"いい投資"探検日誌 from 新所沢

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【コモンズ30塾】ガーナにおける栄養改善を目指したソーシャルビジネス構築の試み

コモンズ投信主催のコモンズ30塾に参加してきました。今回のお題はアフリカ。コモンズ30ファンドの投資先でもある味の素さんがガーナで行っているソーシャルビジネスの事例をお聞きしてきました。

 ガーナ栄養改善プロジェクト 

日時:2014年5月29日 19:00〜20:30

タイトル:コモンズ30塾 コモンズ30ファンド投資先企業から学ぶ『アフリカセミナー』第1回 西アフリカ ガーナにおける栄養改善を目指したソーシャルビジネス構築の試み

講師:渋澤健氏(コモンズ投信 会長)
   取出恭彦氏(味の素株式会社 研究開発企画部専任部長)

場所:東京21Cクラブ・コラボレーションスペース

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味の素の取手さん。味の素に入社して必須アミノ酸のリジンの研究に携わりリジンによる栄養改善の実証試験をパキスタン、中国、シリア、バングラデシュ、ガーナの5カ国で実施したそうです。

その後R&Dの統括としてフランスにいるときに業務提携していたダノンがダノン=グラミンというソーシャルビジネスを手がけていてビジネスを通じて社会問題の解決に取り組むという事を知ったそうです。その後、2009年に味の素100周年として栄養改善に取り組むことになりました。

ガーナをはじめとする開発途上国では栄養不足による乳幼児の発育不足と高い死亡率が問題になっています。途上国では10億人が栄養不足、20億人がビタミン・ミネラル不足と言われていて5歳未満で栄養不足が原因で死亡する人数は年間260万人と言われています。

また、子どもの成長には2歳の誕生日を迎えるまでの最初の1,000日の栄養が大切だと言われていますが、母乳で育った後の離乳食へ移行した頃から栄養不足は始まります。そこで味の素では食品科学とアミノ酸事業で持っている強みを栄養改善を通じて社会問題の解決に生かすことにしました。

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味の素では途上国の社会問題を解決する持続可能な取り組みをソーシャルビジネスと位置づけ、自社の持つ強みをパートナーと共同で取り組む事で新しいマーケットの創出へつなげようとしています。

食文化はどこの国も保守的な面がありますので、現地の伝統的な食事を尊重しながらも購入可能な価格で届けることにチャレンジしています。ガーナの伝統的な離乳食であるKoKoと呼ばれる発酵コーンに通常は砂糖をかけて食べさせますが、そのままだとタンパク質とビタミン、ミネラルが不足します。そこで味の素が共同開発したKOKO plusというアミノ酸やビタミンなどを強化した栄養サプリメントをかけることで美味しく栄養改善を図っています。

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また、このプロジェクトにはUSAID(米国国際開発庁)やJICA(国際協力機構)もパートナーとして一緒に取り組んでおり、栄養バランスが大切だという教育や市場調査などの面で官民連携を行っている他、ガーナ北部の貧しい農村地域にKoKo plusを届ける為に国際NGOとも連携しています。

ガーナでは1日100円以下の収入の人が30万人、200円以下の人が90万人、300円以下の人が10万人います。KoKo plusは1日の収入が100円〜200円の一番人口の多い層をターゲットに一袋10円程度で提供しています。KoKoのコストが10円ですので更に10円のコストをかけることになりますが、栄養不足による問題を教育することで子どものために必要なことだと思ってもらう必要があります。

村人に集まってもらってドラマ仕立てで栄養の大切さを教育するそうですが、村のチーフやその奥さん(クイーンマザー)と呼ばれる実力者にも来てもらって栄養の大切さを話してもらうことが普及のポイントです。

生産についても現地のパートナーと連携しており、既にWFP(国際連合食糧計画)のパートナーとしても活動していたYedentというガーナの食品企業に生産を委託している他、原料となる大豆も現地のものを使っています。ちなみにKoKo plusは大豆の粉にビタミンなどを追加しているものなので「きな粉」のような味だそうです。

テスト販売は当初目標を上回る売り上げを記録しており、北部農村地域で作付けをするので一時的にお金が無くなる時期にはシアバターの原料となるシアの木の実を取ってきて物々交換で買っていくお母さんもいたそうです。そこまでして欲しがるという事は栄養の大切さを理解していると証拠です。

実証試験でKoKo plusで栄養改善されて発育にもいい影響が出るという事が確認されたら今度はスケールアップを目指すことになります。目指す姿としては栄養改善をコアミッションと位置づけ、ビジネスを通じて実現することで味の素などのメインのビジネスへのシナジーも期待しています。


コモンズ30塾アフリカセミナー 味の素 20140529 - YouTube

【感想】

まだ実証試験の最中ですが、子どもの発育を栄養改善をちゃんと現地の食べ物に合わせて行っているところが丁寧なアプローチだなと思いました。味の素の企業文化自体が時間をかけて製品開発を行うという点もこうした活動には時間軸が合っていたのだと思います。

ODAなど政府を通じてトップダウンで貧困解決に取り組むことも大切ですが、個人的には個々人の生活に直接インパクトの出るボトムアップでの取り組みに興味があります。そういう意味でもKoKo plusは貧困層でも手の出せる価格で栄養改善が出来て、味の素にとってもビジネスとしても成立するようになれば理想的ですよね。今のところ収益は出ていないのですが、長い目で見たときにこうした活動に本腰を据えて取り組んだことはプラスになると信じています。

味の素についてはアジアの国々でも小袋で味の素を販売したり、地域になじむのがうまい会社だという印象を持っています。今後はソーシャルビジネスにおいても存在感を出していって欲しいなと思います。