。

彼女に「あなたは日本の宝だと思う」と言ったら社員が「世界の宝ですよ」と言いました。各国の大使が一緒に視察に来るなんてなかなかないことです。問題を解決しているところが石坂産業にあるから、ここにソリューションが提供されているからです。

ニュースステーションでねつ造に近い報道をされましたが、それで焼却からリサイクルへ転換できたので今では感謝かもしれません。自分の人生を拓く可能性がでてくるのかなと思います。

 

会場からの質問:社長は最初まず1年という事だったと思いますが、それが11年続けてこれた要因はなんでしょうか?

石坂:最初の一年で2つの事をしました。開発の許可をとった事と、受け入れしたまま焼却を委託するという事です。次の年はISOを3本取得するができ、そこで父が本気で社長業を教えようとしてくれました。

それから10年社長業を勉強してようやく代表権をもらえました。

大久保:お父さんはすごく厳しい人ですが、裏では褒めてます。彼女の事を認めているんです。自分ができなかったことをやっている、持てなかった発想をもっている、そして類まれなる実行力をです。

見た目とのギャップもいいですね。受付の人もドライバーに今日はどんな心境なのかな、どんな言葉をかければいいか心を砕いています。それでお客さんに今日は調子よくないって言っちゃうんです。そうしたら後で心配して電話をもらったそうです。

極めつけは私に向かって「インタビューしていただいてありがとうございました。」と言いました。こんな事を言われたのは初めてです。涙腺が弱くなっているので泣きそうになりました。

 

産業廃棄物は究極には消費者の問題です。

会場からの質問:適正な価格と言いましたが、環境や従業員、地域社会への分を価格へ転嫁できない間はどうだったのでしょうか?

石坂:殿様商売と言われました。ドライバーにはアイドリングストップ、立ちしょんNGと言い、社長に社員を教育できないなら他へ行って欲しいと言うようにしました。
2〜3年は敷居が高い、高飛車商売だと言われましたがそれでもいいと思いました。

ようやく変ったのはあの会社すごいよねという声を聞いてハウスメーカーやゼネコンでも今までだと資本金1億円のところに営業に行っては門前払いだったのが資本金4億円の会社の社長がうちと取引したいと言ってくれるようになりました。

今は受け入れを調整するくらいになっていますが10年で7回料金改定しています。高いという事で余所に持って行かれるのですが、余所で処理しきれないと結局まわってきます。

そうして価格変更もいけるようになりました。うちが料金改定すると同業者さんも価格が変わります。そうすることがやむをえない事だと徐々にわかっていただけるようになってきています。まだまだですが、価格勝負ではないようになっています。

価格でお客さんを取ってこようとするとお互いクビを締めあう事になりますが、自信をもって価格に転換していこうと自らスタンダードにできないかと取り組んでいます。

大久保:注目度が上がると斜めから声が出てきます。焼きもちです。良いと思ったら応援すればいいのに。

産業廃棄物は究極には消費者の問題です。どういうところでどういうふうに組み立てられているか想いをはせる、仕事を提供できているのは確かなので0、1ではありませんがプライスリーダーになりつつあります。

ここまでよく耐えられましたねと聞くと、やるしかないんですと答えました。
世界に解決策を提示したのと同じです。世界展開は考えていないんですか?みなさんも期待していて下さい。

皆さんも石坂産業という存在を知らしめることに協力してください。いいものを知ってもらうことがいいことなのです。

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